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イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(3) この本は韓国で・・・

2010-06-24 22:13:18 | 韓国・朝鮮に関係のある本
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む (予告編)
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(1) 虐殺される8ヵ月前の閔妃と会見。
 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(2) 朝鮮半島のトラ

 ずいぶん間隔があきましたが、このテーマを忘れていたわけではありません。あと数回は続きます。

 前にイザベラ・バード「朝鮮紀行」は、「韓国の人たちに、とくに読んでほしい本です」と書きました。
 その後、韓国でこの本が刊行されているかどうか調べてみました。<조선기행>で検索してもヒットしなかったので、もしかしたら自国に都合の悪い本は出していないのかな?などと少し疑ってかかったりもしましたが、「조선과 그 이웃 나라들(朝鮮とその隣国たち)」という題で2000年に発行されていました。

     

 原題が「Korea and Her Neighbours」なので、コチラの方がむしろ訳としては適切でしょうね。
 ただ、ネット書店<アラディン>のサイト中のレビューによると翻訳がひどいようです。

 なお、「조선과 그 이웃 나라들」で検索すると、読んだ人の感想も見られます。(まだちゃんと読んでないですが・・・。)
 また、韓国ウィキペディアの「조선과 그 이웃나라들」を見ると、説明文は以下の通り。やっぱり韓国からの見方だなー、という感じです。

 19世紀朝鮮の風物、宗教(巫堂・仏教等の伝統宗教はもちろん、聖公会(イギリス国教会)、天主教(カトリック)、改新教(プロテスタント)に対する言及を通して草創期韓国教会に対しても説明している)、妓生の華麗な姿、民謡、庶民生活、宮中のようす(もちろん「教養と学識があって聡明な」明成皇后と、親切で「慈愛に満ちた」品性の高宗皇帝と会った話も含まれている)、女性の低い地位に対する言及もしている。しかし「朝鮮とその隣国」は単純な紀行文ではなく、朝鮮社会に対する知識人としての批判書である。彼女は庶民に対しては彼らの健康さと素朴さをあるがままに描写するほどによく考えていたが、官吏に対しては<吸血鬼>とするほど批判的である。また紀行文の中で、西洋の新式文物で部屋を飾る官吏のぜいたくさと、民衆を悪辣に搾取するひどい貪欲さに対して言及していて、とくに官僚の貪欲さに対してはロシアに移民した朝鮮人1世代が搾取がない新しい世の中で勤勉に暮らしている姿を記して、国の発展を阻む障害物だと批判した。
 清日戦争と東学農民革命に対する言及もあるが、彼女はキム・ゲジュ、全琫準等の東学農民革命指導者たちと清日戦争で荒廃した平壌の惨状に対して記している。また中国の瀋陽旅行で経験したことも記している。しかし日本が朝鮮で影響力を広げていくようすを<改革>であると美化したり、仏教と儒教文化圏で生きてきた朝鮮人たちに対して、宗教がなくてもよく暮らしてきた民族だと評価する西欧キリスト教人としての視角が盛り込まれている点で批判を受けている。


 この本に関して、気になったのはKJCLUBという日韓交流サイト。
 「병합전의 미개인 조선을 여행한 영국인(併合前の未開の朝鮮を旅行した英国人)」というタイトルでこの本を紹介しているのですが、彼女の日朝それぞれの紀行中、日本の良いところと朝鮮のよくないところを対照させて抜粋したり、最初からケンカ売ってるような感じ。
 続くカキコの方はさらにひどいですが、その最後の方に
 [JP]이런 책은, 한글로 번역되어 한국에서 출판되는 거니?(こんな本は、ハングルに翻訳されて韓国で出版されてるの?)
 [JP]발매되어인것 같아요. 눈 가득 개찬되어.(発売されてるようだよ。いっぱい改竄されて。)

・・・・とあります。

 改竄については、ネット上で、
 「韓国延世大学が出版した「Korea and Her Neighbours」では、「当時のソウルは清潔で人々は とても快適かつ豊かに暮らしている」と(実際と)正反対の内容が書かれている」
・・・・という情報が流れていました。(現在も流されている。)
 私ヌルボは半信半疑でいたのですが、最近<NAVER総督府>というユニークなサイトを見たら、実際にその書物にあたって検証した結果「結局、この主張は根も葉もないデマでしかありません。延世大学版に関して言えば、内容に問題は認められません」とのことでした。

 → イザベラ・バード「朝鮮紀行」を読む(4) 断髪令が命取りとなった開化派政権

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25 コメント

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はぁ? (名無し)
2013-03-16 11:18:45
あの国で改竄してないものが出版できるわけがないだろうが。
そこじゃねえよ。もし日本で教育受けて日本語で書くとしたら、まず清日戦争じゃないだろ。二枚舌の在日が。
よく在日に帰れと言うのは差別というが、国の主権は国民にあるのであって、国に帰って生活が成り立つかとか、馴染めるかなどこちらには関係のないことなんだよ。入国拒否同様、行いが悪いのだから自業自得。
仮住居や居候が城の主みたいな顔すんなよ。
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きちんと読み直してくださいね。 (ヌルボ)
2013-03-16 12:07:32
もう一度きちんと読み直してください。

上の記事で「清日戦争」と書いた部分は「韓国の」ウィキの翻訳部分なので「日清」でなく「清日」としたのです。

次に、「あの国で改竄してないものが出版できるわけがないだろう」という事例はあるでしょうが、この場合は明確な根拠を示す必要があると思います。

最後に、私は純然たる日本人ですが、何をもって在日と判断したのでしょうか?

おまけ。私は日本人で、美しい日本語は好きですが、美しくない日本語は好きではありません。
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東学農民革命 (さとポン)
2013-11-18 00:47:16
はじめましてです。

「明治日本の植民地支配――北海道から朝鮮へ (岩波現代全書)井上 勝生」 という本が出ていることを知りました。私はネットであらましを読んだだけで、未読ですが、バードの朝鮮紀行の読み方を変える本だと思っています、もうお読みでしょうか。

「朝鮮紀行」では、日本が朝鮮支配に相応しい国であるか、バードは値踏みしているように思われたました。良くも悪くも大英帝国の人であるなと。だから、引用されている韓国版WIKIの記述は、結構、妥当なものだと感じています。

ついでに言いますと、私は旅行が大好きなのですが、バードの本は、「日本奥地紀行」を含めて、あまり面白いと思ったことがありません。

「朝鮮紀行」がらみの記事を探した末に、こちらにたどり着きました。貧乏ヒマなしなのに、結構、真剣に他の記事も読ませて頂いて、寝不足です。

全然、急ぎませんので、ヒマな時にコメントなど頂きたく。
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Unknown (ヌルボ)
2013-11-18 23:12:40
「明治日本の植民地支配――北海道から朝鮮へ」のことを教えて下さってありがとうございました。私も興味を持ちました。いずれ読んでみようと思います。

「朝鮮紀行」に対する韓国版WIKIについて。本の内容紹介の部分は間違っているとは思いません。ただ、「日本が朝鮮で影響力を広げていくようすを<改革>であると美化したり・・・批判を受けている」とあるのは、当時のイギリス人としてはふつうの見方で、それを今の(とくに韓国の)価値観で批判しても無意味だろう、というのが私の見解です。それは決して植民地主義を肯定することとイコールではありません。
その時代を、当時の朝鮮の支配者や庶民、あるいはバードのような外国人等々、多角的な視点からより正確に把握することが先で、性急な価値判断は抑えてほしいな、というのが率直な感想です。
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Unknown (さとポン)
2013-11-19 01:08:40
早速のコメント有り難うございました。

本題はもちろん、「明治日本の植民地支配」の話なのですが、そもそも、双方、読んでいないので、対話が成り立つはずもなく、追々、双方の都合のよい時にということで、もうひとつ紹介したいのが、山形浩生氏の「朝鮮紀行」のブックレビューです(検索して頂ければすぐ引っかかるかと)。

読んで頂ければ分かるとおり、彼は、自力では更生できない朝鮮民族の惨状を明らかにしたことを、「朝鮮紀行」の最大の価値として論じています。山形氏と私が違うのは、私がバードを、全然、「スーパーおばさん」と思っていないことです。これは追々、理由を述べたいと思いますが、ヌルボさんと山形氏の中では、バードの人となりについては、評価が非常に高いということでは共通しています。私とヌルボさんの間では、おそらく「植民地主義」に対する否定的な考え方は一致していると思われます。で、山形氏と私の間では、この本が「植民地主義」について、肯定的な本であると言うことについては一致しています。

ということで、今日はもう眠いのでオシマイです。
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Unknown (さとポン)
2013-11-20 17:47:59
さて、私の手持ちのネタを最初に出してしまいます。連続投稿になりますが、お許し願いたく。バードに対しては手厳しい話題が続きますが、それなりの背景知識をもって読めば、かなり面白いことは、重々承知していますということで。

まずはバードの旅行者としての観察能力について、こんなサイトがあります。バードが北海道旅行中、イチョウとカツラを間違えたというお話。どのくらい恥ずかしいかと言うと、まあ、白いアメリカザリガニの子供をニホンザリガニと間違える(私のことです)くらい恥ずかしいですね。http://juku.netj.or.jp/kitanokuni/20100416_01.html

バードの知人には、アーネスト・サトウやチェンバレンなど、錚々たる人達がいました。日本に対する知識の相当の部分は、彼らから得ていたと思われます。

もう一つは、バードの日本旅行が朝鮮旅行と決定的に違っていた点についてです。日本での旅行の快適さに最大の賛辞を送る一方で、「朝鮮紀行」では、旅行中の不愉快な出来事についての不平不満が、シツコク通低音として流れていて、ウンザリされられますが、これは、ウィキペディアを参照。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B6%E3%83%99%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%89
日本の安全性について、ご丁寧に四角く誰かが囲ってますが、バードが安全かつ快適に旅行できたのは、当然、サトウやチェンバレンの知己で、英国人であるからです。子供に不愉快な事を言われた時、警官が直ぐに飛んできたと言う出来事など、その象徴的なもので、20年前なら朝鮮での旅行と同様、不愉快極まりないものになったことでしょう。

で、ウィキペディアに簡潔に、バードが訪れた町の印象が記されてますが、正直、なんでこんなに激しく好悪が別れるのか、全く分かりません。私、民俗学者の宮本常一の本でバードを知り、「日本奥地紀行」は学生時代から読んでいましたが、これなら、宮本の本読んだ方が数倍マシであると思ったものです。

次は大英帝国の臣民たるバードについて書きます。
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朝鮮紀行の時代背景 (さとポン)
2013-11-20 19:13:13
すいません、題また忘れました。

さて、日本では大名旅行を楽しんで大衆的名声も得たバードですが(やはり少し悪意がこもりますね)、1894年から1897年まで4度朝鮮を訪れます。

1894年というのはどういう時代であったのか。「朝鮮紀行」の時代背景をおさらいしてみます。これは、安彦良和氏のマンガ、「王道の狗」を読んでもらうのが一番いいのですが、ネットにきちんとまとまったサイトがありました。なんだか「日本奥地紀行」の牧歌的なイメージもあって、時代背景ものんびりしたものように思いがちですが、全然、違いますよね。私自身の復習も兼ねてご紹介します。

http://night-news.moe-nifty.com/blog/2008/05/post_3f3c.html

極東の一大事に、イギリスは日清戦争の後、シャムだのウルグアイだのを回っていたアーネスト・サトウを呼び寄せます。以下は、サトウの簡単な年譜が読めるサイトです。イギリスの本気度が伺えます。

http://www.yushodo.co.jp/press/eastwest/v10/

私のコメントのそもそもの本題である「東学党の乱」の乱の5年後の1889年、イギリスは、世界的な非難を浴びたボーア戦争を起こし、1902年、イギリスと日本は日英同盟を結びます。日英同盟の結びつきというのは、本国はともかく、極東在住のイギリス人にとっては、非常に大きかったと見えて、のんびりと日本の山を歩いていた「日本アルプス」の著者のウェストンは、第一次世界大戦の開戦時には、その熱狂を隠さず、ドイツへの悪罵とともに、日本の協力を熱望する文章を書いています(参考サイトはないです)。

バードが大英帝国の臣民として、その極東政策の推移をどう考えていたのかは分かりません。ただ、大きな流れとして、立憲的な国家が樹立できない限り、朝鮮が消滅したところで仕方がないと考えていたのは間違いない。朝鮮に関しては、サトウやチェンバレンのようなブレーンはいません。バードの朝鮮に対する一般的知識は、商人や宣教師が大半を占める西欧人居留者から得られた知識を総合したものだと思われます。
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朝鮮紀行の評価 (さとポン)
2013-11-20 19:33:14
次は、西欧居留民の朝鮮の考え方の推移を、マッケンジーの「朝鮮の悲劇」をタネに書こうと思ったのですが、ネットに適当な文章も落ちていないし、さすがにこの辺でやめておいた方がいいかなと思い始めました(^_^;)。

実は、「朝鮮紀行」の訳書は押入れのダンボールの中でして、どのダンボールに入ってるのかも、皆目、検討がつかない。昔の印象で内容をクサそうにも、歩いたルートすら分からない。原著(キンドルで確か99円)は購入してあるんですがここらへんで一旦、やめにして、ぽちぽち原著を読んで気になる点を確認してみようと思ってます。

ということで、ご返事まちです。結果的にネタはたくさん振ったので、好きな箇所に適当にコメント頂ければと。では、失礼致します。
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バードの植物関係の記述等 (ヌルボ)
2013-11-23 22:51:08
さとポン様

リンク先の記事は、ウィキペディアを除いて初見のものばかりで、興味深く読みました。

バードが「朝鮮紀行」でいろんな植物名を書いている点は私も印象に残っています。

以前、團伊玖磨が八丈島に滞在中、飛行機から島に下り立った観光客が「なんにもないじゃない!」と落胆の声を上げるのを聞いて、「足下に八丈島にしか咲かない花があるのに気がつかないのか」と慨嘆する文章が「パイプのけむり」に載っていました。

要はどんな姿勢で物事を見たり聞いたりするか、ということ、また正確に観察するための知識をどれほど持ち合わせているかということでしょう。

で、ブラキストンの批判は、批判というよりも専門家として彼女の誤りをただす、といったものではないかと思いました。
それも彼女が書いたからこそ誤りが指摘され、事実が広く知られるので、それは何も書かれないよりはマシというべきか、というと彼女の肩を持ちすぎですか? 
まあ、誤りにも意味がある、ということ。
これは自然観察だけでなく、社会や風俗等についても、基本的に「誤解にも意味がある」ということです。

ケプロンの「バードがそのパークスらの話を検証もせず、鵜呑みにして書いている」という批判もごもっともですが、「蝦夷はシベリアの気候」という誤りが定説化するほどパークスの著書がよく読まれていた(?)ということを物語っている、ということでしょう。

もっと本質的なレベルでの彼女に対する評価については、今読んでいるテッサ・モーリス・スズキ「北朝鮮で考えたこと」(集英社新書)を読み終えた後、「朝鮮紀行」を再読しないと書けそうもないので、しばらくお待ちください。
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ご無沙汰しております (さとポン)
2014-02-15 18:51:18
テッサ・モーリス・スズキって誰やねんというところで、長らくレスが滞っていましたが、最近、図書館に寄って、実際に読む機会がありました。面白そうです。

で、「明治日本の植民地支配」。ようやく読みました。やはり面白いです。この本は、実際に購入して、手元にあるのですが、その姉妹版とも言える「東学農民戦争と日本(高文研)」を、図書館で読んできました。これも面白いです。

フライング気味ですが、バードの「朝鮮紀行」のレビューをアマゾンさんに投稿しています。いろいろ考えた末、このような内容になりました(2/13投稿分)。

興味がありましたら、ご参照下さい。

今後、バードの「朝鮮紀行」は、東学農民戦争との関わりなしに論じられることはなくなるだろうというのが、私の結論です。
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