ガリバー通信

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痴呆でなく認知症

2005年02月18日 | 地域の話題

 今日、私はわが町に出来る初めてのグループホームの建設工事現場に行った。

 今年3月オープン予定なので、ほとんど建物は完成しており、内外の付帯工事や内装的工事がされていて、全体的にはこじんまりした目立たない建物で、あと一ヶ月もすると、ここにいわゆる痴呆性高齢者が入られるのかとイメージすることすら出来ない感じであった。

 計画によれば、介護保険に適用した、痴呆対応型共同生活介護をする施設として、1ユニット9名の入所が可能な施設として、京都府で十数箇所の実績のある医療法人が開所する準備をすすめていると言う。

 「痴呆」はお年寄りに失礼だとして、最近「認知症」なる用語が使われるようになってはいるが、要は物忘れというか、日常生活にも支障が生じるような事態に及ぶような、自分の行為や言動も、時間的経過もわからなくなるような症状が出たかと思うと、全く次の瞬間にはまともであったりするから、確かに家族や介護する人たちにとっては厄介な部分があるのである。

 実態は「痴呆」であり、いくら「認知症」と称しても、現実的対応は変わらないのである。

 先日、この「認知症」の入所施設である、ある地方のグループホームで痛ましい事件が起きた。
 12名の痴呆症状のある入所者がおられる施設で若い男性職員が、夜間一人で勤務していて、ある女性入所者に腹を立てて、温風ファンヒーターを顔のすぐそばに長時間あてて、やけどによる失血死に追いやった、痛ましい殺人事件であった。

 5年前の介護保険法による、介護保険サービスの進展の中で、多くの在宅サービスと施設入所サービスがうなぎ上りの数量で増加し、それに伴う介護ビジネスの業界も以上拡大しているし、この介護に携わる視覚を持った職員も急遽、急増、急造されているのである。

 こうした介護職員になるための養成機関、専門学校、資格取得講座などは目白押しで、何処でも開催されているし、これまた大きな収益をねらったビジネスとしても林立しているのが現状である。

 この事件を起した青年が、どういう人であったかではなく、多くの急造された、いや資格は取得されているが、人間関係の基本的イロハや、特に介護サポートやビジネスに関わる人間性や人権意識など、学習、研修の有無だけではなく、人としての思いやりや配慮、きづかいなど、忍耐強く、また愛情をもって為すことは、並大抵の精神力だけでは大変困難な場合があるのである。

 私が知っている、ある特別養護老人ホームの理事長は、私達がその施設を見学している最中に、大きな声で、施設の入所者の部屋から「おーい、誰か○○さんもらしとるぞ、オムツ替えたれや」と叫んでいたのである。私はこの一言で、この施設は介護サポート、入所施設としてふさわしくないと断言したい気持ちになったことがある。

 どう考えても、高齢者介護施設を運営する理事長とは思えない、暴言であり、人権意識などさらさらないのである。一時が万事とはこのことではないかと思えたのである。こうした対応をする責任者では、現場の多くの職員が誠意的に高齢者等に接していても、何かあった時の対応に、ぼろが出ること間違いなしではないだろうか。

 私は「痴呆」を「認知症」と言い換えることよりも、もっと根本的な高齢者ばかりではないが、障害者や多くの社会に存在する差別や偏見のベースに、しっかりとした人権意識、つまり人としてこの世に生まれたたくさんの人を、平等かつその人の個性とキャラクターを尊重して認めたうえで、必要な関係を誠意をもって築くことが大事なのである。

 わが町に出来る最初の「認知症」のひとたちのための「グループホーム」が地域の人々共に、しっかりした人権意識とケアの学習と技術と経験だけでなく、人としての忍耐強く、明るい、思いやりのある職員の皆さんによって担われることを心から念願し、入所者自身はもとよりご家族にも喜ばれる施設として、稼動することを祈る心境である。

 決して憎まれたり、嫌われたりしたい人はいない。しかし老いることで他人に憎まれたり、嫌われたりするのは、憎む人、嫌う人の度量がないことと、人としての尊厳や愛情がないからである。

 誰もが老いるし、誰も物忘れは小さい頃からしているのだ。年老いたために出る痴呆も、見方や考えによれば、子ども帰りの表れなのかも知れないのだ。

 誰もが、痴呆を笑ったり、軽蔑したり、怒ったり、暴力行為でいさめたりしない世の中にしなくてはならない。そのためには「痴呆症は「認知症」などと言い換えずに、痴呆のままの方がいいのかもしれないと私は感じているのである。

 
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