或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

Frick Collection

2011-10-12 05:51:56 | 870 米国紀行
今回の米国旅行で最初に訪問したのが、5番街にあるフリック・コレクション。メトロポリタン美術館から南へ歩いて数分の高級住宅街の中にある。ここはピッツバーグ出身の実業家であるヘンリー・フリックがかつて実際に住んでいた私邸。といっても決して狭いわけではなく、広々とした造りと豪華なインテリアからは、当時の彼の財力を十分に感じ取ることができた。

この美術館は、とにかく作品の質が高い。どの作家のものも1級品。まあそれだけフリックのセンスが素晴らしかったということ。エル・グレコやホルバインもあれば、ゴヤやレンブラント、ターナーもある。そうそう、ルノワールの「母と子供たち」(1876)の子供の眼差しが、それは愛らしかった。惜しむらくは写真撮影が禁止されていたこと。プライベート美術館はほとんどだけど。

そんな名作揃いのコレクションの目玉は、なんといっても3点のフェルメール。玄関を入ると、いきなり2階の階段に通じる狭いスペースにそのうち2点が展示されていて。「中断されたレッスン」(1660)と上の画像の「兵士と笑う娘」(1655-1660)の2点。後者の実物を見て初めて気づいたのだけど、フェルメールの作品で、これ程くったくなく微笑んでいる作品も珍しいなと。

最後の1点は、大広間である西ギャラリーに展示されていた下の画像の「婦人と召使い」(1665-1670)。この作品はフリックが最後に購入した作品として有名。1919年に30万ドル近い高額で購入。死去したのがその数ヶ月後。この作品にはそれまでに見たフェルメールとは異なる印象を持ったかな。シナリオを強く感じたというか、婦人の見えない顔が逆に物語を強く想像させた。

ということで、フェルメールは少なくとも10回以上戻っては繰り返し眺めたような。それにしても美術館全体が醸し出す落ち着きのあるゴージャズな雰囲気が素晴らしかった。こういうプライベート美術館というのは、絵画だけでなく建物や装飾のひとつひとつからオーナーの趣味が感じられ強く印象に残ることが多い。ここもまさにそれ。あたかも自分がこの大邸宅のオーナーになったような気がしたなあ。