撮影は料理写真のパイオニア、佐伯義勝さんだ。
美味しそうに撮るために様々なテクニックを開発された。
そんなスタジオの撮影風景を取材させていただいたこともある。
キツネ色に揚がった生パン粉のとんかつ、サクサクの千切りキャベツ。
ソースをドロリとかけて、かぶりつく。
サクッとして、脂がジュワッ… 上質の脂がもつ、うま味、甘味。
そこへ炊き立てのアツアツご飯を放り込む。
ああ、たまらねぇ…。
分厚いとんかつをカラリと揚げるには、良い材料もちろんのこと、
揚げ手自身の体力、気力の充実が必要だと思う。
高温に熱した油を自分の味方につけ、自在に操れるようでなくては
美味いとんかつなど揚げられない。
天寅の旦那が天ぷらの極意について書いていたが、
「油をのんでかかれ」という。
油と喧嘩する必要はないが、ピチッとはねるぐらいで
びびっていては何にもできない。
油に勝つことができなくては、いい揚げものは生まれない。
さて、このブログにかつてこんな記事を書かせていただいた。
http://blog.goo.ne.jp/goo8823-h/e/8163254de893ffa024cfadb01b705a99
とんかつ「日本橋 吉兵衛」 小野吉之助さん
とんかつ一代。弟子はいなかった。
ホウキの使い方も知らないオレみたいなのが、
短い時間だったが、彼の店で働かせてもらったのは本当に得難い経験だった。
その後も京都でメシ食わせてもらったり、
売れる前の竹中直人と一緒に行って、戯れにサインを書いたこともある。
そんな彼の孫から、今年になってこのブログに書き込みがあった。
思わず、吉兵衛の再興をお願いした。
一代おいて、復活を遂げるなんてこともままあることだ。
西洋料理数あれど ものの見事に換骨奪胎
飽くなき創意 たゆまぬ工夫の所産物
とんかつこそは 世界に誇る 和風洋食 …うまい!
猛然と食欲をかき立てる旨そうな匂い、揚げ油の音…
客のさざめきに混じる、女将さんのかん高い笑い声
開店前の掃除をしてると、ラジオから「小沢昭一的こころ」が鳴っていたような
ああ、あの番組も平和な時代の象徴だった。