浅草の猫爺さん

 
 私の父はピーマンが嫌いで、「こんなマズいもん、食えへんがな!」というのが本音だった。そのせいで子供までピーマンに偏見を持って、食わず嫌いになってしまわないように、母は父に言って聞かせていた。
「食べなくていいわよ、でも子供の前で、嫌いだって言わないでちょうだい」
 大体、こういうふうな事情だったと私が察していたのは、食卓にピーマンが出るたびに、父がいつも、黙々とピーマンを箸でつまんで皿から除けているのを見ていたからだった。おかげで子供たちは、ピーマン嫌いにならずに済んだ。

 なのに母は、自分が好きではないエビの料理は一切作らなかった。私が給食など以外で初めてエビを食べたのは、最初に名古屋に来たとき、ファミリーレストランかどこかで相棒が食べさせてくれたエビフライだった。
「名古屋以外の人は、名古屋の人が“エビふりゃあ”って呼ぶと思ってんだよ」

 こういうわけだから……
 私は、東京育ちで浅草嫌いの母から、浅草の下町の雰囲気が嫌いだ、と、何度も聞かされて育った。で、浅草と言うと、私はエビフライを連想する。

 この前の東京旅行で浅草に泊まった。上野の美術館に時間いっぱい居座って、そこから浅草までテクテク歩いて、着いたときにはすっかり暗くなっていた。
 それでも、雷門くらいは見てみたいので、浅草寺まで歩いた。仲見世の商店街はもう閉まっていて、浮世絵っぽい、江戸情緒を醸した絵の描いてあるシャッターが下ろしてあった。でっかい提灯の掛かった雷門、でっかい草鞋の掛かった宝蔵門、それに浅草寺本堂と五重塔も、ライトアップされていて、まあ、見に来てよかったな、って感じ。

 けれども夜はやっぱり、情報量が限られている。ので、また上野に来たときに寄って、今度は昼間に歩いてみたい。

 To be continued...

 画像は、浅草寺、夜の雷門。

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