ゴキブリ軍団、最後の聖戦

 
 我が家には数年前、巨大グモ、ベッカムが住まっていた。ゴキブリを捕食するこのアシダカグモのおかげで、我が家にはゴキブリがほとんど出なかった。
 が、やがてベッカムはぽっくり死んでしまい、天敵の消えたゴキブリたちは、群をなして大繁殖し始めた。

 ベッカムが死ぬ直前、アシダカグモの子グモたちを見かけた私は、汚染されたゴキブリを食えば子グモたちも死んでしまうだろう、という情けから、毒餌を設置しなかった。が、この情けは仇となり、子グモたちはどこかにトンズラする一方、ゴキブリどもは猛威を振るってのさばるようになった。
 我慢の限界に来た私は、とうとう、玉ねぎとじゃが芋で手製のホウ酸団子を作って、随所に置いた。この効果は覿面で、ゴキブリは呆気なく壊滅した。怖るべし、毒餌。

 一安心するのも束の間、ゴキブリどもが消えた頃から、キッチンに、わらわらと茶色い虫どもが増え始めた。私は最初、戸外の、枯葉の下にでもいそうな見目醜悪なこいつらを、ゴキブリの仲間とは思わなかった。
 が、こいつらはチャバネゴキブリという、れっきとしたゴキブリ一族だったのだ。ベッカム亡き後のゴキブリ大発生と同じことが、ここでも起こったわけだ。つまり、あのクロゴキブリどもは、節操なく、チャバネどものことも食っていたところが、そのクロがいなくなり、今度はチャバネが猛威を振るい始めたというわけ。

 To be continued...

 画像は、ミレー「家のなかを掃く女」。
  ジャン=フランソワ・ミレー(Jean-Francois Millet, 1814-1875, French)

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