或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

神奈川県立近代美術館

2011-10-03 05:45:44 | 300 絵画
出張帰りに横浜でジャズのライブを聴いた話の続きだけど、翌日は、何故か鎌倉へ。最初は横浜や都内の美術館を物色したのだけど良い企画が見つからない。悩んだ挙句に決めたのが鎌倉にある神奈川県立近代美術館。実は数年前に、これまたひとりで鎌倉へ遊びに行き、有名な観光地巡りをしたのだけど、何故かこの美術館だけがコースから外れていた。

場所を調べていて驚いたのが、鶴岡八幡宮の境内にあったこと。前回ニアミスしていたことに気づいて。確かに参道からやや外れているし、建物そのものが古いので目立たない。それもそのはず、ここは20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエの愛弟子、坂倉準三が設計し、日本で最初の公立近代美術館として1951年にオープン。なんか国立西洋美術館の雰囲気につながるなあと感じていたのだけど、なるほどと。無機質的でシンプルな中にどこまでもモダンって感じ。

今回興味を持ったのは、”開館60周年 近代の洋画 ザ・ベスト・コレクション”という企画展を開催していて、何か日本の近代洋画で出会いがあればなと淡い期待を抱いたから。展示室に入ると、高橋由一の「江ノ島図」(1876年)が出迎えてくれて。それから特集されていた松本竣介の「立てる像」(1969年)等を鑑賞。佳作揃いだったし、美術館の雰囲気とマッチしていた。

サプライズは上の写真の佐伯祐三による「門の広告」(1927年)。和歌山近代美術館の回顧展でも展示されていた作品。近代を飾る数多くの画家の作品の中でもひときわ異次元の光彩を放っていた。特に圧倒されたのが背景。なんでもない薄汚れたベージュの曇り空なのだけど、筆致がすさまじい。情念のほとばしりとしか言いようかない程心に訴えてくる。さすが佐伯。

十分に堪能した後で休憩しようと階段を下りると、眼前に蓮(ハス)と睡蓮の池が拡がっていて。和んだなあ。置いてあった黒いソファーに腰掛けると、快い風が体を通り抜けた。なんという心地良さ。平日のせいか辺りに人影はなく、30分ぐらいだったかなあ、そこにたたずんだのは。その辺りの独り占め。今思えばこの上なく贅沢な時間だったような気がする。