デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

踊る地平線

2009-08-31 23:09:18 | 買った本・読んだ本
書名「踊る地平線」(上・下)
著者 谷譲次   出版社 岩波書店(岩波文庫) 出版年 1999年

メリケンジャップもののあの軽やかな文体を何十年ぶりかで読むことになった。読みたいと思ったのは、谷譲次こと長谷川海太郎が、1928年ごろハルビンに行ったということ、そしてシベリア鉄道でロシアに行ったことを知ったからだった。ハルビンと海太郎というテーマは面白いかもしれない。海太郎はのちにここを舞台に伊藤博文暗殺事件を戯曲にしている。暗殺した安重根の心理を描く、この時代としてはかなり大胆な作品である。この「踊る地平線」で海太郎は、ハルビンのことをこう書いている。「過去と未来が奇しく交響する、哈爾浜はいつもたそがれの街だ」と。なかなか粋な文である。のちにここでバイコフと会う、弟の長谷川濬に、この町のことを海太郎は話したのだろうか。シベリア鉄道に乗って、このあと海太郎は、モスクワを訪れている。そして彼はここで、ボリショイ劇場で『三つのオレンジへの恋』(バレエ)、芸術座でザミャーチンの『蚤』、そしてメイエルホリド劇場で『マンダート』を見ているのである。思わずヘエーと唸ってしまった。メイエルホリド演出の舞台を彼が見ているなんて・・・。このあと海太郎はロンドン、パリ、スペイン、イタリア、ポルトガルと妻と共に豪華で贅沢な旅をするのだが、自分にはハルビンとモスクワのことを書いた最初の章の「踊る地平線」以外は、正直言って退屈、メリケンジャップものでは小気味よく読めた、あの横文字まじりの小じゃれた文体が、うさん臭くなってしまった。もともとこのドキュメントというか小説は、中央公論に連載したもので、海太郎は妻と一緒にヨーロッパを一年近く旅したその記録である。ずいぶんと豪勢な旅をしたものである。アメリカを放浪しながら、まさにさまざまな職業につき地を這いずり回りながら生きた谷譲次の目線と、贅沢な旅をする谷譲次の目線の違いは明らかである。何が楽しくてこんな旅を、しかも妻と一緒にしたのだろうと思ってしまう。彼はもっと自由な精神をもった人間だったはずだったと思うのだが。
おそらく谷譲次の文体に大きな影響を受けたはずである長谷川濬は、この紀行文をどう読んだのだろう。気になるところである。



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大阪編1 移動

2009-08-31 11:32:23 | お仕事日誌
今日も朝飯抜き。10時半のバスに乗る。12時すぎに千歳空港着。フライトまで3時間以上ある。会社に電話、あるDVDを探してもらうようにお願い。なんどかやりとりがあったが、発見してもらった。台風の影響で、羽田行きの飛行機が大幅に遅れている。大阪に早く着くために、羽田での乗り継ぎも考えていたのだが、そうしなくて良かったとつくづく思う。15時25分発の関空行きに搭乗。
19時に宿舎に到着。ネットを開設する。今日からやっとネット環境が整う。今日でNGKの公演が終わったラルフにギャラの支払い。ウィスキーを飲みながら、いろいろ話。ただこの男と酒飲んでもちょっともおもしろくない、早々に部屋に引き上げる。なんかやろうと思ったが、結局何もできず。移動疲れかな。

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ルスツ編3 思いがけない千秋楽

2009-08-30 21:55:48 | お仕事日誌
モスクワ帰りの疲れと昨日の飲み疲れか、朝はかなりゆっくり目覚める。それでも張りさんと親分の喝は、しっかりと見る。なにより今日は総選挙の日。間違いなく民主党が政権をとる選挙とはなるのだろうが結果が気になるところ。朝飯を抜く。一回目の公演にサーカス学校の卒業生で、いま札幌で演出を学んでいる高村君が見に来る。公演後舞台裏に案内、おかしかったのは高村君がモスクワのボリショイサーカスで公演していたとき、出演していたマクシーモフファミリーのボーバが、高村君の僕のことを覚えてますかという問いかけに、「ちょっと覚えている」と答えたこと。ボーバらしい答えだよなあ、嘘がつけないし、人のことをいつも思いやるボーバらしい答え。一緒に昼飯を食べ、ルスツの方に紹介する。なんか仕事がくればいいのだが。いよいよルスツでの千秋楽の公演。おふざけもなく、いつものように淡々とそしていつものようにお客さんを夢中に楽しませてくれる。無事千秋楽終了。楽屋裏に行き、いつものように「ザ・カンチャーニエ」の挨拶。そしてすぐに撤収開始。このへんも彼ららしい。プロなんだよ。彼らは。撤収が始まっておよそ1時間半後に終了。
20時から「かかし」で打ち上げ。ここで思いがけない話が、社長が挨拶をしに来るかもしれないという。いままでルスツでサーカスをしてこんなことはなかった。まさかと思ったのだが、本当に21時すぎに社長さんが登場、まずは挨拶。「皆さんがお客さんが少ないときでも一生懸命手を抜かず公演するのを見て感動しました。あなたたちは本当のフロフェショナルです。ここルスツをつくる時、リゾートホテルをつくるということはまったく考えず、ただお客さんの笑顔がみたいと思ってやっていました。みなさんの公演を見て、お客さんの笑顔を見て、自分たちの原点を知ったように思えます。そんなことを教えてくれた皆さんにほんとうにお礼をいいたい」。正直この話を聞いて、自分はめちゃ感動してしまった。これだけ素直な感想を言うトップがいるんだという感動と、トップをこれだけの気持ちにさせた我がメンバーの力、本当に嬉しかった。このあとメンバーが感動していたのは、この社長さんこれで帰るのではなく、メンバーのテーブルにいき、一緒にメンバーと親しく話ながら飲んだこと。いままでいろんな偉いと会ったことはあるが、一緒にテーブルで偉ぶらず対等に酒を飲んでくれた人はなかったと言っていた。自分もこの機会に乗じ、社長の出発点となったクマの調教をどうやったのか聞かせてもらう。まさかこんな風になるとは。22時すぎに一本締めで仲締め。記念写真を撮ってお別れ。これで終わるわけはなく、ワーリャの部屋で二次会。無理やりテレビを見せてもらう。やはり民主の圧勝だった。でもこれだけ極端に勝っていいのかなという気もする。今日はボーバーの誕生日でもある。やはり社長さんが駆けつけてくれたということでみんなのテンションは上がる。最後にみんなにお礼、みんながこれだけ素晴らしい仕事をしてくれたら、今日こうして社長さんとも話すことができた。本当にありがとう。おめえたちは本当にすごい奴だよ。
サーカスを見て泣いたおばあちゃんの話を思い出した。車椅子で見に来たたぶん90歳ぐらいのおばあちゃんが、ルスツサーカスを見て、泣いていた。スタッフさんがどうしたのですと聞いたら、本当に何十年ぶりにサーカスを見たのですよ、まさかまたこうしてサーカスを見れるなんてって涙ぐんだという。正直冥土の土産なんていうことばは失礼かもしれない、でもまぎれもなく、このおばあちゃんはそう思ったから泣いたのではないのだろうか。
もしもルスツでみたこのサーカスが、このおばあちゃんの人生の黄昏を彩ったとしたら・・・
これっていい話じゃないだろうか。

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ルスツ編2 メンバーと再会

2009-08-29 21:52:39 | お仕事日誌
久々に泉川のゴルフコースを走る、途中便意。いつも寄るトイレまで我慢、思ったほど出なかった。やはり風呂で体重を計るといつもより1キロほど多い。しかたないかなあ。
11時の公演を見に行く。メンバーたちと再会。元気そうななのはいいが、自転車のサーシャのお腹がぽっかりと膨らんでいるのにびっくり。何キロ増えたと聞いたら3キロだという。そうかなあ・・・もっと太ったような気がする。公演前スタッフの人と話していたら、やはり今年は例年以上のお客さんが来たようだ、初めての体験だったのだがということで、公演後泣いている人をふたり見かけたという。気になってどうしたんですか、と聞いたら感動してということだったという。ただ自分も何度か胸がつまりそうなことがあったので、気持ちがわからないでもない。でもサーカスで感動して涙を流すお客さんがいたということ、うれしいではないか。道内の夏休みは終わりなのだが、そこそこお客さんも入っている。2回目などはほぼ満杯。ほんとうにお客さんの反応がいい。サーカスが、演じているパフォーマーだけでなく、見ているお客さんと一緒につくりあげるものだということを、見せつけてくれたのがこのルスツのサーカスといえるかもしれない。今日は空中バンブーのオリガの誕生日。恒例のケーキが運ばれる。甘いものは苦手の自分も、ここのケーキだけは楽しみにしている絶品のスイート。フルーツがたくさん入っているものをもらう。美味しかった!
アンドレイから部屋に来るように誘われる。タワーのアトリウムで夕食をとったあと、アンドレイの部屋へ。誕生日を迎えたオリガとイーゴリ、ジェーニャも一緒。感動して泣いた観客がいるという話からはじまり、ルスツのサーカスの話で盛り上がる。やはりパフォーマーたちはここでほんとうに気持ちよく働けたという。お客さんの拍手がここまで気持ちよくパフォーマーたちの胸に届いている、こういう仕事をやって感じる最高の喜びといっていいだろう。
気持ち良く飲めた。


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ルスツ編1 札幌へ

2009-08-28 21:49:00 | お仕事日誌
モスクワからずっと便秘状態が続いている。それゆえ体重も増えている。今日から2週間以上の出張となる。ということで荷物を送っているものの、例によってこれもあれもと詰め込みリックサックは一杯、15キロぐらいになっているのではないか。8時前に家を出て、羽田へ。9時40分搭乗。爆睡、目が覚めたら着陸態勢。あまり天気はよくない、というか雨模様。今日は用事があるため、まっすぐルスツではなく札幌に出る。札幌に出るのは何年ぶりになるのだろう。サハに昨日振っていた問題の返事をルスツに行く前になんとか見れないものかと思ったのだが、携帯でホットメールが読めることに気づく。読めたのはいいのだが、相変わらずイワン君、こちらの質問に答えてくれず、どうでもいいことで熱心に聞いてくる。修羅場に弱いタイプのようだ。しかたないのでセルゲイの携帯に電話、今日中に返事もらわないとつくれないと脅かす。およそ10分後に返事の電話。17時40分札幌発の路線バスで、ルスツへ向かう。帰国してからあまり寝れていない、時差ぼけもあるし、バスとか電車に乗るとすぐに寝ついてしまう。20時前にルスツ着。今日はかかしで、日本酒と刺身。出すものを出さないと、肥るばかりなのだが・・・BS朝日「歌の旅人」という番組で、「青葉城恋歌」がテーマになっていた。高校時代の自分がだぶってくる。それにしても佐藤宗幸という歌手は、仙台に確かに根を下ろした活動をし続けてきたわけで、立派だと思う。歌声喫茶のシーンで、漂流民の会のメンバーの顔も。

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