晴徨雨読

晴れた日は自転車で彷徨い、雨の日は本を読む。こんな旅をしたときに始めたブログです。

大栗峠考(25) 1/11

2012-01-11 | 山・峠

2012.1.11(水)晴、曇、雨、霙、雪

 大栗地名の謂われについて、動詞の刳る(くる)からなる崩壊地名ということに落ち着いているのだが、どうも気になる事がある。大栗峠考(22)(2011.12.21)に書いている”グリ”地名のことである。
 グリというのは礁、泫、繰などの字で表されている、いわゆる暗礁、岩礁をいうことである。志古田道に存在する大きな岩を森の中の暗礁にみたてて大栗と称されないかと書いたのだが、無理があるかなと思っていたところである。ところが先日、他の調べ物をしていて「地名の研究」柳田国男著を見ていて驚くべき文章を見つけた。地名考説の四八にグリというのがあって、海中の暗礁のことを云っているのだろうと思いつつ読み進んだのだが、実はこの文章はグリ、クリは海中の岩を表すばかりでなく、地上の石のことを表しているというのが主題なのである。

 筑前糟屋郡の海上、中略、一名はなぐりと称する周約六十間、高さ十間ほどの立岩あることを載せ「山は皆立ちたる岩なり、方なる柱を立て並べたるが如し」とある。すなわちこのグリは隠れ岩ではないのである。

 『万葉集抄』には、山陰道では石を久利とよぶと出ており、しかも一方には何いくりという地名が若狭三方郡気山の海村にも多くあれば、あるいはまた丹波近江などにもある。

 但馬の城崎温泉の近くで、はなはだ有名なる玄武洞の玄武岩は、『笈埃(きゅうあい)随筆』巻二の石匠の条には「土人之を竹繰石或は滝繰石とも謂ふ」と記している。グリが本来は暗礁のことでなくて、たんに石を意味する方言であったよい証拠である。P1000270

 
玄武洞。

 わたしが、「こぶし大の石が栗石なら、大きな岩は大栗と呼べないでしょうか」と想像したことが既に柳田氏の書の中に書いてあったのだ。志古田道を歩いて多分に目に付いた大きな岩が大栗地名の由来の可能性は大となった。
 十倉志茂、忠あるいは与保呂にある大栗がどのようなところか確認したいところである。Img_3437
 
志古田の天狗岩、これが一番大きい。


P1000398

志古田道崩壊部分の下の大岩、右下のザックで比べて欲しい。



P1000401
これは写真で見るほど大きくない、2m程度か。


P1000407_2
かなり下流で小字大栗ではないが、巨大な岩があちこちにある。



なお、柳田氏の文中の若狭気山の何いくりという地名は確認できていないが、南丹市美山町に井栗姓の知り合いがおり、地名にもあるのではないかと探してみると、芦生(あしう)に井栗(いぐり)という字があった。
 つづく(大栗峠考(24)は2012.1.5)

今日のじょん:ユキちゃんが来たと思ったらサチも来て、竹輪争奪戦になるかと思ったのだが、ユキちゃんの胃腸の調子が悪くてサチの独壇場になった。P1000778 P1000779 P1000780

  

コメント
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