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書籍3題 その3 村上春樹

2017-03-12 00:25:53 | 


村上春樹「TVピープル」文春文庫 1993年刊

不思議な本である。6編の短編からなるこの本は、何か特別な事件とか経験がるわけでなく、日常の生活の中にふと異質なものが紛れ込んでくる。表題の小編は共稼ぎの連れ合いとの生活に、ちょっと縮率の異質な小人が現れるという、誠に奇妙な設定であるが、何となくそれを読ませてしまうこの作家の力量は大したものだと思う。

近頃彼の書き下ろしの新刊が出て巷で大騒ぎになっているが、むべなるかなといったところである。

2つ目の短編「飛行機」は独り言について、「我らの時代のフォークロア」は男女の高校生時代からの優等生同士の関わりあいについて、日常の情景を描くように淡々と描写される。テーマこそ違え、後の3篇も、不思議な設定がされている。これらの物語は深く感動したり、興奮したりはしないけど、何か引っ張られる。

私の感性が老化してきて、著者の意図するものがアンテナに引っかからないのかもしれない。著者はなにか深いものを訴えようとしているのかもしれない。それともおもわせぶりなだけか。しかし何度もノーベル文学賞にノミネートされる作家なのだから、私の感性に欠陥があるのに間違いはないだろう。

奇妙な短編集だが、村上春樹らしいとはいえるものだ。