或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

サグラダ・ファミリア

2009-02-23 06:11:42 | 010 書籍
「白い薔薇の淵まで」(2001年)を借りる時に、図書館のWEBで中山可穂の作品を検索している時に見つけたのが「サグラダ・ファミリア[聖家族]」(1998年)。タイトルを見て、スペインのバルセロナにあるガウディが設計した建物が脳裏に浮かんで。

読んでいて主人公の響子がピアニストだったので親近感が湧いたのは確か。極めつけは小説のポイントにもなっているコンサートでの演奏曲。ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。昨年の小山実稚恵のコンサートで終演後にサインをもらったのがこの曲のCD。数あるピアコンの中でもお気に入りの曲。なんか”つながる”なと。それもあって、ついつい物語に引き込まれて。

いつになくクールな文章が主人公の芸術家らしい雰囲気を漂わせている。中山作品ではお馴染みのレズビアン、いや”ビアン”。初めて知ったけど、どうもその世界では”レズ”とは言わず”ビアン”というらしい。その彼女が、かつての”ビアン”の相手の女が生んだ男の子と、その子の父親の相手だった”ホモ”の男と3人で暮らし始めるというストーリー。複雑な設定ではある。

後半どうも日常的な場面が多くなり芸術的な雰囲気が薄れたけど、全体としてはまずまず楽しめた。それで読み終わって浮かんだのがひとつの疑問。サブタイトルの”聖家族”の意味が分からない。調べるとサグラダ・ファミリアというのはスペインのカタルーニャ語で”聖家族”という意味。ガウディの建物も、別名”聖家族贖罪教会”とか”聖家族教会”と呼ばれているとか。

ところで”聖家族”って何?と新たな疑問が湧いたのでさらに調べると、キリスト教では父ヨセフ、母マリア、子キリストの3人を指すのだとか。つまり登場する3人を例えているわけか。両親とは血がつながっていない子供を育てるというのも”処女懐胎”を匂わせているのかも。ただし流派によって解釈が違うみたいだし、ややこしそうなので素人が深入りするのはやめたけど。

上の画像は大原美術館にある有名なエル・グレコの「受胎告知」(1590-1603年)。この美術館の代名詞にもなっている作品で何度も観ているけど、今回宗教について少し勉強したおかげで、ようやくタイトルの意味が分かった。ちょっと情けないか。

サグラダ・ファミリア[聖家族](新潮文庫)サグラダ・ファミリア[聖家族](新潮文庫)<br>