自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆メディアのツボ-17-

2006年09月25日 | ⇒メディア時評

 9月24日の朝日新聞の1面スクープ記事。「アコム、遅延金利率 違法の疑い」。前回の「メディアのツボ-16-」でテレビと消費者金融(サラ金)のCM問題点について触れたばかりだったので、関心を持って読んだ。

        ゼニのトライアングル

  記事を要約すると、消費者金融「アコム」は地方銀行など10社と提携し、地銀が商品化している消費者ローンで滞納者が発生した場合、アコムが債務保証、つまり借り手の保証人として残金を肩代わりしている。その後、アコムが新たな債権者として借り手に日数に応じて年率17%から26%の遅延損害金を課しているという。アコムの遅延損害金は消費者契約法で認められた利率(14.6%)を上回っており、同法違反の疑いが強いとしている。

  審査や回収のノウハウを持つサラ金と、個人向けの融資を増やしたい地銀がタイアップしたかたち。地銀にしてみれば貸し倒れのリスクが少なくて済み、消費者金融側にとっては手数料収入を得られるというわけだ。アコムの提携先は朝日新聞によれば、北海道、スルガ、十六、広島、青森、西日本シティ、長崎、南都、北陸の9銀行のほか、三菱東京UFJ銀行との合弁会社DCキャッシュワンの10社。北海道と北陸の両銀行は「ほくほくHD」の傘下。

  ちなみに北陸銀行の消費者ローン「クイックマン」をインターネットで調べてみる。借入限度額は1万円から300万円まで。審査によりこの範囲内で銀行が決める。ただし、初めての申し込みは100万円までとなる。専用のローンカードを発行し、北陸銀行やコンビニATMで引き出せる。融資利率は(保証料含む) 極度額100万円未満の場合は18.0%、極度額100万円以上の場合は15.0%となる。担保は不要だが、「アコム㈱の保証を受けていただきます」と明記されている。

  もちろん、銀行が消費者金融の保証をつけることに違法性はない。地銀はサラ金に残金を肩代わりしてもらい、回収さえすれば、後はどうでもよいのである。ただ、この先、どんな回収のされ方をするのか、おそらく銀行は知っていて知らん顔をしている。現実、今回の記事のように消費者契約法違反の疑いがある遅延金利が問題となっている。

  さらに債権者となったサラ金は今度は生命保険会社と提携して、借り手に生命保険をかけ、死亡した場合の「担保」に取ってじわじわと相手を追い立てる。ちなみにアコムなど大手消費者金融5社が借り手の自殺によって、3649件(2005年度)の保険金の支払いを受けた。5社だけで3649人の自殺者が出ているのである。これは社会問題ではないのか。

  サラ金は大手銀行から融資を受け、さらに地銀から「顧客」をもらう。生命保険会社と手を結び、借り手の「命を担保」にして高利の回収に入る。サラ金、銀行、生命保険会社の「ゼニのトライアングル」である。

  今回はメディアとのかかわについては触れなかったが、前回との成り行きで書いた。

 ⇒25日(月)朝・金沢の天気  はれ


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