デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

アイ・アム・コメディアン

2024-08-24 05:19:59 | 観覧雑記帳
ジャンル  映画
観覧日   2024年8月22日
なぜこの映画をみたいと思ったか、それはこの映画の主人公である村本大輔のことが気になったからではない。名前はいろいろ見ていたが、彼らがやっているヘイトものや原発ものや沖縄を扱ったネタは一度も見たことはなかった。映画のタイトルが気になって見たのだ。このところ澤田さんの「私説コメディアン史」や小林信彦の「日本の喜劇人」などを何度も読むことになり、喜劇人という言葉にかなり敏感になっていたときに、このタイトルを見てみたいと思った。漫才からバラエティに進出してきた人たちは、自分たちのことを芸人、あるいはお笑い芸人とは言ってもコメディアンとは言わないのではないだろうか。伊東四朗のことを最後のコメディアンという書いてあったのを見たことがある。この絶滅危惧種とでも言った方がいいコメディアンと自ら名乗っている芸人がいる、それがこの映画をみるきっかけになった。
テレビから干され、相方と分かれ、ニューヨークでスタンダップコメディアンになろうとするも、コロナでその出鼻をくじかれ、今度はコロナ禍の中でどう生き延びるのかという切実な問題に向き合う村本の姿をじっくりと追っている。その意味ではしっかりとしたドキュメンタリーに仕上がっていた。彼はどんな状況のなかにあっても、辛い状況のなかでも、そこで笑わせること、笑うこと、そこに自分の生きる道を選んだと思っている。間違いなくコメディアンの道を歩いている。その意味で父が亡くなった翌日のライブでその臨終での話をネタにして笑わせようとしている場面は迫ってくるものがあった。その前に父との飲みながら、かみ合わない話を見せられているだけにこの時の村本の演技、そしてその前に舞台にあがるときの「アイアムコメディアン」というつぶやきが、自然なだけに胸に響いた。
このコメディアン、独演会で渋谷公会堂を満杯にするだけの力は確かにあるようだ。それはネタの力なのか、彼自身の銃弾のようなしゃべくりの力にあるのか、まだ判断はできない。この後どんな道を歩いていくのか、めざしたものの頓挫したアメリカでスタンダップコメディアンの道を歩くのか、見ていきたい。
吉本所属のウーマンラシュアワーという漫才のコンビはまだあるようだが、相方は、ちょっとしか見なかったが、絶妙の受けをするなあとちょっと感心した。特にラストの村本の独演会で、あと何分やと袖にいる相方に聞くと、ちょこちょこ出て言って、それをつげる相方のあの間、あれはクラウンの間であった。この映画の中で一番印象に残る場面であった。
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岡部文明サーカス展-魅了され追い求めた50年

2024-07-29 18:15:29 | 観覧雑記帳
ジャンル  美術展
観覧日 2024年7月23日(~8月4日)
会場  埼玉県近代美術館

2020年5月に亡くなった画家岡部文明さんのサーカス愛にあふれ、道化師探求の魂の軌跡がたどれる圧巻の展示会である。ラグビーワールドカップが日本で開催された年、横浜の赤レンガ倉庫で開催された展示会のあと、やはり美術館で展示会をしたいと岡部さんが語っていたことを、奥さんがその思いを叶えたいと何年もかけて実現した。その思いが伝わってくる。そんな大きくない部屋4部屋で、岡部さんがその時々に道化師に託した思い、あるいは道化師とはなんたるかを追い求めた思いを探ることができる。これからご覧になる方は、このコーナーに懸けられている岡部さんのメッセージボードをぜひ読んでもらいたい。道化師を描きたい、そして絵の中で道化師を演じたいという岡部さんの真摯な思いを知ることができるだろう。

廊下にひとつのアクセントのように、小さな作品をたくさん見れるのもよかった。それはスケッチだったり、絵ハガキの原画だったり、見ていてあきない。

そして圧巻は中央の一番大きな部屋に展示されたBokabe劇場。

岡部さんがたどり着いたサーカスの楽園の世界がここにある。岡部さんが絵の中で道化師となり、演じるサーカスの世界にの世界を誘われる、そこはまさに楽園、動物も芸人たちも共に生きる場所であった。一枚一枚の絵に描きこまれたサーカスの世界は、この部屋で共鳴しあい、まさに楽園の世界へと誘われていく。シャガールのサーカスの絵からクレズマーの音楽が聞こえてくるように、サーカスマーチが聞こえてきた。見事な展示であった。
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無用の石

2024-07-22 21:02:43 | 観覧雑記帳
ジャンル 演劇
観覧日 2024年7月21日
会場 代々木八幡神社

桃山亡きあと、本拠地を失いいきなり彷徨うことになった水族館劇場が、選んだひとつ生き方が夏の放浪芝居。今回は秋浜の台本、演出である。代々木八幡のこんもりした境内の空き地が見事はまっていた。灼熱のアスファルトジャングルからちょっと離れただけなのに、ここには静けさと束の間の涼があった。芝居は国貞忠治その後、女房のお徳をめぐって、かつての仲間や公卿も入り込んで、江戸幕府をひっくりかえそうという企みを描く。桃山のようなカオスはないが、旅芝居の雰囲気を濃厚に感じさせる村芝居の世界は出ていた。なによりセリフが役者によって肉体化されていた。DNAなのか桃山の元で役者として学んだことが生かされたのか、役者たちが気持ちよさそうにセリフを言っているのがよかった。
バクーニンをもってきたのはとても面白かった。アナーキズムと秩父困民党を結ぶものをもっと描き込むとよかったかと思う。あれはもっと突っ込んでもらいたかった。
あとで聞いた話ではここの宮司さんは、平岩弓枝の娘さんとのこと、この芝居のもとになっている忠治の話は、長谷川伸の世界とつながる。平岩さんは長谷川伸のお弟子さん、その意味でも関係はあったとのこと。これも聞くところによると、この場所は飛び込みで見つけたとのこと。たいしたもんである、この縁をぜひ繋いでいくべきだろう。
桃山ワールドは、桃山にしかできないこと、それはそれで水族館の血脈として続けていけばいい、例えば桃山が遺した芝居を演じ続けていくという道もあるだろう。それと別に秋浜の色で、いまの団員のやりたいものを模索していくのもとても必要なことになってくると思う。桃山ワールドを学んだ中で、自分たちの血となり、肉となっているものを核にして、自分たちのやりたいものをやっていくこと、それもまた水族館の道ではなかろうか。
旅興行どんどんやるべき,その中できっと本芝居の新たな台本も生まれてくるはずである。
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さくっとパントマイムVol.54

2024-06-23 06:58:48 | 観覧雑記帳
ジャンル   ステージ(パントマイム)
観覧日  2024年6月22日午後3時公演

気になった作品の感想メモ。
「共有生活」(東京キライモニヨン)
女性3人のユニット。はじめてみた。それぞれ3人がちょっとした生活の一部をスケッチしたものを演じたあと、それが同時で演じられるという内容だったかと思う。面白い構成だが、このバラバラのものがつながっていくと面白くなるのでは、アパートの一室三部屋分を断面にして俯瞰するようなイメージなのかもしれないが、それが実はつながっていたという内容に進化させるととても面白い作品になるような気がした。
「怪猫伝2024」(細川紘未)
2024とあるから前にもやっていたものを脚色したものかもしれないが、ヒッチコックの映画、たぶん「泥棒貴族」かな、グレース・ケリーが出ていたものが思い出されてしかたがなかった。終わったあとに、スクリーンに猫のシルエットなんか写っているとよかったかも。
「暗闇マイミスト」(たちざわ~)
目覚めていたら、光がみえない、実は安眠マスクをしていたからだという内容だったが、この暗闇というイメージをマイムでやるという発想からもっと違うものに発展できるのではないかと思ってしまった。
「ビーマイベイビー」(ななな)
寝ているうちに勝手に両手がいろいろな動きをして、からみあいしていく。面白い発想だし、手の動きも見応えがあった。絡み合いしていくうちに争うような感じにしていくのもよかった。寝るまでの動作をもっと簡略化したほうがいいかな、あくびをしたりとか説明的な動作があったが、いきなり寝入る感じにした方がよかったのでは。こういうネタはオチが難しいのだが、そこはかなり考えたようだ。モップのようなものの中にまた違う手のようなものが現れるというオチ。モップの出方が唐突だったような気がする。三本目の手(もしかしたら指)が現れるという発想はいいと思うのだが、もう一息。
「おくりもの」(ななな)
これは好き。単純におくりものを小さな段ボールにいれて、集荷にだすという誰も日常あたりまえにやっていることが、いろいろ困難なことが起きてしまい、最終的にはガムテープだらけになっていた自分が集荷されるというもの。いくつもの見せ場があって、オチも秀抜だった。くすくすも笑えるし、最後のオチでは大笑いできる。段ボールにガムテープを貼るだけなのに、どうしてこんなになるのというあたりは爆笑ものだった。ガムテープの先がなかなかみつからないという場面があったが、あそこを簡単に見つけないで、なにかみつける理由があってもいかかと思った。それよりも、これはよく自分がやることだが、なにかで切る(回りにはなにもないという状況の方がいいので、歯で切るとか)というようなギャグをつくったらいいかと思った。
あれだけガムテープで遊んでいる(本人は苦労しているのだが)のだから、あそこはガムテープだらけになって、身体中にガムテープが巻きついて、伝票もそのうちに自然にからだについてしまい、それで集荷されるとかすれば面白いのではないかと思ってしまった。こういうネタはとても好き。
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ポップサーカス

2024-06-01 16:50:44 | 観覧雑記帳
ジャンル  サーカス
観覧日  2024年5月31日午後1時10分開演
会場     浦賀ドック特設会場

昨年活動を開始したポップサーカスを追って宇都宮で見て以来の観覧となった。
出演者も三分の一ぐらいは代わっていたのでないかと思う。テンポもあり、いい構成で、見応えのある公演だった。
クラウン2人による開演前のグリーティングで思い切り客席を温めたあと、バンジーアクロであっと言わせ、さらにクラウンが実はジャグラーでもあったという演出のオープニングアクトのジャグリングまでのつかみは満点といってもいい素晴らしい演出である。そのあとのエチオピアバンキンも迫力がある。ただ上に載せていくだけでなく、中間にスイング技を入れることで、さらに立体的に見せていく。これでもかと畳みかける見事なアクロバットだった。今回初めて見たのが、日本人アーティストの空中ブランコ。ポップサーカスが始めた研修員制度の一期生とのことだったが、とてもいい演技だった。のびしろがまだまだあるので、いいアクトになるだろう。コロナの間群馬のサーカス学校で練習できたことが大きかったと団側の説明をあとで聞いたが、ここまで時間をかけて育ててきた芸なので、ぜひいいものにしてもらいたい。演技中の表情も良かった。前半のトリはデスホイール、宇都宮で見たアーティストとは違うようだが、ちょっとスリリングさにかけていたように思えた。
後半は宇都宮公演よりテンポもあって、見応えがあった。後半最初のハンドトゥーハンドは、エクアドルから来たアーティストということだが、頭倒立しながらの階段を登り下りは見応えがあった。レベル的にはまだまだだが、構成の中で生きたと思ったのは、中国の一輪車に乗ってお碗を頭に載せていくアクト。エチオピアのバンキングもそうだが、こうしたグループ技がはいるとアクセントになっていい。女性6人がみな可愛らしく、微笑ましさが感じられた。デュオのシフォンもしっとりしたアクトで、魅せてくれた。ポップサーカスは、テンポ良く次々に見せていく演出を常に考えているが、ひとつひとつの芸はきっちりと見せているのがとてもいい。リングマスターがいるのだから、ひとつひとつのアクトを締め、見得を切っている時にリングマスターが出て、見送ったり、あるいは名前をコールしたりするといいのではないかなと思った。リングマスターはポスターの中心にもなっていたので、もっとうまく使えば、さらに雰囲気ができるのではないかと思ったのだが、どうだろうか。
コロナで3年間休業を強いられた中、再出発して約一年、始動しはじめたエンジンが徐々にヒートアップしてきたという感じか。これからまた研修生たちもデビューしていくようだし、今後が楽しみ、そして追い続けてみていきたいサーカスである。
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