ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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38度線と軍事境界線について(3) 誰が祖国を分けてしまったの?(続)

2011-01-16 23:48:25 | 韓国・朝鮮関係の知識教養(歴史・地理・社会等)
 38度線と軍事境界線について(2) 誰が祖国を分けてしまったの?の続きです。

 現在、38度線について、日本のウィキでも韓国のウィキでも、先の記事で<一応標準的と考えられる説明>として記したように、「アメリカが線引きをした」という主旨で説明されています。日本の関わりについては何ら記されていません。(もちろんウィキが常に正しいというわけではありませんが・・・。)

 ところが、先の記事で、板門店ツアーのガイドが「38度線による分断は日本の責任」と説明している、と記しました。韓国では奇異ではない解釈のようです。

 <右翼討伐委員会>というサイトの2006年7月13日の記事に、安倍晋三官房長官(当時)の「対北朝鮮先制攻撃論」に対する批判した一文がありました。
 そこで「朝鮮日報」06年7月11日の社説が引用されています。その中に、次のような部分があります。

 日本は韓半島の分断と北朝鮮という国の誕生そのものが、植民支配という日本による罪業の負の遺産であるという事実を忘れたのだろうか。日本がこの地を侵略していなければ、あるいは日本が第2次世界大戦で早期に降伏しさえしていれば、北朝鮮という国は誕生していなかっただろう。
 日本は韓半島の分断と北朝鮮という国の誕生そのものが、植民支配という日本による罪業の負の遺産であるという事実を忘れたのだろうか。日本がこの地を侵略していなければ、あるいは日本が第2次世界大戦で早期に降伏しさえしていれば、北朝鮮という国は誕生していなかっただろう。韓民族にそうした重い罪業を犯した日本だからこそ、たとえ米国が先制攻撃計画を打ち出しても、「それだけは避けなければいけない」と引き留め、代案を示すべきであり、それが人倫に沿った国のあり方ではないだろうか。


 <右翼討伐委員会>は、この社説を「朝鮮日報の良識的社説です」と評価しています。
 さらに「現在、朝鮮半島を分断する38度線は、日本軍の師団間の分担境界線であったのだ。38度線以北は関東軍、以南は朝鮮軍という風に」と、私ヌルボが先の記事で疑問を呈した所説を持ち出しています。

 ヌルボは「良識的社説」とは全然思いません。安倍晋三官房長官の「対北朝鮮先制攻撃論」には断固反対ですが、それは道義的にも政策的・戦略的にも間違っていると考えるからであって、<日本による罪業の負の遺産>とはなんら関係のないことです。

 また<右翼討伐委員会>は「日本が分断されなかったのは終戦の決断時点と米ソの戦局の展開の差による偶然であって、日本の身代わりに朝鮮が犠牲になったといえるのである」等々とも記しています。これは正しいでしょうが、そのような<偶然>の結果(朝鮮の分断)に対して、<偶然>を支配している神になりかわって日本が罪責感を持つのはトンチンカンというものです。

 終戦前後のアメリカやソ連、そして日本も、当然自国のために軍事・外交を展開していたのであって、朝鮮の独立・統一のためでないことはいうまでもありません。そのような中で、朝鮮が統一をなしえなかった責任の所在を外国に求めても「詮無いこと」でしょう。むしろ、朝鮮内部の問題(政治的対立で国論統一ができなかった等)を検証することがもっと重視されるべきだと思います。(「日本人が言うことか!?」という非難は出てきそうですが・・・。)

 今、朝鮮の分断を<偶然>の結果、と記しましたが、この件についてもまた面妖な(?)言説を最近目にしました。その件については次の記事で・・・。

 → 38度線と軍事境界線について(4) 「日本は朝鮮の分断をねらい時期を見計らって降伏した」という説も!