
公演名 「ダメじゃん小出の黒く塗れ! vol.14」
会場 横浜にぎわい座のげシャーレ
観覧日 2011年5月26日(木)午後7時開演(終演8時45分)
こんな時代になってしまい、黒い笑いをネタにする小出にとってはどう切り出していくか、難しいところだったと思う。東電や菅政権をいたぶるのは簡単だが、シャレにならないところまで行ってはエンターテイメントにはならない、客は入場料払って見に来ているのであって、集会にきているわけではない。このさじ加減がとても難しかったはずだ。冒頭で今日は全部電気で行きますからねと居直りともみえるフリをしていたが、メリハリの効いたいい構成になっていたし、十分笑える内容になっていた。
今回もトークとネタものを絡ませる構成。トークがやるたびに上達していっている。本人がホームグランドですからと言っていたが、実にリラックスしていて伸び伸びとやっている。お客さんが小出のトークに一緒に入ってきて、相槌をうったり突っ込んできたりと、一体となっている、この雰囲気がやりやすいのだろう。今回のトークの圧巻は、自分の初めてのバイト体験、期日前投票の受付のバイトの話し。まあいろんな人がいるもんだと思うが、それを活写する話術はたいしたもんだと思う。このトークが観客の胸に届くのは、何故バイトをしなくてはいけないかという、震災以後まったく仕事がないという状況を最初に振っているからだ。真情が伝わってくる。
ネタものでは冒頭にいきなりデンコちゃんをもってきたのには、驚かされたが、いい狙いだった。こういう手で来たかという感じなのであるが、最初のネタらしく軽く茶化するその距離感が良かった。
よくやっているおじいちゃんと一緒の駄洒落もののネタも今回は全体のメリハリをつくるうえでとても効果的だった。
東電ものをとりあげるにしても、笑いの世界でどうとりあげるのかという距離感ということで、いろいろ考えさせられた。デンコちゃんのネタにしても、最後の宇宙戦艦ヤマトのパロディーにしても、いまの時代東電を攻撃するのは誰でもできるのだが、笑いの対象にするというところに難しさがあったはずだ。パロディーやアイロニーという笑いの武器をつかって、ネタにしたのは、見事であった。
ホメ過ぎに読めるかもしれないが、時代と笑いということを考える上で、いい視点を提示してくれたのは間違いない。
来月の負け犬が楽しみだ。その時どんな世相になっているのかも含めて・・・