自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★2020秋の胸騒ぎ~上

2020年08月20日 | ⇒ドキュメント回廊

  2020年の年初では、区切りの良い年だと期待していたが、新型コロナウイルス感染拡大など世界史に残るとんでもない年になっている。猛暑が続くとは言え、季節はそろそろ夏から秋に移ろう。ただ、果たして秋晴れのさわやかな日常に戻るのかどうか。考えすぎかもしれないが、2020年秋はいろいろと胸騒ぎがする。

   「5G」対面動画、集団詐欺の新たなステージに

   きょうの午前中、知人の名前でパソコンにメールが届いた。「〇〇▽▽.Nike」という名前で、〇〇▽▽が知人のフルネームだ。知人はメールアドレスが抜き取られたに違いないかと直感し、メールを削除した。それにしても、企業名と知人名をセットにした巧妙な手口だ。以前も、自身のスマホのSMSに「お荷物のお届けにあがりましたが不在のため持ち帰りました。ご確認ください」と、宅配業者の不在通知のようなショートメールが届いた=写真=。その文字の下にURLがあった。どんな荷物が届いたのかと、そこにアクセスすると何も映らなかった。その瞬間、「やられた」と気づいた。即キャンセルをかけた。SMSを使った詐欺メール、「スミッシング詐欺」だ。

   その後、スマホには覚えのない電話番号からの着信が数度あった。こちらから電話をかけることはしなかったが、この詐欺メールは実に巧妙だ。というのも、荷物が着払いの場合は宅配業者から事前に荷物を届ける旨の電話がある。普通、荷物には届け出先の携帯番号が記されているので不在の場合、SMSメールがあっても不自然には感じない。その常識範囲の盲点を突いた詐欺メールだ。

   こうした詐欺がこの秋からさらにステ-ジアップして活発化するのではと憶測する。高速大容量と多数同時接続の通信システム「5G」がこの秋から本格的に普及し始め、キャリア各社も5G対応機種を発売している。その背景には、テレワークが一般化すると同時に、スマホでのZoom会議の需要が出てきたからだ。気心が知れた者同士の会話や、組織のリモート会議に使う分にはよいが、新たな詐欺だってありうる。

   たとえば有名証券会社の名を語った投資話がスマホのメールを通じて入り、Zoomで参加すると「犯人」は複数で劇団のようにそれぞれが投資家、ファイナンシャルプランナー役、弁護士役などの役柄を分担し、あの手この手で騙されるといったことにもなりかねない。あるいは人生相談、婚活、就活などスマホ面談という詐欺が横行するかもしれない。対面動画によるリアリティ性に人は騙されやすいのだ。

   ここで思う。スマホでの詐欺に対策の手を打つべきはキャリア、つまり携帯電話会社ではないか。事例としてはそぐわないかもしれないが、SNSではすでにフェイクや不適切な発言内容について規制をかけている。キャリアとして対策を打ってほしい。個人の責任論ではもう済まない時代にきているのではないだろうか。

⇒20日(木)午後・金沢の天気     はれ

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☆されど花 タカサゴユリに何思う

2020年08月19日 | ⇒ドキュメント回廊

    このブログのことし5月23日付「『旅するユリ』の生存戦略」で、庭のタカサゴユリ(高砂百合)が同じ場所に何年も生育することで特定のバクテリア(病原菌)が繁殖して枯死する連作障害になってしまった、と書いた。ところが、同じ庭の少し離れた場所で繁殖していて、昨日その花を咲かせた=写真・上=。

   いわゆる外来種で、4年ほど前に突如咲き始めた。花がきれいなので除去せずにそのままにしておいた。旧盆が過ぎるころ、花の少ない季節に咲く。高砂百合の名前の通り、日本による台湾の統治時代の1924年ごろに園芸用として待ちこまれたようだ(ウィキペディア)。当時は外来種という概念もなく、花の少ない季節に咲くユリの花ということで日本で受け入れられたのではないだろうか。

   この花を重宝したのは、茶道の人たちではないだろうか。匂いもなく、同じころに咲くアカジクミズヒキやキンミズヒキといった花と色合いもよく、床の間に飾られてきたのだろう=写真・下=。ムクゲのギオンマモリ(祇園守)と競うように、真っ白な花が夏の強い日差しによく映える。

   冒頭で述べた連作障害で枯死する植物なので、種子を風に乗せて周辺の土地にばらまいて新たな生育地に移動する。「旅するユリ」とも称される。この繁殖力の強さと広範囲性が外来種として「目の敵」にされる。国立研究開発法人「国立環境研究所」のホームページには「侵入生物データベース」の中で記載されている。「生態的特性」として、日当たりの良い法面や道路わき、空き地などに侵入する、とある。「侵入経路」として、観賞用として導入、高速道路法面などでよく見かけるようになった、と。「影響」として、在来種と競合、ウイルス媒介、交雑、と記されている。

   さらに、「防除方法」として、緑化資材にしない、抜き取り刈り取り、とある。面白いのは「備考」だ。「近年各地で繁茂しているが花がきれいなためなかなか駆除されない。少なくとも外来種であることを周知する必要がある」と。そのきれいな容姿に国民はだまされてはいけない。「侵入生物」であることをもっと宣伝して駆除せねば、との国環研の担当者の苦々しい思いが伝わる文章ではある。

   ひょっとしてこのブログは国環研の担当者から外来種の「共犯サイト」としてマークされているかもしれない。自らも含め、うつくしき花に翻弄される人の姿ではある。

⇒19日(水)朝・金沢の天気     はれ

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★「どぶろく」と「アイヌのサケ漁」の相関性

2020年08月18日 | ⇒メディア時評

   古来からの伝統的な生産品が明治の法律によって今でも禁止されているケースがある。自らの趣向品でもある「どぶろく(濁酒)」がそれに当たる。石川県中能登町の由緒ある神社では12月に「どぶろく祭り」を開催して参拝客に振舞っている。五穀豊穣を祈願する新嘗祭のため、どぶろくを造ってお供えする神事を古代より連綿と守ってきた。ただ、神社に行かないと飲めない。

   もともと明治初期まではどぶろくは各家々で造っていた。明治政府は国家財源の柱の一つとして酒造税を定め、日清や日露といった戦争のたびに増税を繰り返し、並行してどぶろくの自家醸造を禁止した。これがきっかけで家々のどぶろくの伝統は廃れたが、宗教的行事として神社では残った。所轄の税務署から製造許可が与えられ、境内から持ち出すことが禁じられている。最近では、地域活性化を目指す国の構造改革特区の「どぶろく特区」で、特定した稲作農業者だけに製造が認められている。

   明治期には酒税は国の税収で重きをなしていたかもしれないが、現在、どぶろく造りにまで目を光らせる理由がどこにあるのだろうか。神社に伝えられた伝統的な酵母菌のどぶろくを自由に飲ませてほしい。どぶろくは日本酒のルーツでもある。

   このニュースも「明治の負の遺産」だ。きのう17日、北海道のアイヌ団体「ラポロアイヌネイション」が札幌地裁に対して、アイヌ民族には地元の川でサケ漁を行う先住権があるのに不当に漁が禁止されているとして、漁を規制する国と道を相手取り、権利の確認を求めて提訴した(8月17日付・NHKニュースWeb版)。

   かつて、アイヌにとってサケは重要な食料であると同時にアイヌ語でカムイチェプ=「神の魚」と呼ばれるほど特別な存在とされていた。しかし、明治以降は政府により資源保護の観点からサケの遡上する主要河川での捕獲が制限され、漁業権を持つ者以外は捕獲から排除されてきた。現在ではアイヌの文化的伝承や儀式に限り、道知事の許可を得て例外的にサケ漁が認められている。

   今回テーマになっている「先住権」は、先住民族が伝統的に持っていた土地、資源に対する権利や政治的な自決権を指し、2007年に採択された国連の先住民族権利宣言に明記された。これに従って、国は、昨年5月施行のアイヌ施策推進法でアイヌ民族を先住民族と初めて明示したが、先住権には触れていない(8月18日付・北海道新聞Web版)。今回の訴えでは、その先住権として、道東にある十勝川の河口4㌔の範囲で、サケの刺し網漁を認めてほしいとの訴えだ。裁判で争われるのは、先住権としての漁業を認めるか、だ。

   北海道では「秋鮭」などで親しまれるサケを、海に仕掛けた大型の定置網で漁獲している。訴えたメンバーはこの川の周辺で生活していたアイヌの子孫たちた。十勝川での刺し網漁を復活させ、アイヌの独自のサケの食文化をブランド品として売り出すという構想を持ってのことだろうと想像する。とすれば、北海道のサケのブランド価値を高めるためにも、このアイヌの先住権を認めるべきではないだろうか。国も道も前向きに考えてほしい。

(※写真は、初サケを迎えるアイヌの儀式=アイヌ民族博物館公式ホームページより)

⇒18日(火)朝・金沢の天気     はれ

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☆無常なるかなGDP「マイナス27.8%」の衝撃

2020年08月17日 | ⇒ニュース走査

    能登へマイカーで盆帰省したが、道路は例年のこの時季に比べはさほどの渋滞ではなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で帰省を見合わせた人も多くいたのではと推測する。もう一つの要因は、例年ならば列を連ねるように見かける観光バスをほとんど見かけなかった。能登は夏場の観光需要は高いが、ことしはかなり落ち込んでいるのではないだろうか。

   さきほど午前9時、内閣府はGDPの速報値(4-6月)を発表した。物価変動の影響を除く実質で前期比マイナス7.8%、このペースが1年間続くと想定した年率換算ではマイナス27.8%減だ。リーマンショック後の2009年の1-3月のGDPはマイナス17.8%だったので、それを大幅に超えたことになる。

   すでに民間のシンクタンクは4-6月期の実質GDPは前期比年率換算でマイナス27.9%と算定し、リーマンショック後を超えて最大の落ち込みになるだろうと予測していた(7月31日付・日本総合研究所公式ホームページ)。これで、3四半期連続のマイナス成長となる。昨年10月の消費税増税からマイナス成長が続き、それにコロナ禍が追い打ちをかけたかっこうだ。

   リーマンショックどころではない、世界恐慌の様相を呈してきたのではないだろうか。ことし4月から6月までのGDPの伸び率は、アメリカが年率換算でマイナス32.9%となるなど、世界で歴史的な落ち込みとなっている。まさに、「コロナ恐慌」の前兆だ。

   この数字は冒頭で述べたような実感として伝わる。民間シンクタンクは、大幅なマイナス成長の要因について、政府の緊急事態宣言や自治体の休業要請の下、外食や旅行を中心に個人消費が大幅に落ち込んだことや、自動車の輸出が減少したことなどを挙げている。

   では、第2四半期(7-9月)の展望はどうか。先の日本総研は以下予想している。コロナ禍による内外の活動制限緩和を受けて持ち直しに転じるものの、V字回復は期待薄。7月入り後の感染再拡大を受けて、国内の小売・娯楽施設への人出の回復が頭打ちとなるなど、消費の回復力は脆弱。入国制限の緩和は当面、一部の国からのビジネス目的に限られるとみられるなか、インバウンドも実質ゼロの状況が続く見通し。さらに、進捗ベースで計上される住宅や建設などは、今後一段と悪化する見込み。

   先行きが暗い。パンデミックの経済リスクが数字として顕在化してきた。ふと庭先を眺めるとムクゲの花が夏の日差しに映えて活き活きとしている=写真=。花は毎年変わらず咲くが、人の世は変わってしまう。先人たちはこれを「無常」と称した。「祇園精舎の鐘の音、諸行無常の響きあり」(平家物語)

⇒17日(月)午前・金沢の天気    はれ時々くもり

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★CMガタ落ちテレビ業界、同時配信のチャンス

2020年08月16日 | ⇒メディア時評

   新型コロナウイルスの感染拡大でさまざまな産業に影響が及んでいる。最近、テレビを視聴していても、自社の番組宣伝や通販のCMが多い。4月7日に東京など7都府県で緊急事態宣言が発令されたころは、「ACジャパン(公共広告機構)」が目立った。公共広告はスポンサーの都合でCMを降りた場合に使われるが、番宣や通販CMが目立つということはCM枠そのものがガラガラになっている、ということでもある。では、CM収入がどの程度落ち込んでいるのか、日本テレビホールディングスがホームページで掲載している今年度の有価証券報告書(第1四半期、4‐6月)と決算説明資料をチェックしてみた。

   まず、視聴率である。日本テレビは独自に「男女13-49歳」の個人視聴率を「コアターゲット」として設定して他社と比較した数字を出している。そのコアターゲット視聴率(関東地区、ビデオリサーチ調べ)は「4月クール」(2020年3月30日-6月28日)の調査で、全日(6-24時)が4.7%、プライム(19-23時)7.7%、ゴールデン(19-22時)8.0%と2位以下を大きく離して「3冠」となっている。3冠は2013年7月期から28クール連続。視聴率そのものも、「ステイホーム」など在宅率と連動して伸びている。では、CMはどうなのか。

   テレビ局の放送収入(CM)には2つの枠がある。番組に提供する「タイム」枠と、番組と番組の間で流す「スポット」枠である。第1四半期(4‐6月)の日本テレビの放送収入はタイムが290憶円、スポットが196憶円と、前年同期比でそれぞれマイナス1.1%、同36.6%となっている。とくにスポットの落ち込みが大きい。さらに、スポットを月別で見ると、4月が前年同月比でマイナス24.7%、5月が同40.2%、6月が47.5%と相当な落ち込みだ。民放キーをリードしている日本テレビがこの落ち込みである。

   とはいえ、放送収入の主力であるタイムがマイナス1.1%なのだから、そう案じることもないのではと考えてしまうのだが、むしろ、問題はこれからかもしれない。タイム枠はほとんどが半年契約である。4月に契約したスポンサーが、10月以降も継続するかどうか。提供を降りるスポンサーが、スポット並みに続出するかもしれない。

   放送収入の減少傾向は、コロナ禍とは別次元でも危惧されている。電通がまとめた「2019年 日本の広告費」によると、広告費は6兆9381億円で8年連続のプラス成長だった。中でも、インターネット広告費が初めて2兆円超え、テレビ広告費を上回りトップの座に躍り出た。テレビ広告費(1兆8612億円)は対前年比97.3%と減少した。テレビ広告費の減少要因は、この年の台風などの自然災害や、消費税増税に伴う出稿控えやアメリカと中国の貿易摩擦の経済的影響などで3年連続の減少だった。ことしはコロナ禍が拍車をかけ、線状降水帯など自然災害、さらに米中の対立が貿易にとどまらず安全保障にまで拡大する気配を見せている。第2四半期(7-9月)の決算が気になる。

   テレビ業界も生き残り戦略に特化していくだろう。先に述べた、日本テレビの「男女13-49歳」の個人視聴率を「コアターゲット」とする戦略はその代表ではないだろうか。従来の世帯視聴率は不特定多数の量的な数字だ。ではなく、個人視聴率を用いて若い層や就業・就学者にどれだけ番組のニーズがあるのかを調査しなければ、クライアント(スポンサー)の満足度を最大化することはできない。視聴率にも質的な転換が求められている。

   と同時に、デジタル化への戦略だろう。番組のネット配信を進めなければ、さらなる番組の価値を生み出すことはできない。日本テレビ社長の定例会見(7月27日)の内容がHPで掲載されていて、同時配信について述べている。「今年10月から12月にトライアルを実施する方向で作業を進めている。私どもが考える意義は、視聴環境が大きく変化する中、テレビを持っていない、あるいはテレビを見る機会が少ないデジタルデバイスのユーザーの皆さんに対して、地上波のコンテンツとの接触機会をとにかく促進する、ということ。プライムタイムの番組で、特に権利者の許諾等々、ネットワークのコンディションにかなうものを配信する予定」

   アフターコロナではテレビ業界も大打撃を受けての再出発となるだろう。放送と通信の同時配信のチャンスではないだろうか。そして、これまでの視聴率を取ればなんとかなるという発想ではおそらく生き残れない。テレビ業界そのものが「ポツンと一軒家」化してしまうかもしれない。

⇒16日(日)午後・金沢の天気     はれ

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☆ 「多死社会」と「一村一墓」

2020年08月14日 | ⇒ドキュメント回廊

   少子高齢化の日本は、死亡数が増加し人口減少が加速する、いわゆる「多死社会」ともいわれる。2019年に日本で亡くなった人の数は137万人、ちなみに出生数は86万人だ(厚生労働省令和元年人口動態統計の年間推計)。旧盆の墓参りに出かける予定だが、最近思うことは故人の弔い方や墓参りのあり方が大きな曲がり角に来ている、ということだ。 

   お盆にもかかわらず、草が伸び放題の荒れた墓を金沢でもよく目にする。何らかの事情で家族や親族が墓参りに来ていない無縁墓なのだろう。最近は、墓を造らず納骨もしないという人も増えている。樹木葬や遺灰を海にまく、あるいは、葬儀もせず遺体を火葬して送る「直葬(ちょくそう)」という言葉も最近聞く。葬式や墓造りには当然ながら多額の費用がかかる。墓を造ると墓守りもしなければならない。死後になぜこれほど経費をかけるのか、むしろ残された家族のために使うべきだという発想が現役世代には広がっているのではないだろうか。確かに、生前に本人の遺志があったとしても、死後にはすべて昇華してしまうのだ。

   そこで最近よく聞くのが、共同墓だ。以前、東京に住む友人から共同墓の権利を購入したとのメールをもらった。費用が安く、供養してもらえるようだ。ただ、遺骨は永久供養ではなく33回忌で、他の遺骨と一緒に合祀されるとのこと。「家族に迷惑がかからない分、すっきりしていい」と本人は納得していた。共同墓がこれからのトレンドではないだろうか。

   以下は参考事例だ。能登で「一村一墓(いっそんいちぼ)」という言葉を聞いて、その地を訪れたことがある。珠洲市三崎町の大屋地区だ。江戸時代に人口が急減した時代があった。日本史で有名な「天保の飢饉」。能登も例外ではなく、食い扶持(ぶち)を探して、若者が大量に離村し人口が著しく減少した。村のまとめ役が「この集落はもはやこれまで」と一村一墓、つまり集落の墓をすべて集め一つにした。そして、ムラの最後の一人が墓参りをすることで村じまいとした。しかし、集落は残った。江戸時代に造られた共同墓と共同納骨堂=写真=は今もあり、一村一墓は地域の絆(きずな)として今も続いている。

   現実問題として一村一墓は今の時代こそ必要になのかもしれない。多死社会にあって、都会にいる子孫たちはわざわざ墓参にくるだろうか。縁が薄れていく墓はさらに増えるだろう。むしろ、共同墓にして、誰かが供養に来てもらえばそれでよい。町内会で一墓、もうそんな時代ではないだろうか。

⇒14日(金)朝・金沢の天気    はれ

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★「香港のジャンヌダルク」が発する言葉の矜持

2020年08月13日 | ⇒ニュース走査

   香港国家安全維持法の違反容疑で逮捕され、12日未明に保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏の様子がニュース番組で流れていた。周氏は保釈後、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞が頭の中に浮かんでいたという。日本語もさることながら、サブカルチャー通であることにも舌を巻いた。

   欅坂46のこの曲『不協和音』は正直知らなかった。ネットで検索すると秋元康が作詞して2017年4月にリリ-スされたとある。「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」などの歌詞が民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろうか。2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、今回含めて4回目の逮捕だ。拘置所で過ごす孤独な夜にこの歌を心で口ずさんでいたのかもしれない。

   周氏は保釈からほぼ1日たって「ユーチューブ」で動画を配信している=写真・上=。「釋放後Live!憶述警察爆門拘捕過程」とのタイトルで今回の逮捕について述べ、この中で3分間ほど日本語で語りかけている。「心の準備ができていないまま逮捕され本当に不安で怖かった。国家安全維持法では起訴後の保釈は認められていないため、このまま収監されてしまうのではないかと怖かった」「2台のパソコンと3台のスマホが没収された」と当時の状況を述べている。今後起訴されるかどうか現時点ではわからないとしたうえで、最後に「日本の皆さんも引き続き香港のことに注目してほしい」と呼びかけている。

   きょう午後1時現在で動画は26万回再生されている。それにしても、サブカルチャーを通して独学で日本語が話せるようになったとは言え、政治用語を駆使してこれだけ淡々と語るとは、語学の努力家だと察する。おそらく、日本のメディアとやり取りの中で自らの思想や考えなどを伝えたい、知ってほしいという懸命さが日本語に磨きをかけたのだろうのだろう。

   彼女の日本人向けのTwitterをチェックすると、緊縛した状態でのメッセージの発信がある。Twitter(5月27日付)=写真・下=では「今日は国歌法と国家安全法に反対するデモがあります。香港市民は平和にデモをやってるのに、警察が突然走りながらペッパーボール弾を乱射しています。市民は逃げ惑い、現場は混乱した状況になっています。」と生々しい動画も掲載している。言葉を発しながらの戦いだ。

    彼女の言葉には矜持を感じる。中国政府に対する葛藤、23歳にして香港という自らの居場所を死守するために戦い続ける勇ましさだ。「I am not afraid… I was born to do this.(私はまったく怖くない、私はこれをするために生まれてきたのだから)」。あのジャンヌ・ダルクの言葉を思い起こす。

⇒13日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ

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☆ビジョンなき駆け引き、政治は「お花畑」か

2020年08月12日 | ⇒メディア時評

   今月10日のブログで取り上げた読売新聞の世論調査(8月7-9日調査)でもう一つ気になるのが政党支持率だ。自民33%(前回32%)、立憲民主5%(同5%)、国民民主1%(同1%)、公明2%(同4%)、共産3%(同2%)、日本維新3%(同4%)となっている。いまこの立憲民主と国民民主の合流の流れが時折ニュースとなっている。   

   国民民主の玉木代表は11日、記者会見し「合流すべきだという人と、合流すべきでないという人がいたので、分党するしかないという結論に至った」と述べ、党をわける「分党」を行い、みずからは合流には参加しない意向を示した(8月12日付・NHKニュースWeb版)。立憲民主党からは、「無理に一緒になっても、混乱のもとになるだけで、一番いい結果だ」と歓迎する声が出ている(同)。

   首をかしげる、「これは政治のニュースだろうか」と。確かに衆院解散と総選挙はもうそろそろと読めば、野党の合流は与党との対決姿勢を鮮明にすることで、有権者の支持獲得の流れをつくることにもなる。それには、次なる時代を感じさせるビジョンとリーダーシップを執る「顔」が必要だろう。ところが、このニュースで知る限りでビジョンも顔も見えない。

   そもそも国民民主の「分党」って何だ。立憲民主と合流することに「好き」「嫌い」があり、それを基準に分党して、好きな人はどうぞ立憲民主へ、嫌いな人は国民民主に残るとうスタンスなのか。そうではないだろう。政治家一人ひとりが自らの立場を表明し、合流に参加する議員としない議員が徹底的に公開討論会をやるべきだろう。そこで合流する理由とできない理由がはっきりすれば、有権者は納得する。このままでは、「好き」「嫌い」で政治の流れがつくられているとしか思えない。まるで、お花畑の政治のようだ。

   立憲民主と国民民主がいまの政治の流れを変えたいのであれば、香港で国家安全維持法に違反したとして民主活動家や新聞創業者らが逮捕、その後に保釈された事件に対して、「香港の民主主義を守れ。政治弾圧を許すな」とその立場を表明すべきだろう。いまの日本に蔓延する政治的な空気は、「香港で起きている事態を黙って見過ごすことが、隣国でもある民主主義国家の有り様なのだろうか」という、ある種の苛立ちや閉塞感ではないだろうか。

   支持率33%の自民でできないことを本筋でやる、それが次の政権に期待感を抱かせる野党の有り様ではないだろうか。今回の香港での逮捕事件をめぐっては、アメリカなど欧米各国の政治家がSNS上で中国政府を強く非難する声を上げている。枝野も玉木も党首としてこの事件に徹底して関わる姿勢を見せれば、政治家としての株は上がる。

(※写真は、香港の民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏の逮捕を伝える12日付・CNNニュースWeb版。家族と国を救うために戦った伝説の中国のヒロインが登場するディズニー映画『Mulan(ムーラン)』と重なり、最近彼女はそう呼ばれている)

⇒12日(水)夜・金沢の天気    あめ

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★「マスクを外す」猛暑日の新ニューノーマル

2020年08月11日 | ⇒トピック往来

   きのう石川県内は強烈な暑さに見舞われた。最高気温が小松市で38.3度、金沢市で36.6度、七尾市で36.1度と加賀・金沢・能登、県全体が「猛暑日」となり、隣県の富山や岐阜でも38度を記録した(8月10日付・NHKニュースWeb版)。きのう午後、所用でマスクをして繁華街を歩いたが、息苦しさからマスクを外さざるをえなかった。新型コロナウイルス感染もさることながら、熱中症も怖くなった。

   コロナ感染も猛威をふるっている。石川県で10日、新たに12人の感染が確認されたとローカルニュースが伝えている。3日連続で二桁の感染者数だ。感染者はこれまで376人に上り、亡くなった方も28人になる。石川や日本だけでなく、世界でウイルス感染が拡大傾向にあり、ジョンズ・ホプキンズ大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)をチェックすると、世界全体で感染者1980万人と2千万人に迫り、死亡者は73万人に。

   これに追い打ちをかけているのが世界的な猛暑ではないだろうか。世界の人口の約30%が死者を伴うような猛暑に年間20日以上さらされており、温室効果ガスの排出量を削減できなければ、こうした猛暑のリスクが大きく高まるという研究報告もある(Nature Climate Change公式ホームページ)。コロナ感染に猛暑が加わり、人類は大きな危機に直面しているのではないかと考え込んでしまう。

   これまでのコロナ感染予防のための「新しい生活様式(ニューノーマル)に熱中症予防が加わって、さらなるライフスタイルが求められている。厚生労働省と環境省が最近つくったポスターは「マスクをはずしましょう」だ=写真・上=。マスクを着けたままだと、自らがはいた熱い息を吸うことで、熱中症のリスクが高まる、というのだ。そこで、人と人の間で2㍍以上の十分な距離がとれるのであれば、「マスクをはずしましょう」となる。さらに、家庭用エアコンは換気の機能がないため、コロナ対策としてこまめに換気をする。これが夏場の「新ニューノーマル」になっている。

   熱中症予防と言えば、最近新しい用語が生まれた。「熱中症警戒アラート」=写真・下=。気象庁と環境省が共同でつくった指標だ。温度のほかに湿度や日射などを入れ込んだデータで、「熱中症警戒アラート」アプリを入れるとスマホなどにアラートが出る。ただ、試行段階なので関東甲信地方が対象地域にとどまっている。

   きょう11日も午後にかけて猛暑日になる所が増えると予想され、気象庁は全国の大半の地域に高温注意情報を出している。関東と山梨県には熱中症警戒アラートがすでに出された(8月11日付・時事通信Web版)。きょうもまた寝苦しい夜となりそうだ。アエコンを27度に設定して寝るとなんとかこの暑さから解放される。そんな日々が続いている。

⇒11日(火)朝・金沢の天気    はれ

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☆読売調査、内閣不支持54%の暗雲

2020年08月10日 | ⇒ニュース走査

           読売新聞社の世論調査(今月7-9日実施)で、安倍内閣の支持率は37%で前回調査(7月3-5日)の39%から下がり、不支持率は54%と前回52%より高くなった。不支持率54%は2012年12月からの第2次安倍内閣では最高となった(8月9日付け・読売新聞)。読売新聞の調査でこの数字だ。安倍内閣の正味期限はすでに切れているのかもしれない。

   読売の調査で不支持が50%を超えたことは2012年12月の第2次安倍内閣発足以降で3度あった。直近では2018年4月調査で53%。森友学園への国有地売却や財務省の文書の改ざんをめぐる問題が沸騰したころだ。2017年7月調査では52%。森友・加計学園問題などでの批判の高まりと、小池都知事が率いる都民ファーストの会の都議選で圧勝で、不支持が前回から11ポイントも跳ね上がった。2015年9月調査で51%。このときは安全保障関連法で世論が揺らいだ時期だった。

   では、今回の不支持の高まりの理由は何なのか。やはり、新型コロナウイルス対策についての無力感だ。ウイルス対策を巡る政府のこれまでの対応を「評価しない」は66%で、前回(7月調査)の48%より上昇、「評価する」は27%で前回45%より大幅に下がった。そして、安倍内閣がコロナ対策の指導力を発揮していると思わない人が78%にも上っている(同)。

   今では店頭でのマスク不足は解消され、自由に購入できるのに、さらに8000万枚、118億円もの布マスクを介護施設などに追加配布するとのニュースが7月下旬に流れて、呆気に取られた。 7月22日から始まった「Go To キャンペーン」の混乱も不支持率の高まりに影響しているのだろう。

   ただ、今回の読売調査で内閣支持は前回から2ポイント下がったとは言え、37%ある。さらに、今回の調査で「同じ人が長く首相を続けることは、日本にとって、プラスの面が大きいと思いますか、マイナスの面が大きいと思いますか、それとも、プラスとマイナスの面が同じくらいだと思いますか」がある。最も多かった回答が「プラスとマイナスの面が同じくらい」で42%だ。長期政権は必ずしもマイナスではないというイメージを持っている人が多い。政党支持率は「自民党」33%、「立憲民主党」5%、「支持する政党はない」46%と前回とほぼ同じだ。

   安倍政権は不支持が57%もあるものの、政権から引きずり降ろすべきだとの強いメッセージをこの世論調査からは読み取れない。どちらかというと、「安倍さん、これまで頑張ってきたけれど、そろそろ降りるべきですね」くらいのニュアンスか。

   内閣支持率の20%台は政権の「危険水域」、20%以下は「デッドゾーン」とされる。第2次安倍内閣での支持率の最低は2017年7月調査の36%だ。第1次安倍内閣の退陣(2007年9月)の直前の読売の内閣支持率は29%だった。これに比べるとまだまだ余裕だ、と本人は思っているかもしれないが、安倍内閣に暗雲が垂れ込めてきたことは間違いない。

⇒10日(祝)午後・金沢の天気     はれ

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