通でがんす

いろんな広島を知って、ひろしま通になりましょう!
(旧ブログタイトル:通じゃのう)

ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』

2024年06月30日 | まんが・テレビ・映画
「古今東西の「名著」を、25分×4回=100分で読み解いていく番組が、NHK Eテレの『100分de名著』。2024年7月に紹介する名著は、ジョーゼフ・キャンベルの『千の顔をもつ英雄』じゃ」

「ジョーゼフ・キャンベル? どっかで聞いたような…」

「むかし、『神話の力』って、テレビ番組を録画したビデオを見せたことがあるんじゃが、覚えとらんかいの?」

「忘れた!」



↓『100分de名著』については、こちら↓

「100分de名著」NHK





「今日は、ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』についての話でがんす」





「最初に、ジョーゼフ・キャンベルについて紹介しとこう。
ジョーゼフ・キャンベルは1904年、アメリカはニューヨーク州の生まれ。サラ・ローレンス大学で教職に就くかたわら、世界各地の神話の比較研究に多くの業績を残し、第一人者として活躍する。主な著作に『千の顔を持つ英雄』、『神の仮面』、『神話の力』などがある。1987年没」

「そのキャンベルを知ったのが、テレビで放送された『神話の力』じゃったん?」

「『神話の力』は、今から35年くらい前、NHK教育テレビ(現在のEテレ)で放送された。ジャーナリストのビル・モイヤーズと行った対談がテレビで放送されて、そのあとに書籍化されたんじゃの」



モイヤーズ「なぜ神話には英雄の話がこんなに多いのでしょう?」

キャンベル「語られるだけのものがそこにあるからです」

(ジョーゼフ・キャンベル+ビル・モイヤーズ、飛田茂雄:訳『神話の力』早川書房、1992年、220ページ)




「キャンベルは、世界各地の神話の比較研究するうちに、英雄伝説の基本構造を発見した」

「英雄伝説に基本構造ってのがあるんじゃね」

「キャンベルの考えに影響を受けたのが、ジョージ・ルーカス。彼は映画『スター・ウォーズ』の初期3部作(エピソード4~6)に取り入れることで大成功を収めた、というのは有名な話じゃ」

「ところで、英雄伝説の基本構造って、なに?」

「英雄の旅には、ある共通する行動パターンがあって、英雄は旅立ち、成し遂げ、帰還する、というもの。古今東西の英雄たちは、この3つの段階を経て、英雄となるそうじゃ」

「英雄は旅立ち、成し遂げ、帰還する…」

「英雄はまず、日常世界から超自然的な領域へと冒険の旅に出かける(=旅立ち)。
旅の途中で数々の困難と出会うが、最終的にはそれに勝利する(=成し遂げ)。
そして、そこで得たもの(有形・無形を問わず)を持って、冒険の旅から日常世界へと帰ってくる(=帰還する)」

「試練を乗り越えて、成長した英雄が、元の世界に戻ってくると」

「この「行って帰ってくる」というのがポイントで、行って、目的を達成するだけではダメ。元いた世界に戻ってくることで、日常を再発見することになるそうじゃ」

「ほぉ」

「神話といわず、今までに読んだ・聞いた物語の登場人物たちの話をこれに当てはめてみると、「なるほど!」と納得してもらえると思うぞ」

「なるほど!」

「ちなみに、『100分de名著』7月1日(月)放送の第1回は、「神話の基本構造「行きて帰りし物語」」じゃそうな」





「以下、余談」


「ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』に応用して成功したということは、ほかの作品でも使った人もおっていうことよね?」

「たとえば、「『千の顔をもつ英雄』実践ガイド」なるマニュアルが作られて、それを元に作られた映画もあるそうじゃ」

「ほぉ」

「そのマニュアルを作ったクリストファー・ボグラーは、『神話の法則』という本も書かれとってんじゃの」





↓ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』についての関連記事は、こちら↓

英雄は旅立ち、成し遂げ、帰還する





「今日は、ジョーゼフ・キャンベル『神話の力』についての話をさせてもろうたでがんす」




写真左手前、ジョーゼフ・キャンベル、ビル・モイヤーズ、飛田茂雄:訳『神話の力』 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2010年)
写真左奥、同上(早川書房、1992年)
写真右、ジョーゼフ・キャンベル、倉田真木・斎藤静代・関根光宏:訳『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕下』 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2015年)


「わしゃ『神話の力』は読み通したが、『千の顔をもつ英雄』は、何度かチャレンジして、そのたびに挫折してきとるんじゃ」

「この機会に、最後まで読んでみるかね」

「おぉ、やってみるで。ほいじゃあ、またの」
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カセットテープとレタリングシート

2024年05月05日 | 日記
昭和から平成の始めころまで、好きな音楽やラジオ番組(テレビ番組も!)を録音して楽しんでいたのが、カセットテープ。
特に大切な音楽や番組を録音したカセットテープは、レタリングシートを貼って、大事に保存していたもんじゃ。





今日は、カセットテープとレタリングシートについての話でがんす。





昭和レトロということで、レコードやカセットテープ、そのカセットテープを録音・再生するラジカセ(=ラジオカセットレコーダー)に人気が出ている。



デジタルで録音・録画すると、いつ、どんな内容を録音・録画したかは、自動的に保存される。
しかし当時は、パソコンはもとより、ワープロすらなかった、アナログの時代。
カセットテープに、いつ、どんな内容を録音したかを手書きでメモしておかないと、なにが録音されているかわからなくなってしまう。
ふつうは、鉛筆やボールペンで書くのだが、特に好きなアーティストの音楽を録音したものなどは、レタリングシートを貼って、デコレーションしたものだ。



レタリングシートとは、透明なフィルムに、アルファベットや数字・記号などがプリントされているシートのこと。
それを、鉛筆のおしりの部分や、美術の授業で使った溝引き棒というガラス棒の先などでこすって、一文字、一文字、転写していくのである。
一文字、一文字、転写するということは、文字の高さが合わずガタガタになったり、文字の間が近すぎたり離れすぎたり、綴りを間違えたりと、結構、難易度が高かった。
転写に失敗して、何度、くやし涙を流したことか…。

逆に、うまくできるようになると、なんでもかんでもレタリングシートを使ってデコレーションをしていた。
ただ、文字が足らなくなるとそのためだけに新たに1枚買い足したり、書体を変えようとするとレタリングシートも新たに買わないといけなかったり、レタリングシート自体が高かったりしたりと、なにかとお金はかかったが…。



以下、余談。




今回のカセットテープのメーカーは、TDK(ティーディーケー)じゃが、わしが愛用しとったのはmaxell(マクセル)じゃった。

あと、規格としてはノーマルポジション、ハイポジション、メタルの3つがあったの。
ノーマルが一番安く、ハイポジ、メタルと値段が高くなった。
今回のTDK ARはノーマル。

このころは、LPレコードと同時にカセットテープも売り出していて、そのカセットテープはノーマルじゃった。
そのうちメタルも出てきたんじゃが、メタルはとにかく高かった!
LPレコードとカセットテープが2,500円の時代に、メタルは4,000円したけぇの。

あと、時間もいろいろあったの。
最初のころは、30分、45分、60分、90分、120分じゃったが、そのうち、46分、50分、54分、74分とか、いろいろな種類が出てきた。
30分というのは、両面で30分という意味で、片面はその半分の15分じゃった。
(上の写真の左側に「A」とあるのは「A面」という意味で、もう片面を「B面」と呼んでいた)
ちなみに、30分のアニメ番組を録音するには、46分がちょうどよかった。
(主題歌やCMをカットすると、23分に収まった)
今回のTDK AR60の「60」は、録音時間が60分という意味ですけぇの。

家庭用ビデオデッキがまだ一般家庭に出回っていないころ、テレビ番組を「録画」でなく「録音」していた時代があった。
思い起こせば、『機動戦士ガンダム』(1979年から80年)は、全話をカセットテープに録音して、アニメ雑誌『アニメック』のページをめくりながら、その画像を脳内再生して楽しんだものじゃ。





今日は、カセットテープとレタリングシートについて話をさせてもろうたでがんす。


ほいじゃあ、またの。
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スペクトラム作品集

2024年05月02日 | 音楽
深夜23時から早朝5時まで、NHKラジオが毎日放送している深夜番組『ラジオ深夜便』。
午前2時台は、ロマンチックコンサート。
今日はジャパニーズ・ロック、スペクトラム作品集じゃった。

いや~、この時間枠でスペクトラムの特集をやってもらえるとは、夢にも思わんかった。
わしの知る限りじゃったら、2020年7月25日、作詞家の故・山川啓介(やまかわ けいすけ)の特集で、「サンライズ(SUNRISE)」を取りあげてもろうたくらいじゃったけぇの。





今日は、スペクトラム作品集についての話でがんす。





スペクトラムは、ホーンセクション(トランペット×2、トロンボーン)を中心にした、ブラスロックバンド。

メンバーは、以下の8人。

トランペット、ボーカル:新田一郎(ニッタ・イチロー)。
トランペット:兼崎順一(カネザキ・ジュンイチ。またはカネザキ・ドンペイ)。
トロンボーン:吉田俊之(ヨシダ・トシユキ)。
ベース、ボーカル:渡辺直樹(ワタナベ・ナオキ)。
ギター、ボーカル:西 慎嗣(ニシ・シンジ)。
キーボード:奥 慶一(オク・ケイイチ。またはオク・ケーイチ)。
ドラムス:岡本郭男(オカモト・アツオ)。
パーカッション:今野拓朗(コンノ・タクロー)。
(注:名前のカタカナ表記は、LPレコードの表記による)

リーダーの新田は、渡辺プロダクションの所属。
伊丹幸雄(いたみ さちお)のバックバンド:ロックンロール・サーカス、あいざき進也(しんや)のバックバンド:ビート・オブ・パワー、そしてキャンディーズのバックバンド:MMP(ミュージック・メイツ・プレイヤーズ)に参加。

新田は、キャンディーズのマネージャーだった大里洋吉(おおさと ようきち)が立ちあげたアミューズに移籍。
同じくアミューズに所属するサザンオールスターズの初期の楽曲に、ホーンアレンジなどで参加。
元ワイルドワンズの渡辺茂樹(わたなべ しげき)の弟で、MMPのメンバーだった渡辺や、同じくMMPのメンバーだった兼崎とスペクトラムを結成し、1979年8月にデビュー。
スペクトラムは、70年代前半に流行した、ブラスロックのシカゴ、フュージョンバンドのブレッカー・ブラザーズの影響を受けている。



(「サンライズ(SUNRISE)」レコードジャケット)

スペクトラムといえば、古代ローマの戦士を思わせる甲冑(かっちゅう)、北欧のバイキングのようなかぶり物など、当時の金額で1000万円かけたという、ド派手で金ピカな衣装。
西のロック系ボーカルに、渡辺のAOR系ボーカル、そして、新田のファルセットボーカル(アグネス・チャンみたいな声!)。
そして、ホーンセクションの3人と、ギター、ベースの計5人が最前列に並び、演奏しながら、トランペットはもとより、ギター、ベースまでも回して、振り付けを合わせて踊るというパフォーマンスをステージで繰り広げる。
ビジュアル面を重視し、見る者に強烈なインパクトを与えた。

1981年9月、武道館での解散コンサートを最後に、2年間の活動に幕を閉じる。



この日放送された曲目は、以下の8曲。

1.アクトショ-(ACT-SHOW)
2.トマト・イッパツ(TOMATO IPPATSU)
3.イン・ザ・スペース(IN THE SPACE)
4.フ・ラ・イ(F・L・Y)
5.ミーチャン・ゴーイング・トゥ・ザ・ホイクエン(ミーチャン GOING TO THE HOIKUEN)
6.サンライズ(SUNRISE)
7.夜明け(アルバ)
8.ナイト・ナイト・ナイト(NIGHT NIGHT KNIGHT)

この時間枠は、ふつうなら最低でも10曲はかけるところを、たったの8曲。
曲数は少なくなるが、シングル(短縮版)バージョンを2曲(4・5曲目)に抑えて、あとはアルバム(長尺)バージョンにこだわっての選曲。
本当に、ありがとうございました。



最後に、曲紹介を簡単にしておこう。


1.アクトショ-(ACT-SHOW)
(1stアルバム『スペクトラム(SPECTRUM)』A面1曲目)


タイトルは「アクトショ-」だが、歌詞は「アクシュショウ(=握手しよう)」となっている。

アクシュショウ アクシュショウ カルイキモチデ with me
アクシュショウ アクシュショウ wake up baby

(作詞:宮下康仁(みやした やすひと))


ソレニシテモ、コノ カシカード ヲ ハジメテ ミタトキハ、ビックラコイタ モンジャ。
カタカナ ト エイゴ ダケデ カカレタ カシカード ナンテ、ソレマデ ミタコト ナカッタケェノ。
アノカオ アノカオ………ケ ケ ケッ!



2.トマト・イッパツ(TOMATO IPPATSU)
(1stアルバム『スペクトラム(SPECTRUM)』B面3曲目)


スペクトラムのデビューシングル曲であり、彼らの代表曲のひとつであり、そして、解散コンサートで最後を飾った曲でもある。

フタリノ アサハ ネムイ セナカヲムケ チョイト

(作詞:宮下康仁)


歌詞に「シビレタ アサハ TOMATO」とあるところから、新田が「トマト(というタイトル)一発でいきましょう」と提案。
これを聞いた担当者が「トマト」でなく、「トマト一発」と聞き違えたため、「トマト・イッパツ」というタイトルになったという。
ウソ ノ ヨウナ ホントウ(?)ノ オハナシ。



3.イン・ザ・スペース(IN THE SPACE)
(2ndアルバム『オプチカル・サンライズ(OPTICAL SUNRISE)』A面4曲目)


テクニクス(Technics)のコンポーネント・ステレオ「ザ・スペース(THE SPACE)」のCMで使われた曲である。

君ゆけば 空が動く
はらはらと 心動く

(作詞:宮下康仁)




(1stアルバム『スペクトラム(SPECTRUM)』レコード帯裏面より)



4.フ・ラ・イ(F・L・Y)
(3rdシングル、両A面)


2ndアルバム『オプチカル・サンライズ(OPTICAL SUNRISE)』A面2曲目でもある。

時計仕掛 狭クナッタ 夢ハ フワフワ
波瀾万丈 金ピカピカ Fantasy 答エハ

(作詞:Mabo)



5.ミーチャン・ゴーイング・トゥ・ザ・ホイクエン(ミーチャン GOING TO THE HOIKUEN)
(3rdシングル、両A面)


2ndアルバム『オプチカル・サンライズ(OPTICAL SUNRISE)』B面1曲目でもある。

インストゥルメンタル曲で、当時、保育園児だったミーチャンとスペクトラムのメンバーとの会話が入っている。
武道館で行われた解散コンサートでは、保育園を卒業して小学校に入学したことが、ミーチャン自身の声で報告された。
そして、『スペクトラム スーパー・リミックス1991』の「トマト・イッパツ(Live Power Mix)」では、ミーチャンの「アタシ、もう、高校生だよ」に対して、新田は「お兄ちゃん、知らなかったなぁ」と、旧いギャグで返している。
ちなみに、ミーチャンとは、アミューズの創業者・大里洋吉の娘さんである。

広島でいうと、「あっちゃん」こと西田篤史(にしだ あつし)のラジオ番組「あっちゃんのSay春ing(せいしゅんアイエヌジー)」のテーマソングに、この曲が使われとったんじゃの。



6.サンライズ(SUNRISE)
(2ndアルバム『オプチカル・サンライズ(OPTICAL SUNRISE)』B面3曲目)


プロレスラーのスタン・ハンセンの入場テーマ曲として使われていたことで有名。
そのせいか、テレビ番組の乱闘シーンなどでは、今でもこの曲のイントロが使われることも。

汚れていないその手で
時代のページを開け
おれたちが行くあとから
目覚めた都市(まち)がつづく

(作詞:山川啓介)



7.夜明け(アルバ)
(3rdアルバム『タイム・ブレイク(TIME BREAK)』B面1曲目)


セイコー(SEIKO)の腕時計・アルバ(ALBA)のCMで使われた曲である。



(3rdアルバム『タイム・ブレイク(TIME BREAK)』レコード帯裏面より)



8.ナイト・ナイト・ナイト(NIGHT NIGHT KNIGHT)
(4thアルバム『セカンド・ナビゲーション(Second Navigation)』A面1曲目)


3rdアルバムまでは、アルバム全体として統一したイメージで作られ、作曲はスペクトラム名義だった。
ところが、この4thアルバムは、スペクトラムの各メンバーが作った40曲以上の中から選ばれた11曲で作られているため、作曲はメンバー個人の名義となる。
同時に、曲としての完成度は高いが、アルバム全体としては統一の無いものとなった。

その4thアルバムの巻頭を飾ったのが、「ナイト・ナイト・ナイト(NIGHT NIGHT KNIGHT)」(作曲:渡辺直樹)。





以下、余談。


唯一、残念じゃったのが、5thシングル「夜明け(アルバ)」のB面、「やすらぎ(Love for You)」がオンエアされんかったこと。
アルバムバージョンはインストゥルメンタルじゃが、シングルバージョンは歌入りで、しかも、無伴奏=楽器を使わずに歌う、全編英語詩のアカペラ。
次回があれば(あることを願います!)、是非ともオンエアして欲しいもんじゃ。



↓「やすらぎ(Love for You)」については、こちら↓

「SPECTRUM スペクトラム やすらぎ」YouTube





【参考文献】

「日本ロック元年」『昭和40年男 2020年12月号』クレタパブリッシング 62ページ






今日は、スペクトラム作品集について話をさせてもろうたでがんす。

ほいじゃあ、またの。



(文中、敬称略)
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映画『妖雲里見快挙伝 完結編』

2024年04月21日 | まんが・テレビ・映画
江戸時代後期に、曲亭馬琴(きょくてい ばきん。滝沢馬琴(たきざわ ばきん))が著わした大長編小説『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん。以下、「八犬伝」と略す)』。

この八犬伝を題材とした作品は、時代が令和に変わった現在まで、いろいろな形で発表されてきた。





そのうちのひとつが、映画『妖雲里見快挙伝』2部作で、今回紹介するのは、その2作目にあたる『妖雲里見快挙伝 完結編(以下、「本作」と略す)』。

本作は、1956(昭和31)年公開で、監督は渡辺邦男、脚本は川内康範。

八犬士を演じる俳優の方々は、以下のとおり。

犬塚信乃(いぬづか しの):若山富三郎
犬川荘助(いぬかわ そうすけ):和田孝
犬山道節(いぬやま どうせつ):中山昭二
犬飼現八(いぬかい げんぱち):小笠原竜三郎
犬田小文吾(いぬた こぶんご):鮎川浩
犬江親兵衛(いぬえ しんべえ):沼田曜一
犬村角太郎(いぬむら かくたろう):御木本伸介
犬坂毛野(いぬさか けの):城実穂


映画『妖雲里見快挙伝 完結編』は、2024年4月12日から4月26日まで、YouTubeで2週間限定無料配信中。



↓映画『妖雲里見快挙伝 完結編』については、こちら↓

「【2週間限定無料配信】妖雲里見快挙伝 完結編」新東宝【公式】チャンネル





今日は、映画『妖雲里見快挙伝 完結編』についての話でがんす。





八犬伝といえば、八犬士たちが手にする
仁(じん)
義(ぎ)
礼(れい)
智(ち)
忠(ちゅう)
信(しん)
孝(こう)
悌(てい)
の8つの珠。

この8つの珠は、安房の国守・里見義実(さとみ よしざね)の一人娘・伏姫(ふせひめ)が持っていた。

その伏姫は、里見が安西景連(あんざい かげつら)に攻められたとき、愛犬・八房(やつふさ)とともに景連を討つ。

義実が姫を探し当てたとき、身につけていた数珠から、8つの珠だけがなくなっていた。

「8つの珠を持つ八犬士があらわれて、里見の家を守る」と予言した姫は、息を引き取る。

八犬伝では、八犬士たちは小さいころから珠を持ち、体のどこかに痣(あざ)がある。

しかし本作では、犬士たちがなにかの拍子に珠を手にする、という設定だ。



八犬伝といえば、村雨丸。

村雨丸は鎌倉公方に伝わる宝刀で、犬塚信乃(いぬづか しの)の父・番作(ばんさく)が、公方から託されたもの。

信乃がこの刀を公方に返上しようと旅立つところから、八犬伝本編の話が始まる。

しかし本作での村雨丸は、安房の国守である証として公方から与えられたもの、という設定だ。

その村雨丸を、網乾左母二郎(あぼし さもじろう)が偽物(にせもの)とすり替えるというのは同じだが、本作の左母二郎は、馬加大記(まくわり だいき)の腹心。

つまり、左母二郎が村雨丸を手にしたことで、馬加は安房の国守になる権利を手に入れたことになる。

馬加は、村雨丸を失った里見を攻め、義実たちを城から追い出した。

城から落ちのびた義実たちが、再起の時を待ちながら身を隠しているところに、伏姫の亡霊が現われる。

「今は受難の時。八犬士が現われるまで、しばらくお忍びください」

そんな義実たちを、馬加の家臣である赤岩一角(あかいわ いっかく)たちが攻めたてる。


そして、物語はクライマックスへ。
(以下、ネタバレあり)


信乃が義実に告げる。

「八犬士のうち、未だ7人しか揃っていない(犬坂毛野が持つ「智」の珠が不在)が、残った者たちで村雨丸を取り返し、里見家の再興を果たす」と。

信乃たちが村雨丸を取り返そうとするが、それは囮(おとり)で、本物は馬加の手から公方の手に渡っていた。

村雨丸を取り返したことで、安房の国守に任ぜられた馬加は、祝宴を開くことを理由に、公方を安房へ招待する。

馬加は、そこで公方を毒殺し、自分が取って代わろうと企てていたのだ。

父の敵である馬加を討とうと、白拍子として城内に入り込んでいた旦開野(あさけの)こと犬坂毛野は、この悪巧みを見破る。

馬加が公方に手をかけようとしたとき、信乃たち七犬士が登場!

「天に代わって成敗してくれる」

村雨丸を奪い返した浜路をめぐって、信乃と左母二郎が最後の対決!

村雨丸は無事、義実の手に戻る。

自らの非を認めた公方は義実に謝り、義実に改めて安房の国守を任じた。

めでたし、めでたし。





以下、余談。


さて、ここで質問。

「智」の珠を持つ8人目の犬士は、だれでしょう?

先ほど、「犬坂毛野が持つ「智」の珠が不在」と書いたので、父の敵である馬加を討った犬坂毛野(旦開野)、と思われることじゃろう。

ところが本作では、左母二郎から村雨丸を守り抜いた浜路の懐から、「智」の珠出てきたんじゃの。

つまり、常に伏姫の側で仕えていた浜路に、8つめの珠が与えられたことになる。

前回も話をしたが、この映画の設定を流用(?)したのが、映画『宇宙からのメッセージ』(1978年、東映)。

ガバナス帝国に侵略されたジルーシアの長老・キドは、勇者を求めてリアベの実、8個を宇宙へ放つ。

キドの孫娘でヒロイン・エメラリーダと戦士・ウロッコは、リアベの実を手にした勇者たちを探す旅に出る、というストーリー。

この映画で、8人目の勇者として選ばれたのが、エメラリーダと常に行動を共にしてきたウロッコじゃったんじゃの。





今日は、映画『妖雲里見快挙伝 完結編』について話をさせてもろうたでがんす。


ほいじゃあ、またの。



(文中、敬称略)
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映画『妖雲里見快挙伝 前編』

2024年04月09日 | まんが・テレビ・映画
江戸時代の後期、曲亭馬琴(きょくてい ばきん。滝沢馬琴(たきざわ ばきん))が著わした大長編小説『南総里見八犬伝(なんそうさとみはっけんでん。以下、「八犬伝」と略す)』。

この八犬伝を題材とした作品は、歌舞伎や演劇、小説をはじめ、映画・テレビ・漫画・アニメと、いろいろな形で発表されてきたんじゃの。

ほいじゃが、犬塚信乃(いぬづか しの)が安西景連(あんざい かげつら)の家臣で、犬川荘助(いぬかわ そうすけ)が馬加大記(まくわり だいき)の家臣だった、というトンデモな設定の物語がある。

それが、今回紹介する映画『妖雲里見快挙伝 前編』じゃ。





映画『妖雲里見快挙伝 前編』は、2024年3月29日から4月12日まで、YouTubeで2週間限定無料配信中。



↓映画『妖雲里見快挙伝 前編』については、こちら↓

「【2週間限定無料配信】妖雲里見快挙伝 前編」新東宝【公式】チャンネル





今日は、映画『妖雲里見快挙伝 前編』についての話でがんす。





映画『妖雲里見快挙伝 前編(以下、「本作」と略す)』は、1956(昭和31)年公開で、監督は渡辺邦男、脚本は川内康範。

八犬士を演じる俳優の方々は、以下のとおり。

犬塚信乃(いぬづか しの):若山富三郎
犬川荘助(いぬかわ そうすけ):和田孝
犬山道節(いぬやま どうせつ):中山昭二
犬飼現八(いぬかい げんぱち):小笠原竜三郎
犬田小文吾(いぬた こぶんご):鮎川浩
犬江親兵衛(いぬえ しんべえ):沼田曜一
犬村角太郎(いぬむら かくたろう):御木本伸介
犬坂毛野(いぬさか けの):城実穂



本作のストーリーを紹介すると…。


安房の滝田城主・里見義実(さとみ よしざね)は、隣国の安西景連に攻められ、落城寸前だった。

景連は、義実の一人娘・伏姫を差し出すよう求めるが、義実はこれを断る。

景連の家臣・信乃は主君を諫(いさ)めるが、そのことで景連の怒りを買う。

義実は伏姫に対して、元家臣・犬田小文吾の許へ逃れるよう諭す。

また、義実の妻・五十子(いさらご)は、里見家に代々伝わる八つの水晶と小玉百個を連ねた御仏の珠数を伏姫に手渡す。

しかし、伏姫は愛犬・八房(やつふさ)とともに景連の許へ。

そのことを知った義実は、景連の陣へ攻め込む。

義実がそこで見たのは、八房にかみ殺された景連と、瀕死の伏姫だった。

伏姫が手にしている数珠から、八つの珠が無くなっていた。

伏姫は、その八つの珠を持つ八犬士があらわれて里見家を守ると予言したのち、息を引き取る。

義実の前にあらわれた信乃は、自らの命と引き換えに、景連の兵に追っ手をかけないよう願い出る。

義実がこれを受け入れたことをきっかけに、信乃は義実の家臣となり、亡くなった伏姫の侍女だった浜路(はまじ)と仲良くなる。



…というわけで、義実が伏姫に娶わせ(めあわせ。夫婦にする)ようとしていた金碗大輔(かなまり だいすけ。のちの丶大法師(ちゅだいほうし))が出てこない。

当然、富山(とやま)の見せ場もない。

そのほかにも、円塚山(まるつかやま)、芳流閣 (ほうりゅうかく)、庚申山(こうしんやま)といった見せ場もなくなった。

ただ、浜路に思いをかける網乾左母二郎(あぼし さもじろう)が彼女を口説く、浜路口説きの場面はしっかりと出てくる。

俺は、おまえの行方不明の兄・犬山道節の消息を知っている、それを教えてやろうと、浜路に近づく左母二郎。

だが、その左母二郎の邪魔をするのが、彼の手下として働く、悪女の船虫(ふなむし)。

原作では一介の浪人の左母二郎が、大記の腹臣であり、妖術も使えるという設定。

左母二郎と同じく妖術を使い、猫に化けることができる赤岩一角(あかいわ いっかく)も、大記に仕えている。



八犬伝で、信乃が父から託され、鎌倉公方・足利成氏(あしかが なりうじ)に返上しようとしていたのが、名刀・村雨丸。

本作での村雨丸は、安房の国守(くにもり)の証として、鎌倉公方から里見家に与えられた名刀、という設定。

そのため、何年かに1度、里見家の使者が村雨丸を鎌倉へ持参し、それが本物であることを改めてもらうことになっている。

その道中に村雨丸を奪うことで、安房の国守としての証を無くした里見家を安房から追い出そう、と左母二郎は考えた。

そして、左母二郎と一角は、村雨丸をすり替えることに成功する。

里見家の家老は、その責を負って、成氏の面前で切腹。

成氏の使者は里見家に対して、15日の猶予を与えるから村雨丸を探し出せ、さもなくば安房の国守を免じ、所領を没収すると伝えてきた。

さあ、どうなる?



…というわけで、前編はここまで。
後編(完結編)をお楽しみに!





ここで、本作での八犬士についておさらいしておこう。

景連の家臣だった信乃は、義実に家臣として迎えられたのち、大記の手に落ちた村雨丸の探索へ。

大記の家臣・荘助は、信乃と同じく主君を諫めたためにその怒りを買い、牢に入れられる。

父の敵・大記を狙う道節は、主君・義実の許から離れている。

成氏直々の家臣・現八は、村雨丸が偽物であることがわかったとき、村雨丸探索の期間を与えるよう、主君に直言。以後、信乃と行動を共にする。

現八に助けられた信乃が逃げ込んだ小屋で、ふたりを匿(かく)ったのが、旦開野(あさけの)と名乗っていた毛野。毛野も大記を敵として狙っている。

義実の家臣・小文吾は、村雨丸拝領の折、足利家に対して粗相があったため謹慎の身となり、今は庚申山に住んでいる。村雨丸探索の折、義実の許にかけつけた。

親兵衛は、義実の家臣として側仕え(そばづかえ)をしている。

角太郎は…、どこで出てきたか分からなかった。





以下、余談。


本作で、八犬伝と大きく違っているもののひとつに、珠の扱いがあるんじゃの。

八犬伝では、犬士たちは小さいころから、仁(じん)・義(ぎ)・礼(れい)・智(ち)・忠(ちゅう)・信(しん)・孝(こう)・悌(てい)の文字がある珠を持ち、体のどこかに痣(あざ)があるという設定。

本作では、伏姫の手を離れた八つの珠が、犬士たち本人が知らないうちに手にする。

たとえば信乃は、義実に対して景連の兵に追っ手をかけないよう願い出て、受け入れられる。
そしてその首を刎(は)ねられようとした時、「孝」の珠が信乃の懐から出てきたんじゃの。

この設定を流用(?)したのが、映画『宇宙からのメッセージ』(1978年)。

ガバナス帝国に侵略されたジルーシアの長老・キドは、勇者を求めてリアベの実、8個を宇宙へ放つ。

キドの孫娘でヒロイン・エメラリーダと戦士・ウロッコは、リアベの実を手にした勇者たちを探す旅に出る、というストーリー。

この映画では、八犬伝のような珠ではなく、その外観がクルミのようなリアベの実という設定なんじゃがの。



↓映画『宇宙からのメッセージ』については、こちら↓

「映画 宇宙からのメッセージ 1978 特報」YouTube





以下、さらに余談。


『宇宙からのメッセージ』で地球連邦議長を演じている丹波哲郎(たんば てつろう)は、本作では左母二郎を演じていた。

新東宝時代の丹波は、主に敵役・悪役として活躍していたそうじゃ。

丹波と同じく新東宝からデビューしたのが、犬山道節を演じた中山昭二(なかやま しょうじ)。

中山といえば、『ウルトラセブン』(1967年から68年)でキリヤマ隊長を演じた方。

テレビの時代劇で何度かお見かけしたことはあったが、映画でお見かけしたのは『惑星大戦争』(1977年)くらいじゃったかの?

というわけで、今回は中山が出演する貴重な映画を観せてもろうたわけじゃが。





以下、もひとつだけ余談。


左母二郎の手下として働く船虫は、左母二郎が懸想(けそう。思いをかけること)する浜路を憎み、その顔を二目と見られない(ふためとみられない。見るにたえない)ようにしてやる、と浜路に迫る。

この船虫を演じているのが、阿部寿美子(あべ すみこ)。

「どこかで聞いたような名前じゃの…」と思って調べてみたら、NHKの人形劇『新八犬伝』(1973年から1975年)で、玉梓(たまずさ)の声を担当された方。

八犬伝での玉梓は、自分を打ち首とした義実に対し、里見家を末代まで祟る(たたる。災いを与える)と言い残した。

『新八犬伝』で、玉梓が登場するときの決まり文句が、「我こそは玉梓が怨霊」。

当時、小学生だったわしは、友だちと一緒にこのセリフをマネをしたもんじゃ。

ウィキペディアによると、この玉梓の台詞の演技は大変に体力を消耗するので、体調の悪いときは貧血で医務室行きになったこともあったという。

もっとも、本作では玉梓は出てこんのじゃがの。



↓NHK人形劇『新八犬伝』については、こちら↓

「連続人形劇 新八犬伝」NHKアーカイブス





今日は、映画『妖雲里見快挙伝 前編』について話をさせてもろうたでがんす。

続編の『妖雲里見快挙伝 完結編』も是非、観てみたいもんじゃ。


ほいじゃあ、またの。



(文中、敬称略)
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