通でがんす

いろんな広島を知って、ひろしま通になりましょう!
(旧ブログタイトル:通じゃのう)

歌ふ!志村喬~映画『鴛鴦歌合戦』

2024年01月08日 | まんが・テレビ・映画
「日本映画史に残る名優のひとりが、志村喬(しむら たかし)。彼は生涯で400本近くの映画に出演したそうじゃ」

「『ゴジラ』(1954年)にも出演しとってよ」

「黒澤明監督作品には、欠かせない存在じゃったの」

「映画の『生きる』(1952年)では、「ゴンドラの唄」を歌っとってんよね」

「歌といえば、それより13年前の1939(昭和14)年、『鴛鴦歌合戦(おしどりうたがっせん)』でその美声を披露しとってんじゃ」





「今日は、「歌ふ!志村喬~映画『鴛鴦歌合戦』」についての話でがんす」

「ストーリーが最後まで書いてあります。ネタバレに注意してください」





「『鴛鴦歌合戦』は、1939年12月14日に公開されたオペレッタ時代劇映画」

「どんな映画?」

「ストーリーとともに、志村の歌う歌の歌詞を紹介していこうかの…。

侍としての堅苦しい生活を嫌う浅井禮三郎(演:片岡千恵蔵(かたおか ちえぞう))は、長屋で気楽な浪人生活を送っている。
禮三郎の隣に住むのが、志村狂斎(演:志村喬)と娘のお春(演:市川春代(いちかわ はるよ))。
骨董品集めに熱中する浪人の志村は、傘張りをして稼いだ大事な生活費を、怪しげな骨董品につぎ込む。
そんな父に、生活費はちゃんと家に入れて欲しいとお春が頼む」


♪米のめしなら 誰も食(く)う
たまにゃふんわり 麦こがし
粋なもんだよ 食ってみな



「志村は、同じく骨董品集めに熱中する殿様・峯澤丹波守(演:ディック・ミネ)から、50両もする狩野探幽(かのうたんゆう)の掛け軸を買ってもらう。
そのことが縁で、丹波守を自分の家に連れて来た志村は、自分が買い集めた骨董品を紹介する」


青葉の笛よ 知るや君
花もつぼみもの 美少年



さてさてさて この茶碗
ちゃんちゃん茶碗と 音(ね)も響く
道八(どうはち)茶碗は 日本一じゃ
見たか 聞いたか 聞いたか 見たか



(「道八茶碗の歌」を歌う志村喬
(DVD『鴛鴦歌合戦 HDリマスター版』日活より))




↓「道八茶碗の歌」については、こちら↓

「『鴛鴦歌合戦 Singing Lovebirds』の道八茶碗の歌」YouTube



「YouTubeの歌では、前半をディック・ミネ、後半を志村喬が歌っている」

「なんでふたりが同じ歌を歌っているの?」

「骨董屋が、道八茶碗をふたりに売りつけていたというわけ」

「…ということは?」

「ということは、この道八茶碗。どう考えても本物じゃないよの。

閑話休題(それはさておき)。

お春を一目見て気に入った丹波守。
彼の家来が、殿のお側仕えとして娘を差し出せ、断るなら掛け軸の代金50両を払えと、志村に迫ってくる。
お春と禮三郎がいい仲であることを知っている志村は、その話を断る」


かわい娘にゃ 変えられぬ
返すお金が50両
やっとなじんだ おまえとも
つらい別れが 悲しいぞ



「志村は、50両の探幽の掛け軸を売ってお金に変えようと思っていた。
しかし、骨董屋に掛け合うと、これは偽物であり、3両でしか引き取れないという。
そのうえ、志村が長年かけて買い集めてきた骨董品はガラクタ、偽物ばかりで、すべてを売り払っても50両にはとても足りない。
丹波守の家来との約束で、明日の朝までに50両を作らなければならない志村は、夜逃げをすることに」


あるのはガラクタ 骨董品
夜逃げをするなら 今のうち
娘よ手伝え 支度しな



「お春は禮三郎に別れを告げに行くが、禮三郎を気に入っているお富(演:服部富子(はっとり とみこ))の差し金で、会わせてもらえない。
家来を連れた丹波守は、お春を力づくで連れ帰ろうとするが、禮三郎の反撃にあい、退散する。
やれやれと安心した志村は、骨董品を引き取りに来た骨董屋に、茶でも飲もうと誘う。
志村が持つ茶入れを見た途端、骨董屋の目が変わる。
それは「文久(ぶんきゅう)の茶入れ」といわれるもので、1万両の価値があるという。
1万両という金額に目がくらんだ志村親子に、禮三郎は冷たい視線を送る。
「お春さん。おまえさんは金持ちを好きな人と一緒になりなさい」
その言葉を聞いたお春は、その茶入れを壊してしまう
「怒っちゃいや、お父さん。あきらめてね」」


娘 あっぱれ でかしたぞ
親の欲目じゃ ないけれど
わしにおまえは 出来すぎじゃ
たったひとつの 宝じゃよ



「というわけで大団円、めでたしめでたし、というお話じゃ」





「以下、余談」


「この映画について話しておくと…、
本当は片岡千恵蔵主演で『弥次喜多 名君初上り』を撮る予定じゃった。ところが、千恵蔵が急病のため2週間の静養となったそうじゃ」

「ありゃま」

「そこで『弥次喜多…』代わりとして『鴛鴦歌合戦』を撮ることになった。千恵蔵が出演するのシーンは、わずか2時間で撮り終えたといわれとるんじゃの」

「たった2時間で?」

「監督のマキノ正博は、「早撮りのマキノ」と呼ばれた方。脚本と劇中歌の作詞・作曲を4日、撮影も1週間ほどで終わらせたといわれとる」

「すごい!」

「千恵蔵の出番がなくなった分、志村喬とディック・ミネの出番が多くなったんじゃの」

「ディック・ミネといえば、「人生の並木路」などのヒット曲を歌われた歌手じゃね」

「この映画は、日活とテイチクの提携作品だった関係で、ディック・ミネや、服部良一(はっとり りょういち)の妹の服部富子など、テイチク専属の人気歌手が出演しとる」

「そういえば、この映画で歌の作詞を担当された方は?」

「作詞とオペレッタの構成をされたのが、島田磬也(しまだ きんや)という方じゃ」

「それにしても、志村さん、歌がお上手じゃったね」


声の良い人だったので、『鴛鴦歌合戦』では、
(略)
歌を歌わせた。プレスコした時、志村喬の歌のうまさには皆びっくりしたものだ。

(マキノ雅弘『マキノ雅弘自伝 映画渡世・天の巻』平凡社 1977年 449ページ)



「ディック・ミネの推薦もあって、テイチクからの誘いがあったが、本人が全然本気で受け取らなかったということじゃ」





「今日は、「歌ふ!志村喬~映画『鴛鴦歌合戦』」について話をさせてもろうたでがんす」

「ほいじゃあ、またの」


(文中、敬称略)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ゴンドラの唄」はどんな歌... | トップ | 水分峡でキャンプじゃけ »

コメントを投稿

まんが・テレビ・映画」カテゴリの最新記事