書名 「孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人―」
著者 高山文彦
出版社 新潮社 出版年 2008年 定価 1600円(税別)
ジョセフィン・ベーカーの評伝「ジャズ・クレオパトラ」(平凡社)を読み、1920年代から30年代にかけてヨーロッパのキャバレーで褐色のダンサー、そして歌姫として活躍ししていたジョセフィン・ベーカーが、世界中から親のない子を引き取り、その中のひとりが日本人だったということを知り、いま彼はどうしているのだろう、それを追いかけたら面白いのではないかと思ったことがあった。ただ思っただけで取材もしなければ、資料を集めることがないままのいつも思いつきではあった。「花火」で北条民雄の生涯を美しく綴った評伝で、おおいに泣かさせてもらった高山文彦が、それをとりあげるというので、すぐに飛びついたのだが、ちょっと期待はずれだった。
高山はパリ、ニューヨーク、モナコと現地にとび、孤児たちに会い、特にアキオと呼ばれた日本人を中心にして現地で取材、インタビューを重ね、ジョセフィン・ベーカーの夢に翻弄された孤児たちの呪われた運命を描く。期待外れだったのは、著者高山の立ち位置がいまひとつ明確でなく、孤児たちの生きざまそのものが、時折挿入される著者の感情によってかすんでしまうことだ。なかなかはっきりと答えてくれないアキオから本音を引き出すために、それに迫る自分の感情も描きこまなければならなかったのかもしれないが、それがあまりにも感傷的なため、時々とまどうことがあった。
ジョセフィン・ベーカーの暴露本を書いてアメリカでレストラン経営を成功させているかつての孤児にしても、アキオにしても、なにか救いようのない話の連続に、ちょっと辛くなってくる。唯一救われるのは話は、アキオが捨てられた川崎のかつてはタバコ屋さんたちが、その時のことをよく覚えていて、アキオが元気でいることを知って喜んでいたというエピソードであった。
満足度 ★★
著者 高山文彦
出版社 新潮社 出版年 2008年 定価 1600円(税別)
ジョセフィン・ベーカーの評伝「ジャズ・クレオパトラ」(平凡社)を読み、1920年代から30年代にかけてヨーロッパのキャバレーで褐色のダンサー、そして歌姫として活躍ししていたジョセフィン・ベーカーが、世界中から親のない子を引き取り、その中のひとりが日本人だったということを知り、いま彼はどうしているのだろう、それを追いかけたら面白いのではないかと思ったことがあった。ただ思っただけで取材もしなければ、資料を集めることがないままのいつも思いつきではあった。「花火」で北条民雄の生涯を美しく綴った評伝で、おおいに泣かさせてもらった高山文彦が、それをとりあげるというので、すぐに飛びついたのだが、ちょっと期待はずれだった。
高山はパリ、ニューヨーク、モナコと現地にとび、孤児たちに会い、特にアキオと呼ばれた日本人を中心にして現地で取材、インタビューを重ね、ジョセフィン・ベーカーの夢に翻弄された孤児たちの呪われた運命を描く。期待外れだったのは、著者高山の立ち位置がいまひとつ明確でなく、孤児たちの生きざまそのものが、時折挿入される著者の感情によってかすんでしまうことだ。なかなかはっきりと答えてくれないアキオから本音を引き出すために、それに迫る自分の感情も描きこまなければならなかったのかもしれないが、それがあまりにも感傷的なため、時々とまどうことがあった。
ジョセフィン・ベーカーの暴露本を書いてアメリカでレストラン経営を成功させているかつての孤児にしても、アキオにしても、なにか救いようのない話の連続に、ちょっと辛くなってくる。唯一救われるのは話は、アキオが捨てられた川崎のかつてはタバコ屋さんたちが、その時のことをよく覚えていて、アキオが元気でいることを知って喜んでいたというエピソードであった。
満足度 ★★