ルエリア・マクランサ
日の光が徐々に復活して、部屋の中で冬をもてあましていた植物達も動き始めたようだ。
セントポーリアが咲いて、ルエリアに蕾が見えてきた。
昨夜 集りの夕食はデザートのコーヒーゼリーで終わった。
そのゼリーに薄荷(ミント)の葉が添えられていた、噛むと懐かしい刺激が体中に広がる。
初夏 水辺の薄荷草をちぎって、両手で揉むと、咽るような快い刺激臭が立ち込めて、体の中を涼風が通り抜けるようだったことを思い出した。
同席の同年代は思い出すことも似通っている。
鶏の解体、泥鰌、タニシと話題は進んで、嫌いだった蛇、毛虫に話しは及ぶ。
毛虫が厭で、毛虫のことを考えただけで夜も眠れなかったという人のお話。
「薪の中に潜むカミキリの幼虫が食べたくて、父親の薪割りにずっとついていた。
運良く割ったまきから白い丸々と太った幼虫が転がり出ると歓声を上げて拾い、風呂の焚き口に向った」
誰かが「そうだよなー 風呂の焚き口は外にあったんだよね」と相槌を討つ。
「焚き口から熾(オキ)を掻きだして、熱いオキの上に白い幼虫を乗せる。
丸まっていた食材が突然一直線に延びて、香ばしい香りが漂えば仕上がりである。
その美味しさは食べた人でないとわからない」とうっとりする。
「焼いてしまえば毛虫も同じでしょ」というと眉をつり上げた。
日の光が徐々に復活して、部屋の中で冬をもてあましていた植物達も動き始めたようだ。
セントポーリアが咲いて、ルエリアに蕾が見えてきた。
昨夜 集りの夕食はデザートのコーヒーゼリーで終わった。
そのゼリーに薄荷(ミント)の葉が添えられていた、噛むと懐かしい刺激が体中に広がる。
初夏 水辺の薄荷草をちぎって、両手で揉むと、咽るような快い刺激臭が立ち込めて、体の中を涼風が通り抜けるようだったことを思い出した。
同席の同年代は思い出すことも似通っている。
鶏の解体、泥鰌、タニシと話題は進んで、嫌いだった蛇、毛虫に話しは及ぶ。
毛虫が厭で、毛虫のことを考えただけで夜も眠れなかったという人のお話。
「薪の中に潜むカミキリの幼虫が食べたくて、父親の薪割りにずっとついていた。
運良く割ったまきから白い丸々と太った幼虫が転がり出ると歓声を上げて拾い、風呂の焚き口に向った」
誰かが「そうだよなー 風呂の焚き口は外にあったんだよね」と相槌を討つ。
「焚き口から熾(オキ)を掻きだして、熱いオキの上に白い幼虫を乗せる。
丸まっていた食材が突然一直線に延びて、香ばしい香りが漂えば仕上がりである。
その美味しさは食べた人でないとわからない」とうっとりする。
「焼いてしまえば毛虫も同じでしょ」というと眉をつり上げた。
小型ジェット機エンブラエル170(ブラジル製)に
どこか似ている
日航が破綻して、松本空港は定期便が飛ばなくなる日が迫っていた。
10年に一度、乗るか乗らない程度でも、飛行機が飛ばないのは寂しい事と思った。
しかし ありがたいことに、フジドリームエアラインズという会社が、小型ジェット機を毎日飛ばしてくれることになった。
乗客を増やすための課題は山積していると聞く、まずは自分たちが利用することを考え、旅行業者も空を短時間で飛ぶメリットを積極的にアピールしたらどうだろう。
とにかく率先して今年の秋は北海道に飛ぼう・・
だけど 生憎 雨が降って雲が低く、本日のフライトはありませんとアナウスが流れたら、なんとも悲しいことになる。
どこか似ている
日航が破綻して、松本空港は定期便が飛ばなくなる日が迫っていた。
10年に一度、乗るか乗らない程度でも、飛行機が飛ばないのは寂しい事と思った。
しかし ありがたいことに、フジドリームエアラインズという会社が、小型ジェット機を毎日飛ばしてくれることになった。
乗客を増やすための課題は山積していると聞く、まずは自分たちが利用することを考え、旅行業者も空を短時間で飛ぶメリットを積極的にアピールしたらどうだろう。
とにかく率先して今年の秋は北海道に飛ぼう・・
だけど 生憎 雨が降って雲が低く、本日のフライトはありませんとアナウスが流れたら、なんとも悲しいことになる。
頭を雲の上に出し
夜行性のムササビは人の目に触れる機会はきわめて少ないけれど、近くの林に生息している確率は高いと私は見ている。
「その存在を確認する方法がないわけではない」と大原先生が言った。
ムササビは食料にした木の実の、特徴ある食べ滓を下に落とす。
第一はその残滓を探すことである、しかし 同じ里山にすむ日本リスも同じ残滓を残す。
「専門家でも残滓から落とし主を特定することは難しい」と大原先生は続けた。
方法はある、幸いなことにムササビと日本リスは活動の時間帯が明確に違う。
リスタイムが終わった時点で、森林に落ちている残滓を拾いつくしてしまえば、次の朝リスタイムが始まる前に森林を探索し、見つかった残滓の落主はムササビと特定できる。
ここで 自然は上手く作用する、雪は里山のすべてを覆い隠し、無垢な雪原が広がる。
きつつきがこぼした小さな木屑も、無垢な雪原では見落とすことはないだろう。
問題は深い雪にまみれて、ひたすら捜索する体力と気力の持続である。
幸か不幸か、今年はまだ探索に適した降雪はない。
夜行性のムササビは人の目に触れる機会はきわめて少ないけれど、近くの林に生息している確率は高いと私は見ている。
「その存在を確認する方法がないわけではない」と大原先生が言った。
ムササビは食料にした木の実の、特徴ある食べ滓を下に落とす。
第一はその残滓を探すことである、しかし 同じ里山にすむ日本リスも同じ残滓を残す。
「専門家でも残滓から落とし主を特定することは難しい」と大原先生は続けた。
方法はある、幸いなことにムササビと日本リスは活動の時間帯が明確に違う。
リスタイムが終わった時点で、森林に落ちている残滓を拾いつくしてしまえば、次の朝リスタイムが始まる前に森林を探索し、見つかった残滓の落主はムササビと特定できる。
ここで 自然は上手く作用する、雪は里山のすべてを覆い隠し、無垢な雪原が広がる。
きつつきがこぼした小さな木屑も、無垢な雪原では見落とすことはないだろう。
問題は深い雪にまみれて、ひたすら捜索する体力と気力の持続である。
幸か不幸か、今年はまだ探索に適した降雪はない。
「カワウソも人を騙すことがある」と祖父が言った。
という事はこのあたりの河川にカワウソが生息していたのだろう。
本家と新宅があって、本家は長男である父が継いで、次男の叔父は分家に出た。
事情があったのだろう、そのころ祖父と祖母は分家の叔父の家で暮らしていた。
私達兄弟はしょっちゅう新宅に行っては祖父に昔話をせがんだ。
それは千一夜を越える回数であった事は間違いない。
しかし残念ながらどれ一つとして完全な形で覚えている昔話はない。
祖父は度重なるアンコールに疲れ果てたけれど子供達は攻撃の手を弛めない。
「とびっきり面白い話をするから今夜はそれで終わりだ」
承諾した子供達は固唾を飲んだ。
「朝起きてみると雪が積もっていた、だから面が白く面白かった」
不満そうな孫達を尻目に祖父はもう高いびきであった。