『ディープ・スロート』というと、
卑猥なセックス用語としか考えない方がほとんどだろうが、
もともとは1972年にアメリカで公開された
ハード・コア・ポルノ映画のタイトルで、
本作品は大ヒットを納めた。
そしてその後のポルノ・カルチャーに大きな影響を与えたという。
制作にはアメリカマフィアも絡んでいたとされ、
かなりいかがわしい面もあった。
喉の奥にクリトリスがあるという主人公の女性を演じた
Linda Lovelace(リンダ・ラブレース)自身もまた
ずいぶん謎に満ちた人物だったようである。
この“伝説のポルノ女優”の人生を描いた映画『ラブレース』が
来年春に公開の予定という。
このリンダ・ラブレースという女性、
果たしてどんな人だったのだろうか?
'Deep Throat' Star Linda Lovelace Took Porn Mainstream 映画“Deep Throat(ディープ・スロート)”のスター Linda Lovelace(リンダ・ラブレース)がポルノを主流に変えた
By SUSAN DONALDSON JAMES,
公開されていなかった 840 に及ぶポルノスター Linda Lovelace のネガやフィルムの写真がニューヨークの Museum of Sex(セックス博物館)に展示されている。
(有名なアメリカのポルノ女優)Jenna Jameson(ジェナ・ジェイムソン)や Traci Lords(トレイシー・ローズ)が登場するより昔、ポルノ映画がメジャーとなる第一号の映画、1973 年公開の“Deep Throat”のスター、Linda Lovelace(リンダ・ラブレース)がいた。
今日、“Deep Throat”といえば1972年のウォーターゲート事件における(ワシントンポスト紙記者の)Woodward(ウッドワード)と Bernstein(バーンスタイン)の匿名の情報源が最も連想される。しかし、ニューヨーク市にある Museum of Sex(セックス博物館)のキュレーターによると、当時、オーラルセックスだけでオルガスムに達することのできた女性のこのプロット・ドリブン・ストーリーはアメリカ人のポルノグラフィー観を永遠に変える文化的原動力になったという。
“Deep Throat”はニューヨークタイムズによってそんな風に論評される最初の映画であり、女性が性行為を試したり楽しんだりする扉を開いた。後から考えてそれが結婚生活を向上させたと言う人もいた。
結果として、ポルノグラフィーの販売価格は指数関数的に増大、特に、ホームビデオ、ケーブルテレビ、衛生放送、ホテル向け販売、およびインターネットで顕著となる。2001年から2009年までのニューヨークタイムズ、フォーブズ誌、PBC(全米ネットの公共放送網)“Frontline”などの様々なレポートによると、この産業の市場価値は100億ドルから130億ドルの間にあると見られている。
現在、Lovelace の840のネガやフィルムの未公開写真が表に出され Museum of Sex(セックス博物館)で展示されている。それらはマリリン・モンローの肖像写真で最も有名な写真家 Milton Greene(ミルトン・グリーン)氏と1973年に行われた3日間の撮影で撮られたものだった。
このコレクションを展示しているギャラリーのオーナーによると、最初ポルノグラフィーを受け入れたものの、後にそれを激しく非難するようになって物議を醸した女性の神妙な肖像写真が撮られているという。
「70年代後半になっても、ポルノはほとんど気恥ずかしいもので、トレンチコートを着たいかがわしい男性が42番街の成人向け映画館にこっそり入っていました」妻の Yulia とともに YK Gallery Inc を所有する Kevin Mattei(ケビン・マッテイ)氏は言う。「しかしこの映画は大ヒットし、通常の映画館で上映されました」とMattei 氏は言う。「これは(コメディアンの)故 Ed McMahon(エド・マクマホン)のお気に入りの映画で、(テレビ司会者の)故 Johnny Carson(ジョニー・カーソン)もそれについて語っています。もはやトレンチコートを着た男どものためのものではなくなっていました。文化的に認められたものとなったのです」
本名を Linda Susan Boreman(リンダ・スーザン・ボアマン)という Lovelace の写真がこの7月にオークションに出されたとき、Mattei 夫妻は The Archives LLC のオーナーである Greene 氏の息子と協力関係を結んだ。The Archives LLC は 2006 年から Greene 氏の60,000の画像集の復元と販売を行っている。
社交界や著名人の写真家だった Greene 氏は数千枚のマリリン・モンローの写真を撮った。このセクシーなハリウッド女優の写真が Look 誌に掲載されたとき彼はまだ26歳だった。
「これが元に戻ってきてうれしく思っています」Greene 氏の息子 Joshua Greene(ジョシュア・グリーン)氏は ABCNews.com に語っている。「この一連の作品は実際人の目に触れることはなかったのです。それは父の人生の一部でした。彼は老いて病に伏せることもなく突然 1985年に死去しました。逆にその時が彼にとってまさしく好機だったのですが、写真は日の目を見ることはありませんでした。私はそれらが今公開されて大変誇りに思っています」
Joshua Greene 氏は、その撮影の時19歳、当時父親のアシスタントをしており、この新たに有名となったポルノスターをビニールで覆ったり、別の撮影では彼女の身体に水をかけたりして手伝った。「私は11歳のときから暗室で彼の手伝いを始めていました」
Lovelace は多くの写真で裸でしたがすべてではなく、たくさんの帽子、花、あるいは布などと一緒にポーズを取った。ポーズは“きわめて冗談めかしたものだった”と彼は言う。
「その狙いは彼女を変身させること、斬新な姿にすることでした」と Greene 氏は言う。彼は今でも約2,000枚のフィルムのうち約1,000枚を保有している。
Greene 氏によると Lovelace はオーラルセックスを行った映画では“穏やかな話し方をし、少し内気な感じだったが、彼の父親と数人の制作アシスタントと仕事をした後は“ありのままの自分に満足していた”という。
その撮影後、Milton Greene 氏はプレイボーイ誌の Hugh Hefner 氏に作品を売り込んだが Hefner 氏は彼を拒絶した。「彼にはそれらが十分卑猥でないと感じられたのです」とその息子は言う。
「父はそのスターに対して深い尊敬の念を抱いていました」と彼は言う。「彼女には気品と優雅さがあり、その根底には不品行な問題も精力もなかったのです。そんな風では全くなかった。彼女は一流だったのです。」
自動車事故で長引いた外傷により 2002 年に死去した Lovelace はわずかな作品を残している。扁桃腺の代わりにクリトリスを喉に持って生まれた女性を描いたハードコア“Deep Throat”で主役を演じたあと、彼女はR指定の続編と、1976年の“Linda Lovelace for President”に出演した。
彼女はポルノを擁護する2編の自叙伝を発表したがその後それらを否定した。2人の子供を生んだあと彼女はポルノグラフィーから去る。1980年代までに彼女はフェミニスト的反ポルノ運動の活動を始めていた。
しかし彼女の影響力は続いた。
“その映画が70年代に登場したとき、私たちはヒッピーの時代から抜けだそうとしていたのです」と、ギャラリーオーナーの Mattei 氏は言う。「当時 Linda Lovelace が“Deep Throat”を演じたとき私たちは物事が少し広がっていくのではないかと感じ始めていました。それは1960年代の自由恋愛マリファナ喫煙のすぐあとでした。誰もが扇情的な何かを切望していたのです」
「大衆がこの映画を強く求めていたため、批評家たちはそれを論評していました。大衆は否定的な論評を恐れることはありませんでした」と彼は言う。「著名人もそれを見に行きました。人々は劇場に足を運び、友人を連れて行きビールケースを持って行きました、そしてその後も入りびたりとなりました。人々はその映画を観るよう他の人たちを誘いました。Frank Sinatora(フランク・シナトラ)、Spiro Agnew(スピロ・アグニュー)副大統領、小説家 Truman Capote(トルーマン・カポーティ)、さらには(歌手の)Sammy Davis Jr(サミー・デイビス・ジュニア)もです」
「ひとたびその障壁が壊れると、女性たちは自身の性的嗜好を使うようになりました。ゆっくりとですが確実にタブーは壊されたのです」
しかし“Deep Throat”が公開されて1年後、Lovelace はほとんど認められなかった2、3の別の映画を作ったあと女優としてのキャリアは終わった。彼女は金銭トラブルや結婚生活のトラブルを抱え薬物使用も疑われた。
しっかりと着衣を身につけているものも多い上品な Greene 氏の写真は過ぎ去った時代を思い出させるものであり、人生でもっと多くのことを成し遂げたかった女性の願望でもある。
「彼女はスターになるために名声となる15分間を利用し、カメラのフレームの中で脚を広げる以外のことを行おうと考えたのです」と Mattei 氏は言う。
当時、
『ディープ・スロート』という言葉は
ずいぶん卑猥に聴こえたものである(今でもだが…)。
映画『ディープ・スロート』は
喉の奥にクリトリスがある不感症の主婦である主人公が
オーガズムを得るために日夜、
男性器を求めるというエキセントリックなポルノ映画で、
当時としては過激すぎて
その内容は日本ではほとんど知られていなかったようである。
それでも本邦ではタイトルだけが流行語になった?
しかし米国では約6億ドルの総収益を上げた大ヒットと
なっている。
主役を演じ名声を得たラブレースだったが、ポルノ界を引退後、
ポルノ映画産業の慣習を『思いやりのないもの』として非難した。
来年3月公開予定の『ラブレース』では
『マンマ・ミーア!』『レ・ミゼラブル』では
清楚なイメージで人気となったアマンダ・セイフライドが
そんな伝説のポルノ・スター役を演じるという。
真実を探るべくラブレースについて徹底的に取材を重ねた
ロバート・エプスタインと
ジェフリー・フリードマン両監督によるこの映画、
かなり楽しみである。