静岡おでん二軒の後、時間調整のために一軒の珈琲店に入ったら、ご親切に手造りケーキまで頂戴した。
有難かったが、この後に天ぷらが控えているのでいらない…なんて言えるはずもなくパクパク喰った。
「笠井珈琲店」というご主人がスイーツを手造りにする素晴らしい店だった。明記しておこう。
というわけで、その近くに知る人ぞ知る天ぷら屋「成生」へ。
もうすでに首都圏の喰い助にも聞えているだろうが、地元ではそれほど知られている訳ではない。
こんな凄味のある店が、こんな近場にひっそりとあることを知らないだろう。
今年最大の驚きはここでいただいたと言っていいほどだ。
地物のヒラメが刺身で出て、天ぷらの部に突入していく。
まず、肉厚のタチウオ・・・これは手見せというか、つかみだな。
油を感じさせないサクッとした揚がり具合。
名残りのナスはしっかりと揚げる。
誰が呼んだか、おあずけ台という皿の上で、休ませて出される。
中の半生の状態がぴたり。
江戸前の天ぷらというと小魚が中心であり、上方は野菜が中心となる。
そういう系統づけがイヤで、主人は独自の道を行く。
野菜もいちから目の前で仕込む。土付きの蓮根は大胆に縦に切る。
こう切ることで、輪切りよりも食感が出る。
カボチャは二度揚げして、外側をパリッとさせる。
みごとな甘味。これはサツマイモなどいらんね。
小さなサラダが出て、魚の部に~
アジ。しかも丸々と太った丸アジ。
前田さんという開店以来の刎頚の魚屋がいて、遠州で獲れる魚を
成生のために用意してくれるという。
もちろん主人自身も研究熱心いうまでもない。
天ぷら屋といえば、海老・穴子…そうした常識をくつがえすアジの存在感。
生でも焼きでもない、衣一枚の中で蒸し料理になったアジがある。
中華でハタなどを清蒸という料理にするが、蒸しものは質が丸わかりだという。
それと同様、鮮度と見極めがバレバレになるのだろう。
秋田・田沢湖の天然のマイタケ。
手づかみでいく。
アマダイの衣揚げ。
駿府でアマダイというと…
家康はアマダイの天ぷらで死んだな、ここぢゃ大きな声では言えない。
鍋は高温と低温。 油は太白。 たえずガス火の加減を調節しながら。
油を跳ね飛ばすように、余分な衣を飛ばすために、油に投入する。
家の台所でやると、怒られるやつや。
御前崎のサワラ・・・
こんな大きな魚を揚げるのなんて、今まで知らなかった。
みごとに半生に火が通り、ジューシー
千葉のメゴチ…
ようやく江戸前の天種が出た。
ラストは天丼・天茶・天ばらごはん…からチョイス。
私は迷わず、かき揚げの小さな天丼。
天ばらごはんも美味そう。
天茶も静岡茶で美味くないはずはない。
浜松のいちじくでシメ。
出しゃばることなく、こちらの質問には的確に応えてくれる。
志村剛生さん。
また出直してまいります。