ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

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2023年上半期に映画館で観た映画50本中のオススメ作品(・・・というよりも自分好みの作品)8本

2023-07-29 14:37:25 | 最近観た映画の感想と、韓国映画情報など
 自分ではふつうの速さで歩いているつもりでもなぜか小学生にも抜かされて行きます。ということに気付くのは高齢者になった証拠。
 同様に、いつも同じように作業をやっているつもりでもなぜか時間が以前よりもずいぶんかかるようになっています。
 ・・・ということで、今年上半期に観た映画の振り返り記事も1ヵ月遅れになってしまいました。
 しかし→同様の記事を書いたのが3年前で、その後2年は書けなかったことを思えば今回書けただけでも「よくがんばったね」と自分をほめてやりたいかも(笑)。
 で、3年前の記事を見てみるとけっこう標準的な作品を挙げているなーと思います。ところが今回は個人的な好みがかなり前面に出てるようで、記事のタイトルもちょっと変えてみました。

《外国映画》

○モリコーネ 映画が恋した音楽家(伊)
  エンニオ・モリコーネといえば思い出すのが1960~70年代頃流行ったマカロニ・ウエスタンの口笛を使ったテーマ曲。ただ私ヌルボはアメリカ西部以外が舞台のウエスタンは邪道だと思い込んでいたので全然観ませんでした。ところがジュゼッペ・トルナトーレ監督によるこのドキュメンタリーを観て、彼が若い頃から取り組んできた音楽の幅も多様だし、彼が生み出した作品も実に多彩だったことを知りました。トルナトーレ監督の名作「‎‎ニュー・シネマ・パラダイス」や「海の上のピアニスト」の音楽もモリコーネだし、一番驚いたのはサッコ=ヴァンゼッティ事件を扱った「死刑台のメロディ」(1970)の主題歌「勝利への讃歌」ジョーン・バエズの自作ではなくモリコーネの曲だったとは!(ご存知なかった方はぜひ聴いてみて下さい。→コチラ。)

○SHE SAID/シー・セッド その名を暴け(米)
  ハリウッドで大きな影響力を持っていた映画PDのハーヴェイ・ワインスタインの長年にわたる性暴力事件をニューヨーク・タイムズ紙の女性記者2人が追いかけて記事の公開へ至るという事実をふまえたドラマ。ハリウッドでのスキャンダラスなテーマをそのままネタにするというのもなかなかのもんだななどとチラッと思った自分が恥ずかしいです。至極まっとうな社会派ドラマでした。

○小さき麦の花(中)
  2011年中国西北地方の農村。主人公ヨウティエはマー[馬]家の四男。貧しい農民で、もう若くはないが独身のまま。両親と長男・次男は他界して三男のヨウトンの家で暮らしているがはっきり言って厄介者。一方、内気で体に障碍があるクイインもまた厄介者扱いされている女性。そんな2人が見合い結婚で夫婦になります。それでも互いを思いやり、作物を育て、日々を重ねていきます。ヨウティエは、家を建てるために泥を固めてたくさんの日干しレンガを造っていきます。(すべて実際の月日の進行に合わせて撮影。) ところがある夜突然の大雨に襲われ、2人は外に出て泥を相手に悪戦苦闘。ところがそんな不運の極致の中で何と2人は相手に泥をかけながら無邪気に笑い合うのです! 名場面という言葉さえ陳腐なシーンに私ヌルボ、ヤン・イクチュン監督の「息もできない」を想起しました。
 それ以外にも感動的な場面がありますが、2人の間の深い夫婦愛を描いた作品であるにも関わらず言葉を通じて直接愛を表現する場面はありません
 本作は中国で都市の若者の間で口コミで評判となり、ヒットを巻き起こして<奇跡の映画>と呼ばれたそうです。ところが→コチラの記事にもあるように、本作は突然上映が打ち切られ、配信サイトからも削除されます。本作についての論評等も消されたとか。貧困撲滅という政府の方針と相容れないため等々の憶測もあるようで、ラストの辺りでは元のプロットが変更されたとの記事も読んだ記憶がありますが今探しても見当たりません。
 ベルリン国際映画祭の星取りでは驚異の4.7点をマークし、金熊賞最有力と絶賛されたものの無冠に終わったとのことですが、これも何かあったのかな ?と勘ぐってしまいます。
 本作についてのとても詳しいオススメの記事はコチラ。(ネタバレ含む。)

○オマージュ(韓)
  1960年代に活動した韓国第1世代の女性映画監督の作品フィルムを復元することになった49歳の女性監督ジワン(イ・ジョンウン)が現在と過去を行き来する時間旅行を描いたファンタスティックな雰囲気の作品です。
 ジワンの息子は「オンマの映画は面白くない」と言います。たしかにジワンの作品はいつも閑古鳥が鳴いてる状態です。夫は飯のことしか言いません。スランプに陥ったジワンはアルバイトとして60年代に活動した韓国で2人目の女性映画監督ホン・ウヌォン[洪恩遠]の作品「女判事」(1962)のフィルムを復元することになります。(※最初の女性監督は「未亡人」パク・ナモク監督。) 消えたフィルムを探してホン監督の最後の行跡を追っていたジワンは帽子をかぶった正体不明の女性の影と共にその時間の中を旅行することになりますが・・・。※この「女判事」という作品は韓国映像資料院のYouTubeチャンネル<한국고전영화 Korean Classic Film>の公開動画(YouTube)で観ることができます。(→コチラ。)
 本作の制作に着手した時はまだ「女判事」のフィルムは発見されていなかったのが、シナリオを作成中に見つかったものの「まだ30分くらいの部分が発見されていないようだ」等、シン・スウォン監督への興味深いインタビュー記事は→コチラまたは→コチラ
 この作品については、「まずは主役が小太りのフツーのおばさんって事に感動しました(笑)」で始まる→Filmarksの猫さんのレビューに「そうそう!」と何度もうなづきながら読みました。その主演のイ・ジョンウン「パラサイト 半地下の家族」の家政婦さんだそうです。猫さん同様私ヌルボも全然気づきませんでした。
 で、念押しですが、本作のキモは約60年前のホン・ウヌォン監督と、本作の主人公ジワンと、本作の監督シン・スウォン監督が逆境にもめげず信念を貫くその意志!といったとこでしょうね。

○聖地には蜘蛛が巣を張る(デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス)
  これは怖い! 物語の舞台はイラン北東部のマシュバド。人口350万人のイラン第2の都市でイスラム教シーア派の聖地で、イラン国内でもイスラム保守強硬派の牙城とされているとのことです。ここで娼婦が殺害される事件が相次ぎます。“スパイダー・キラー”と名乗る犯人は「街を浄化する」という犯行声明を公表しますが、その対象とされる女性も女手一つで子供を育てている等の事情があるのです。犯人の実像はふつうの家庭の主であるふつうの父親。ホラー映画に登場する殺人鬼のイメージの対極にあるような男です。そんな彼が「信念を持って」犯行を繰り返し、結局17人も殺したことが怖い。
 物語は、そのマシュバドに女性ジャーナリストが事件の取材のために来て危険を顧みずに自らおとりとなって(いつもの殺人現場である彼の家までやってくるのですが・・・。
 結局犯人は捕まります。ところが本作の「怖さ」はまだ先があったのです。それは多くの市民が彼を英雄とし、無罪を要求したことです・・・。
 ただ、誤解無きよう。上述のもろもろはイラン社会に深く根付いている家父長制に根差す女性蔑視(ミソジニー)によるところが大きく、宗教や政治が理由というわけでもないとのことです。(アフガニスタンのタリバン等も。)
 しかし、いずれにしても自らの価値観の根幹のアイデンティティが強固すぎる者(or政治勢力)同士が衝突するとすごく厄介だし、日本でも世界でもそんな事例がたくさんあり過ぎる今日この頃ですねー。と、ここで本作の共同製作4ヵ国を見てみて下さい。それぞれイスラム教徒の移民を多く抱え、彼らの排斥を主張する勢力との対立が伝えられているではないですか。入管法が問題化している日本もそれらと相通じているように思われます。相手側もコチラ側も「正義」のために戦っているのです。(あ~あ・・・)

《日本映画》

○飯舘村 べこやの母ちゃん
  かつてはブランド牛の生産地として知られ、酪農も盛んだった福島県相馬郡飯舘村。ところがあの原発事故後すべてが一変しました。線量計の数値が規定を超えると牛たちはそのまま処分場に送られて行きます・・・。その村で牛とともに生きてきた酪農家の3人の母ちゃんたちを10年の歳月をかけて追ったドキュメンタリー。その中には甲状腺がんに罹患して相次いで亡くなったご夫婦も・・・。このような事実は行政側、東電、各メディア等はちゃんと伝えてないように思います。本作は→公式サイトも充実しています。予告編は→コチラ

○Winny
  →コチラの記事でも書いたように、20年ほど前のファイル交換ソフトWinnyの報道に対する自らの鈍感さを反省。新聞等の見出しだけ見て「違法アップロードのモトとなると当然ダメだろ」程度の認識しかなかったようだしなー。本作では最初から「ナイフで人を刺す犯罪があった場合、ナイフを作った」人間を罪に問えますか?」といったわかりやすい説明があってナルホド でしたが・・・。 ストーリーは→予告編参照。そのWinnyの開発者・金子勇さんを東出昌大が好演しています。

○せかいのおきく
  その1、いろいろ控えめなところが私ヌルボに合っている(ホンマか?)。その2、ジツは黒木華のファンである。・・・ということで、用語への違和感(<せかい>はいいとしても<青春>は疑問)は大目に見ます。

 暫定的ですが、上記8作品の中でとくに印象に残った3作品のポスター画像を貼っておきます。
     

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