雪香の星月夜日記

山口雪香の歌がたり、ささやき、ひとりごと

冬鈍(にび)のはざま溢るる天青よ唇寄せて名を告げなまし

2021-12-08 13:18:00 | Weblog

 冬空に。

 今朝、ふと考えた。また恋歌をうたおうと。このブログを開始した当時、架空の恋人を描いて、彼に向かってさまざまな心模様を歌った。
 非現実の私の歌は大抵情緒よりも感性が勝ち、まさに幻想であり夢想だったが、その後、まがりなりにも社会に勤めて家庭を固めると、いくら想像空想と説明しても、周囲への憚りが増し、詩歌の世界を縮めなければ、暮らしにくくなった。

 まもなく私は56歳になる。
 最近愛読する山﨑豊子さんなど、昭和世代の大人なら、還暦間近では、もう姥桜とも呼ばれない。「不毛地帯」や「華麗なる一族」などにでてくる50女は全く老婆だ。山﨑豊子さんは、40代後半の、まだ美しい粋な芸妓をさえ、淡々と「老妓」と書く。

 平成から令和に入り、エイジレスが喧しく、多種多様な美容サプリや、潤沢な栄養のおかげで、女も男も外見の若々しさを維持できるようになったが、それはまた別な話だ。若見えは嬉しいが、それにこだわること自体で、すでに老いに縛られている。
 庶民で56歳の私なら、普通に邪推され、咎められる不倫さえたぶん、遠い世界だろう。毎朝、身だしなみ程度に化粧をするが、鏡を見ればいつしか私は老境へと入っている。
 だからこれからはのびのびと恋歌を歌っても、誤解を招く心配はいらないと思う。

 歌人というのはなかなか窮屈だ。小説家なら恋愛小説をものにしても、それがたちどころに実体験などとは錯覚されないだろう。もっとも、フランスの素敵な女流作家たち、ジョルジュ・サンド、シドニー・コレットやマルグリット・デュラスのような系譜はあるが、そのような世界は本邦には皆無ではなかろうか。万葉集、源氏物語の時代から、日本の男性は若い女を好む。

 年齢を重ねた女としては痛い認識だが、詩の世界では自由な表現に羽ばたけると気づいて、嬉しくなった。

 だから、このささやかなブログの訪問者の方々にあらかじめお伝えして、と。

 雪香の恋歌は、理想の、あらまほしき恋人へ向かって歌うものです。さながら長い恋愛小説の中に、立ち上がる一行の吐露のように。

 


 水彩

 花の系譜ーSR。

 感謝。




 
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