ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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「キネマ旬報」特別号に見る2011年の韓国映画

2012-02-13 23:55:05 | 韓国映画(&その他の映画)
           

 「キネマ旬報」2月下旬決算特別号は、前年の映画のベスト・テン等の発表もさることながら、選考委員各氏の選評がおもしろいですね。
 映画評論家もさまざまで、たとえば「選択対象はメジャーな映画、マイナーな映画、すべての映画のどれか?」、あるいは「娯楽性、芸術性、社会性のどれに重点をおいているか?」という2つのモノサシを用いると9タイプに分類されます。
 さらに個々の評論家独自の持ち味、語り口というものがあって、日頃諸氏の評論をよく読んでいる人なら映画評論家についての評論が書けるのではないでしょうか?

 さて、今回の選評の中から目にとまった文章をメモのような感じでに列挙しておきます。(  )内は私ヌルボの感想です。

○石飛徳樹
 前年作の「告白」「悪人」のような大型の意欲作がなかった。メジャー各社の安易さを厳しく指摘しておきたい。(ヌルボも含め、多くのファンの一般的感想でしょう。)

○金澤誠
 特に上位3作品(①一枚のハガキ②冷たい熱帯魚③大鹿村騒動記)はマーケットに対する目配せよりも、「これが作りたい」という想いが先行したもの。(そうそう、それが力のある映画の必要条件。・・・十分条件ではないとしても。)

○森直人
 実質的に総インディペンデント状態と化した日本映画シーンは、何が起こってもおかしくない。(・・・という彼は③kocorono⑤劇場版 神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴り止まないっ⑧NINIFUNI等を入れてます。)

○山下慧
 半径5mの視線で世界を摑むような、ビデオ表現を自然とした作品が隆盛、私的にはその節目の年となった。魂のベストはみつからない、セカンドが順不同で多く突き刺さる、日本映画全体がそんな状況でもあったように思う。(なるほど・・・。なかなか深い表現だなー。)

○河原畑寧
 この何年か、海外で話題を呼んだ作品の日本でのお目見えが、遅くなっているように思えてしかたがない。(そうだっ! なぜだっ?)

 選考委員の中で、やはり尊敬に値する人だなあ、と再認識したのが佐藤忠男先生。
 理由は、私ヌルボ以上に社会性に重点をおいている点。外国映画では①無言歌②悲しみのミルクと、娯楽はもとより、感動でもない、別の大切な価値に重きをおいていることがうかがわれます。日本映画の方は①一枚のハガキ②ツレがうつになりまして。につづいて③ショージとタカオを選定しています。自らのベスト10に、自分も観た「無言歌」「悲しみのミルク」「ショージとタカオ」も入れなかったヌルボはうつむくばかりです。そしてうれしいのは、佐藤先生が外国映画の方で⑥テザ 慟哭の大地⑩昼間から呑むを入れていること。今回唯一選に入れた韓国映画が「アジョシ」「悪魔を見た」等々ではなくてこの作品とは、勝手ながら同志的連帯感のようなものを感じました。

 社会性重視という点では、高澤瑛一さんもそうですね。やはり①無言歌②明かりを灯す人③再会の食卓ときて④テザ 慟哭の大地。彼のブログを見ると、最近では「哀しき獣」に★4つの評価をつけているのも同意。HPでも社会性・政治性の強い映画を中心に取り上げています。1939年生まれ。この戦後民主化教育の真っただ中で育った世代は概して気骨がありますね。

 西脇英夫氏は①無言歌②バビロンの陽光③テザ 慟哭の大地となっていて、やっぱり政治指向かなと思ったが④ミッション:インポッシブル⑤テイカーズときて⑥アジョシ⑦ビー・デビル。つまりはテンションの高い人のようですね。風貌(!)も、経歴もそのようだし・・・。

 暉峻創三氏はトップに①台北の朝、僕は恋をするをおき、②昼間から呑む⑧ビー・デビル⑨ハウスメイドと3つ韓国映画を入れてます。大阪アジアン映画祭のディレクターならでは・・・。①といい②といい、好感が持てそう。顔つきも前の人とは対照的。(あ、書いちゃった。)

 韓国映画関係についてみると、塩田時敏氏。①ビー・デビル以下、③ハウスメイド⑤生き残るための3つの取引⑦悪魔を見た⑨昼間から呑むと奇数番すべて韓国映画! それどころか「韓国映画だけでも、十分ベスト・テンを選べる」と豪語(?)。
 常識的に考えて、そりゃないでしょ! ・・・と韓国オタクのヌルボでも思います。
 しかし、こういう「常識外」の人もいるのがベスト・テンのおもしろいところかも。選考委員がみんな佐藤忠男先生みたいだったら、ヌルボはグーの音も出ませんからねー。

 私ヌルボの感想としては、2011年日本公開の日本映画は全体的にみて今イチ。2010年の「息もできない」や「冬の小鳥」のような感動作がなかったしなー・・・。個人的には2011年正月に観た「彼とわたしの漂流日記」も2010年公開作だし・・・。

 しかーし。この「キネ旬」掲載の2012年公開予定作品のリストを見ると、今年は期待の韓国映画がメジロ押し! 近々記事にします。(ってちょっと前にも書いたかも・・・。)

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