書名「興行の風景 日本芸能史外伝」
著者 山本幸治 出版社 ぴあ 出版年 2025
興行から芸能史を俯瞰するというとても興味深い視点のもとに書かれた本なのだが、途中読んでいてかなりいらいらさせられた。著者の立ち位置がとても中途半端で、いわゆる専門書でもないし、わかりやすく興行の歴史を紹介するという入門書のようなものでもないので、たとえばこのようなことがあった、これについてはこう言われているというような曖昧なまま叙述が展開されていく。誰がいったことなのか、どこに書かれていることなのかはっきりさせないというのは、かなり意識的にやっていることで、それがいらいらの原因となった。内野さんとも親しかったようで、いわゆるコンサートなどをやっていた興行関係者のようだが、その視線から語るというよりは、自分が読んできた芸能に関する研究書から自分の都合のいいところをつまんで概説しようということらしい。これが中途半端な本にしてしまったのかもしれない。
興行の歴史は興行師のことを語らないと、語れないような気がした。そうなると江戸ぐらいにならないとはっきりと興行師のことはわからないので、古代からというのは所詮無理だったのではないだろうか。