デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ジョーカー

2019-11-22 22:55:18 | twitter
この映画は思わぬヒットとなったようだ。派手な映画ではないのに、長い間ランキング一位になっていた。格差が広がっていく中、ジョーカーが生まれていく社会と明らかに現代はかぶってくるということが大きいと思う。それとジョーカーの目線だけから、その心理が描かれているというその手法に引き込まれてしまったということもあるのかもしれない。いろいろな評があるようだが、私にとっての関心はジョーカーがクラウンだけにしかない。正直それ以外興味はなかった。宣伝クラウンの仕事をしていたジョーカーがきもいと言われ、若い通行人からからかわれひどい目に会うというオープニングからして、すでにジョーカーというこの主人公は道化師の悲しい使命のひとつ、人間という存在の負を背負わされていることになった。この映画を見ての最大の衝撃は、ジョーカーが最初の犯罪を犯したときのあの地下鉄での場面であった。一人勝ちしている会社のひとつ、証券会社の社員が酔っぱらって乗客に絡み、さらにそのあとメイクをしたまま乗っていたジョーカーに絡み、さんざん殴りいたぶる時に、「sending the clown」を口ずさんでいたことである。まさかこの歌がここで使われるとは・・・・
実はこの歌について私は道化師について書いたあるエッセイでこんな風に引用していた。
「『センド・イン・ザ・クラウンズ』という、美しいバラードがある。あるアメリカのクラウン(道化師)がこの歌を聞くといつも涙がでてしようがないといっていたが、確かに静かに胸にせまるものがある曲だ。日本でも二十年以上前に『青春の光と影』をヒットさせたジュディ・コリンズが歌っている。歌詞の内容を考えれば、『ステージにクラウンを出して』という日本訳になるかもしれない。三番まである歌詞の大意はこんな風になるだろうか。
 サーカスでペアを組み、空中アクロバットを演じていたカップルがいた。演技の最中、女性のほうが、誤って手をすべらせ落下する。彼女は、薄れていく意識のなかで、自分の過去や恋人のことをふりかえる。でも大事なことは、ステージに穴をあけないこと。彼女は哀しく誰かによびかける。『クラウンはどこ? 早くクラウンたちを舞台に呼んできて!』
今回「ジョカー」ではこの場面だけでなく、エンドロールのときにもこの歌が流れていることも考えると、やはりこの歌は重要な意味をもっているのかもしれないという気になり、もう一度この歌の歌詞を見てみた。ネットには訳詩を含めていろいろあがっている。まずは原詩。
「sn't it rich?
Are we a pair?
Me here at last on the ground
You in mid-air..
Where are the clowns?

Isn't it bliss?
Don't you approve?
One who keeps tearing around
One who can't move...
Where are the clowns?
Send in the clowns

Just when I'd stopped opening doors
Finally knowing the one that I wanted was yours
Making my entrance again with my usual flair
Sure of my lines...
No one is there

Don't you love farce?
My fault, I fear
I thought that you'd want what I want...
Sorry, my dear!
And where are the clowns
Send in the clowns
Don't bother, they're here

Isn't it rich?
Isn't it queer?
Losing my timing this late in my career
And where are the clowns?
There ought to be clowns...
Well, maybe next year

訳詩もいくつかネットにあがっている。直訳するとこんな感じになるのだろうか。
恵まれてるかしら?
二人は結ばれてる?
私はやっと地上に降りたったのに
あなたはまだ空中にいるわ

道化師はどこに?

祝福されてる?
あなたは受け入れてるかしら?
一人は泣いているのに
もうひとりは動けないまま

道化師はどこに?
道化師をここによこして

とびらを開けるのをやめたとき
私が必要なのはあなただと気づいた
再び扉の前に立ち
強い決意のもとにいつものように扉を開けたら
そこには誰もいない

道化芝居はお好き?
恐れていた私の失敗
私の望むものは、あなたのと違っていたのね
ごめんなさいね、愛する人

でも道化師はどこかしら

道化師をよこして
でも二人とも道化だったのかもしれないわ

恵まれているかしら?
それとも奇妙なことかしら ?
タイミングを逃して、遅れを取った

でも道化師はどこに
道化師がいなければ・・・
たぶん、来年には・・・・」

空中で演技しているうちに落下して、というのはかなりの深読みだったのかもしれない。でもリングリングサーカスで働いていたクラウンが涙が出るほど切なく聞いていたこの歌を、あの証券会社の社員たちはジョーカーをなぶる時に歌い、たぶんジョーカーはこの歌を耳にしてしまったことによって自分が馬鹿にされているように、蹴られいたぶられていることをさらに倍加させて思ったのだろう。だから彼は「お前の歌が下手だから殺す」というようなことを口走り、この男を殺戮することになる。

ジョーカーは幼少の頃に親たちから虐待され、それを逃れるために笑うということ身につけた。笑うこと、しかも周りが薄気味がるしかない病的な笑いをすることでしか、生き延びることができなかった。彼にとって笑いは、人を笑わせることではない、自分を貶めることで自分を守るものだった。だからこそ自分を笑いものにすることを許せなかった。
話は飛躍してしまうが、先日横浜赤レンガ倉庫でやっていた岡部文明の展覧会に展示されていた200点あまりのクラウンの絵画の中で、何点か苦しみをひとりで請け負わされたような暗い表情のクラウンの絵があった。それはチェルノブイリや9・11の事件後のあと、人類の愚かさがもたらした事件に対してどうしたらいいのか、これを受けとめなくてはならない、でもこれから人類はどうしたらいいのかというところで、その人間の原罪のようなものをクラウンに負わせているのではないかと思わせた。
もしたしたらクラウンとしてのジョーカーは、そうした人間の原罪を背負わされた存在だといえるかもしれない。

sending the clownの訳詩でこんなものがネットのなかにあった。どこにも道化師という言葉はないが、もしかしたらこっちの訳の方が、「ジョーカー」の中で使われている意味を反映しているといえるかもしれない。

「ステキでしょ?
一緒になるべき相手でしょ?
やっとこうしてここに来たのに
相手には手が届かない
こんなんじゃ,もう笑うしかないわ

最高じゃない?
そんな風に思うでしょ?
一人は気ままに生きいるのに
もう一人はがんじがらめで,動こうにも動けない・・・
もうジョークでしょ?
こんなんじゃ,もう笑うしかないわ

あちこちドアを開けてみるのを,ちょうど止めた時だった
目指す場所がそこだって,やっと自分で気が付いたから
いつものように意気込んで,その部屋に入って行った
言うセリフもわかってたのに
そこには誰もいなかった

茶番劇(コント)が好きなのね
でも悪いのは自分かも
相手も自分と同じ気持ち,そんな風に思ってたけど
悪かった,許してね
もうジョークでしょ?
こんなんじゃ,もう笑うしかないわ
構わないから笑ってやって
ステキでしょ?
皮肉よね?
この世界も長いのに,タイミングみたいなことを,今更ミスっているなんて
ジョークでしょ?
こんなんじゃ,もう笑うしかないわ・・・
だけどいつかは・・・」




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2019年07月28日のつぶやき

2019-07-29 00:00:00 | twitter



  • RT @fugensha: 搬入完了!
    来週からは南陀楼綾繁さんの毎年恒例企画「地域からの風」が始まります。

    今年は、石巻篇!
    是恒さくら「ありふれたくじら」展+石巻ブックフェアを開催します。

    是恒さんがクジラについてのフィールドワークを重ねて制作された刺繍作品をお迎えして…

    Posted at 10:56 PM



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2019年07月27日のつぶやき

2019-07-28 00:00:00 | twitter



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2019年07月23日のつぶやき

2019-07-24 00:00:00 | twitter



  • RT @kawasusu: 築地〈ふげん社〉での「地域からの風 石巻篇」で8月8日に、〈石巻まちの本棚〉を一緒につくってきた勝邦義さん、石巻出身で雑誌『石巻学』を発行している大島幹雄さんに石巻の現状を話していただきます。石巻に来たことのある人もない人もぜひ!https://t.
    Posted at 07:24 AM



  • https://twitter.com/IZJ00257




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2019年07月20日のつぶやき

2019-07-21 00:00:00 | twitter



  • RT @ISOKO_MOCHIZUKI: 激しく同意。

    #久米宏 さん が #あさイチ で「 #NHK は独立した放送機関になるべき。国家に予算と人事握られ、首根っこ掴まれている。先進国とは言えない。NHKが政府に首根っこ掴まれなくなれば、よほどいい社会になる。政治や社会情勢…

    Posted at 12:35 PM




  • RT @yangyonghi: ソウル郊外の食堂のテレビで日韓関係についてのニュースが流れ、ナムルを和えてた女将が怒り出した。日韓両国の政府に対してではなく、メディアに対して怒ってた。「対立煽るな!政治に引っ張られず国民同士が仲良く出来るように教えろ、バカ!」と声が大きくなり、…
    Posted at 12:34 PM




  • RT @norikorock2019: まだまだ拡散、お願いします!! https://t.co/hVuqUNqDuo
    Posted at 12:33 PM



  • https://twitter.com/IZJ00257




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