自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★「香港のジャンヌダルク」が発する言葉の矜持

2020年08月13日 | ⇒ニュース走査

   香港国家安全維持法の違反容疑で逮捕され、12日未明に保釈された民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)氏の様子がニュース番組で流れていた。周氏は保釈後、日本のメディアに対し、香港警察から証拠の提示もなく、パスポートも押収され、「なぜ逮捕されたのか分からない」と流暢な日本語で答えていた。そして、拘束中に「欅坂46」のヒット曲『不協和音』の歌詞が頭の中に浮かんでいたという。日本語もさることながら、サブカルチャー通であることにも舌を巻いた。

   欅坂46のこの曲『不協和音』は正直知らなかった。ネットで検索すると秋元康が作詞して2017年4月にリリ-スされたとある。「絶対沈黙しない」「最後の最後まで抵抗し続ける」などの歌詞が民主活動家としての彼女の心の支えになったのだろうか。2014年のデモ「雨傘運動」に初めて参加してから、今回含めて4回目の逮捕だ。拘置所で過ごす孤独な夜にこの歌を心で口ずさんでいたのかもしれない。

   周氏は保釈からほぼ1日たって「ユーチューブ」で動画を配信している=写真・上=。「釋放後Live!憶述警察爆門拘捕過程」とのタイトルで今回の逮捕について述べ、この中で3分間ほど日本語で語りかけている。「心の準備ができていないまま逮捕され本当に不安で怖かった。国家安全維持法では起訴後の保釈は認められていないため、このまま収監されてしまうのではないかと怖かった」「2台のパソコンと3台のスマホが没収された」と当時の状況を述べている。今後起訴されるかどうか現時点ではわからないとしたうえで、最後に「日本の皆さんも引き続き香港のことに注目してほしい」と呼びかけている。

   きょう午後1時現在で動画は26万回再生されている。それにしても、サブカルチャーを通して独学で日本語が話せるようになったとは言え、政治用語を駆使してこれだけ淡々と語るとは、語学の努力家だと察する。おそらく、日本のメディアとやり取りの中で自らの思想や考えなどを伝えたい、知ってほしいという懸命さが日本語に磨きをかけたのだろうのだろう。

   彼女の日本人向けのTwitterをチェックすると、緊縛した状態でのメッセージの発信がある。Twitter(5月27日付)=写真・下=では「今日は国歌法と国家安全法に反対するデモがあります。香港市民は平和にデモをやってるのに、警察が突然走りながらペッパーボール弾を乱射しています。市民は逃げ惑い、現場は混乱した状況になっています。」と生々しい動画も掲載している。言葉を発しながらの戦いだ。

    彼女の言葉には矜持を感じる。中国政府に対する葛藤、23歳にして香港という自らの居場所を死守するために戦い続ける勇ましさだ。「I am not afraid… I was born to do this.(私はまったく怖くない、私はこれをするために生まれてきたのだから)」。あのジャンヌ・ダルクの言葉を思い起こす。

⇒13日(木)午後・金沢の天気    くもり時々はれ


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