或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

14区 カンパーニュ・プルミエール通り

2010-02-20 07:50:57 | 830 パリ紀行
画家、佐伯祐三のパリでの足跡を辿るシリーズの第6弾は、14区にあるカンパーニュ・プルミエール通り(Rue Campagne Premiere)。この通りは既にヌーヴェル・ヴァーグの代表作である映画「勝手にしやがれ」の舞台として紹介したけど、佐伯が絵を描いた場所でもある。モンパルナス大通りに面している通りの中では、佐伯が住んでいたアパートから最も近かったはず。

当時は様々な種類の商店が立ち並んでいて、彼や妻の米子が普段買い物とかをするのによく利用していたらしい。今は商店街としては寂れていて、よくある都会の裏通りといった感じ。それでも昔の面影を残す店がいくつか残っていて、上の写真は靴屋。彼の作品の中にこの通りで描いたかどうかは分からないけど、「靴屋」(1927年)というのがあって、そこに描かれた禿げたオッサンのイメージが強かったのだけど、店の中で働いていたのは数人の若いイケメンだった。なんて、どうでもいいけど。

それでどうしても見ておきたかったのが、だいぶ前に佐伯祐三シリーズの最終回で紹介した三重県立美術館にある「扉」(1928年)。佐伯自身が最も気に入っていた作品のひとつ。実はこの通りの27番地にあるアパートの入口の扉を描いたもの。実際に行ってみると80年も経っているので表面は幾度も塗りかえられ、色も当時の黒系から今はカーキ系に変わっていた。でも扉そのものは当時のまま。あまりのリアリティに何度も何度もデジカメのシャッターを切ったかな。後でかなり興奮していた自分に気づいたけど。

この通りはモンパルナス大通りからラスパイユ大通りに抜ける小路で地味だし、短くて狭い。当時はもう少し活気があっただろうけど、人通りがまばらで何かしら寂しいその雰囲気は、佐伯が描く絵のモチーフとしてはピッタリだったような気がする。

扉 1928扉 2009