goo blog サービス終了のお知らせ 

空をみながら

 地球規模、宇宙規模で考える。死角のない視野の獲得。憲法9条を守ろう。平和のための最高の武器だと思う。

空をみながら(41)

2007年11月12日 09時19分39秒 | 思考試行
 「宣告」は、死刑囚を題材として、物語が展開する。異常でありながら、普遍的な問題として読者にせまってくる。泰吉は、この本を入手したのは、もう10年以上も前である。書評か何かで、加賀さんのこの本のことを知っていたのだったが、偶然に、古書店で発見したときは、興奮した。
 上下2巻で、かなり分厚であり、けっこう高い本であるが、安く入手した。そして、少し読みかけたものの、時期があってなかったのか、たちまちのうちに、頓挫して以来そのままとなっていた。
 その後、自分自身の病気のことや、父の死去などがあって、また、朋子の母との新しい生活があって、読もうという気持ちが高まってきた。それは、池波さんの随筆をよみかけたことも影響している。分野が違うが、真面目に仕事をしている作家の共通項を感じたこととが大きいと感じた。
 泰吉は、大江さんの作品のような、実際生活から、遊離したような、別世界をみることもすきだが、やはり、現実を見据えたものの方がより、親しみを持つ。
 しかし、そればかりであると少し不満となる。そうすると、大江さんが恋しくなるという具合なのである。
 「宣告」は寝る前と、朝起きぬけに、寝床で読む。もう下巻の三分の一位まできた。重い、暗いテーマにみえて、なんだか不思議だが、軽さを感じる。古本だから、前の所有者が、作家を紹介しているふるい新聞記事を切り抜いたものを台紙に張ったものが、本に挟まれていた。それに読者の感想、明るい小説だ、という意見、作家がそれを嬉しいといっている、などの文言がみえる。
 本当にそのように泰吉も思った。紛れもなく、素晴らしい仕事であり、意味のある作品であり、力がある作品ではある。
 しかし、作家に完全には同意しないで、自分独自の世界を、自覚させてくれ、表現はできなくても、何かしら、自信を与えてくれるのである。人を圧倒しようとしていないのである。あったかい作品なのだろう。愛を感じる。