遅いことは猫でもやる

まずは昔メールした内容をひっぱってきて練習...
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ボランティア(本)

2011-12-30 00:16:13 | 


永六輔「無償(ただ)の仕事」講談社+α新書刊

この本は2,000年の発行だが、内容は少しも古さを感じさせない。

今年の最大の出来事は言うまでもなく東北大震災だが、そこに関わるボランテイ
ア活動が脚光を浴びている。

日本でボランテイア活動が議論されたのは、阪神大震災の折であり、全国から押
し寄せた善意のボランティアの面倒をみるために、現地では余分な負担を被って
しまった、という皮肉な現実がありました。

その後、北陸のナホトカ号石油流出事故で、この経験が生かされ、自己完結型の
ボランティアが普通になってきた。救援活動で自衛隊の活動が評価されているが、
これはボランティアではなく、自衛隊の任務遂行活動なので、ボランティアと比
較してあれこれ言うのは、ちょっと的はずれだろう。

永六輔は持ち前の細かい配慮で、ボランティアの活動について色々言及する。押
し付けのボランテイア活動は善意だから止むを得ない、ではすまされず、受ける
側に充分配慮すべきであること、ボランテイア活動をディストリビュートする機
能が大事である。また自己中心主義ではなく、地球規模、やバランス、歴史的な
観点など広い視野を持ってもらいたいとも主張する。実例が多く、わかりやすい記述である。

続いて、障害者への対しかたにも触れ、障害者を弱者として扱うのではなく、
「曲者」として認識すべき、また「正しい、正しくない」「美しい、美しくない」
という区分は差別意識につながる、と喝破している。弱者への対処のしかたを病
人、老人についても述べている。

私の家内もスポーツを媒体としたボランティア活動をしているが、確かにこの
「正しい、正しくない」という価値基準を全面に出してくる仲間に悩まされてい
るようである。また私のよく知っている、知人Tさんの入院中の出来事が取り上げられて
おり、懐かしい思いをしたのも、この本に親しみを感じた理由である。

この際、一読をすすめる本だ。


薪ストーブ

2011-12-29 18:51:14 | 雑感



山にいて、ホッとするのは、備え付けの薪ストーブのせいか。

火を点けるのに多少手間がかかるが、一旦火が点いたら、あとは薪を足すだけだ。
チロチロ、或いは轟々と燃える炎、パチパチとはじける薪、木の燃える香り、心
もち柔らかく感じる熱、ストーブの燃える部屋に居ると何か癒される。

外は寒い風が吹いていても、この炎を見るだけで、温まりそうだ。
多少の手間がかかるのも、帰って緊密感を感じさせる。

節電の冬で、薪ストーブの人気が出ているそうだが、そんなの関係なく、これは
いいものだ


中毒読書

2011-12-22 15:02:54 | 


佐伯泰英著 居眠り磐音 江戸双紙シリーズ 双葉文庫刊

以前、藤沢周平、池波正太郎、の時代小説に中毒症状を呈していると、記したが、
最近これらの著作に加え、佐伯泰英が加わった。このブログがきっかけである。
佐伯のスペインを舞台としたアクション小説を取り上げた際、最後に「この作者
の時代小説を読んでみたいものである」と記した。

これを読んだ、畏友のW氏が、「吉原裏同心シリーズ」を全巻貸してくれた。旅
のつれずれに読んで見ると、あっさり嵌まってしまった。それ以来である。

本シリーズはいずれも書きおろしで、九州関前藩を離れた坂崎磐音が江戸で様々
な場面で、知恵と剣術の腕を発揮する。両替商今津屋、うなぎ屋の宮戸川などが
絡む。

筋立ては、吉原裏同心シリーズと同じようなものだが、主人公は許嫁と別れた浪
人者(許嫁はやがて吉原の看板花魁になる)で前者の年上の夫婦者とは違う。剣
の達人である設定は同じで、立会場面の描写は、藤沢、池波作品より、詳細であ
る。

大体、主人公は善良な者に肩入れし、横車を押す悪者をやっつけるという筋書きだ。
最後に坂崎が腕をふるう。対決場面も、難敵と、ヤクザ風情とでは対応も描写も違う。
結構緩急がついていて飽きさせない。中毒症状が進むはずである。

年をとると、テレビドラマも時代劇を見るようになる、と言われるが(この度終
わった水戸黄門を残念ながら私は見たことがない)小説の世界も同じであろうか。

朝の散歩

2011-12-20 14:55:40 | 雑感


体力の衰えを少しでも遅らせようと、朝少しでも歩くことを心がけている。

寒さが多少緩むと散歩の足を伸ばす。(寒さが厳しいとサボりがちである)

近くの埋め立て地へ行く。朝の空気の中で、小鳥の声がやかましく響く。

冬の田畑は、緑は全くない。土手の壁に少し緑が残っている。田んぼの中の農道
を歩き、二股へ出る。「今日は風も弱いし、温かいので遠回りをしようか」と、
神社への道を選ぶ。

30分ほど歩いて、埋立地を離れる。
この辺の郷社へ朝の参拝。12/20なのに、門松が立っていた。昔、氏子総代
を勤めていた頃、12/29日に立てた記憶があるが、この頃はこんなにはやく
立てるのか。あたりも掃き清められており、すっかり正月気分だ。

早足で歩いて体の中から温まってくる。気持よく散歩を終え、家に帰ると、45
分しか経ってなかった。


3-4-3

2011-12-14 09:18:31 | 
杉山茂樹著「3-4-3」集英社刊

3-4-3とはサッカーのフォーメーションの一つの呼び名である。
今トヨタ・クラブチーム・ワールドカップが2年ぶりに日本で行われている。

ギリギリにJリーグ優勝を決めた柏が出場権を得た。ここでも2度勝って、盛り上がっている。日本ではサントスのネイマール、バルセロナのメッシなどが話題の中心だが、もう一つの観点はエメルソン・レオン監督と、バルセロナ、グアルディオラ監督がどんな采配、戦術を取るかであろう。

「決定力不足でもゴールは奪える」の著者杉山氏は、ザッケローニ監督が執拗に持ち込もうとしている、3-4-3のフォーメーションの歴史、意義、を解説している。

それによると、この形は超攻撃的なフォーメーションで、弱者、挑戦者が強大な相手に立ち向かう時に、しばしば成功しているところだ。勿論失点の可能性は高いが、それでも相手を動揺させることの多い戦術だという。スペイン、ドイツ、イングランド、イタリア、オランダなどのヨーロッパの強豪、ブラジル、アルゼンチンを筆頭にする南米の強者と対戦する時に、有効だと説く。

選手の個人能力は与えられたものとして、監督は左右できないが、攻撃、守備の両局面で相手方よりプラス1名の状況を創りだそうとする。それに最適なのが3-4-3のフォーメーションだそうだ。

核になる3-4-3の「4」のひしがた、或いはフラット陣形には、日本特有のMF人材が豊富なのでこれは案外いけるかもしれない。持久力も長友や内田など、運動量の多い選手がいるので、機能しそうである。

岡田監督が掲げた目標=W杯決勝進出への、方法論としてこれはありなのかもしれない。
3バックのリスクを最小限に抑えることができたら、このシステムは強みを発揮できる。まさに、4のMFと、3バック、前線の3との連携、がオートマチックに出来るかどうか、全員サッカーが機能するかどうかである。
漫然と選手の個人技を追っているだけでなく、監督の采配の激突を見るというのも、サッカー観戦の楽しみである。

こんなことを考えていると、サントスとバルセロナは勿論のこと、サントスと柏の対戦さえ、興味が湧いてきた。


天たかし

2011-12-13 12:37:24 | 雑感
東京から帰る新幹線から見る富士山は高かった。

雲一つない空に聳える秀峰はまさに日本の象徴だ。よくぞ日本に生まれけり。

東京で息子にメールソフトを復活させてもらい、また以前のように通信ができるようになったのも、気分を軽くしている一つの要因である。

一路名古屋へ。

政治家の殺し方

2011-12-11 08:07:37 | 
中田宏著(前横浜市長)「政治家の殺し方」幻冬舎刊

なんとも、おどろおどろしい題名の本だ。37歳で政令都市市長になった著者の、
スキャンダルとの戦いの告白本である。

議会(議員)、マスコミ、地方役人、などの実態と、現役時代の闘いを報告して
いる。タイトルほどのどぎつさはないが、おかしなことが、日常的、或いは制度
的に行われている。志や良心というものが失われると、歯止めが効かなくなっている現実はおそろしい。

政治家とは選挙で選ばれる人気商売の職業であり、スキャンダルに弱い。そこで
それを狙って、足を引っ張る政敵が現れる。背後には既得権を守ろうとする、利
権構造があるので、執念深く、熾烈である。

同じようなことのミニチュア版を私の町でも垣間見たことがある。市の公共事業を手がけている、有力
建設会社社長が、現市長に対抗して出てきた市議に対して、とった行動は陰に
こもってすざましいものがあった。小さな地方都市でこんな争いがあるのだから、
政令都市ではその何十倍の争いがあっておかしくない。

議会も、あいのり首長を担ぎ、オール与党で、行政のチェック機能を果たさなけ
れば、ぬくぬくと居心地の良い環境をつくり、お手盛りの待遇を自ら決め、おい
しい職業となる。

中田氏が2期目の任期を全うせずに引いたのはなぜか、と思っていたのだが、本
人は多選防止、国政選挙との同時選挙で選挙費用の節約、同時にオール与党化の
防止を狙ったと言っているが、このスキャンダルとの戦い、利権を守ろうとする
議員・職員との戦いに疲れたのかもしれない。

だとすると、とても惜しいことである。愛知県の知事、名古屋市長はここまでの
改革をやっているとは思わないが、それでも名古屋市長は市民税減税を旗印に孤
軍奮闘して、市議会と戦っている。だがマスコミもこのごろは河村市政に対し少
し批判的な論調が出てきた。まさにここに述べられているマスコミの体質が現れ
ているのではないか。大阪/橋本前知事に対してもそうだ。バランスを取る、批
判勢力を育てる、という大義名分はあるのだろうが、これらの改革で改善された
行政の事実はきちんと報道すべきだろう。

警世の書

2011-12-08 18:47:39 | 
官僚を国民のために働かせる法 古賀茂明著 光文社新書刊

これは警世の書と言っても良い。内部告発というほどではなく、ごく常識的な官
僚批判が平明に記されている。こんな事で圧力を加えるとはまったくもってけし
からんと思う。明治以来、戦後復興期でも城山三郎の「官僚たちの夏」で描写さ
れたように、国の将来を考えぬいた官僚たちが、日本の未来を築いてきた。

それが国の将来より、省益、省益より自分の保身を第一に考えるという現在の体たらく
を、さらりと描く。しかもそれが体制的、システム的に行われている。政治主導とか何とか言っている政治家に、意気込みや個人的なパフォーマンスで、この厚い壁が破れるわけはない。

本書は、まずは実態を報告しそれを糾弾するが、それにとどまっていない所が、
新鮮で、単なる批判書にとどまっていない。古賀氏なりの改革提案を最後の章で
おこなっている。大阪市の橋本市長が古賀氏を顧問に迎えようという動きがある
と聞くが、現状打破を図る手段としてとっても良い発想ではないかと思う。

官僚の使い方を真剣に学ぶという点では、今の民主党も自民党も参考にすべきで
あろう。とにかくいろいろな政策論議の前に、この官僚支配の構図を改善せねば、
今の日本はよくならないと痛感する。消費税とか復興増税とかいう前に、まずこ
の官僚改革を手がけなければ日本の成長はおぼつかないと感じた次第。日本のエネルギー政策の前に東電を始めとする電力会社の改革が先だと思われるように、まずはここから手を付けないと日本の将来はない。

まさに警世の書であろう。一読も二読もおすすめする。

地産地消

2011-12-04 07:34:33 | 雑感


地元のワインを飲む。

一升瓶で売っていた。はじめの一口はぶどうジュースかと思ったが、デキャンターで起こしておくと、これもいける。
アルコール度12%、ちょっと薄め。
飲んでいるうちに、慣れるのか、ワインが起きてきたせいか、酔っ払ってきたせいか、これもだんだん美味しくなってくるから不思議だ。

深く味わって飲むばかりが、ワインではなく、こうやって単純に酒を飲む、一杯飲ると言うのも悪くない。

終わらざる夏 下

2011-12-02 15:34:24 | 

浅田次郎著 集英社刊
2010年の7月に発行されたこの本は、反戦の書であると言って良い。

戦時下の東京、疎開先、召集兵の日常、などをかなり綿密に描写する。
下巻は主として、千島列島の北の果て占守島へ配属された翻訳家の老兵、手の指
を失った歴戦の鬼軍曹、帝国大学へ進んだ医者、の3人を中心に描く。

疎開先から脱走し、自宅へ向かう小学生、密かに終戦処理の準備をする占守島へ
きた大本営の参謀。缶詰工場へ勤労動員された函館の女子学生達が彩りを添える。

我々は北方四島などと言っているが、戦前はそのはるか北、カムチャッカ半島の
すぐ南まで日本の領土だったのだ。その最北端の島が占守島だ。そして敗戦。皆ががっかりするのと、心の隅で
「よかった」と感じる複雑な気持ちを、描く。確かに終戦を告げる玉音放送は、
雑音が多く聞き取りにくかったろう。

しかし、北の島では戦争は終わらなかった。ポツダム宣言受け入れを表明してか
ら3日後に突如、ソ連軍が攻めてくる。武装解除を経験豊かな老兵の勘でためらっていた、日本軍は果
敢に応戦する。この辺りの描写はロシア誤訳をして、ロシアで発刊したら、いい
のではないかと思う。確かに前線のロシア兵だって、不可侵条約を破って侵攻し
たり、降伏している相手に攻めかかるなどは、後味は悪いのに違いない。

とはいえ、満州に侵攻してきた、ロシア兵は、略奪、暴行を平気でしていたと、
母親から聞いたことがある。当時の彼等に倫理観は小説のようにはなかったのだ
ろう。

反戦を説く筆者の語り口は確かである。説教的でないのでかえって説得力がある。小説家
ができる世の中を動かすことの好例のように思う。