ソブリン債「赤い三日月」せめぎあい 米国の影ここにもありか
『赤い三日月 小説ソブリン債務 上・下』 黒木亮 毎日新聞社
ソブリン債というと、ギリシャをはじめとした欧州/PIIGSの債務の印象があるが...1980年代後半からの赤い三日月、トルコが舞台。
祖国をデフォルトの危機から救った灰色の瞳の女性官僚って、やはり実在の人物がいたんだ。
イスタンブールは、古都コンスタンチノープル。言われてみれば、そうだなあ。
オリエント急行の終着駅だった街など、トルコ観光案内も兼ねている面もあり。
著者の経済本は、7冊くらい全部よんだが...これは、いまいち。公明新聞の連載だったからか。
それでも凡百の書より、優れているだろう。
死体から衣服はぎとる朝鮮人 名簿もやせと...ソ連兵かあ
「蛍の航跡 軍医たちの黙示録」 帚木蓬生 新潮社
1946年の朝鮮。死者の墓を暴き、病死した遺体を掘り返し、衣服を剥ぎ取るほど貧しい朝鮮の人々。
二千人以上の病死者の名簿など書類を...(殺した証拠隠滅のために)全て燃やせと命令する、ソ連兵。
上の句も下の句も、戦争の惨さばかりなりけり。
いちばんに酷いのは、日本軍なんだけれども。大日本帝国軍人は、戦闘じゃなくて飢えと病気で死んでいく。医者は、薬も満足にないままゆえに、とても職責を果たせない...。
実際の手記、それも膨大な記録を基にした小説。
前作「蝿の帝国―軍医たちの黙示録―」に続き、シベリア抑留経験者91歳父のために入手した書籍。
短編15作品の全部を読み終わってからと思ったが、3作目の「名簿」で一首。
以下、書評より抜粋。
>主人公の軍医たちのほとんどは若い。まだ医療の経験のないような医者である。彼らは教科書のような本を頼りに、次々と運ばれてくる傷病兵に向き合う。いや、医者としての職責を全うしている間はまだいい。何の理由も告げられず、敵が潜伏しているかもしれない山中を、ただ行軍するだけの場面も数多い。きちんとした教育を受け、世が世なら数多くの医学的業績を挙げたに違いない貴重な人材は、潜水艦の底で恐怖に震え、ほとんど使い物にならなくなった軍靴を毎日縫合しては歩き続ける。
>「名簿」という一篇。敗戦の日を朝鮮半島で迎えた若い軍医は様々な土地を転々とした挙句、ソ連の収容所に送られる。苛酷な労働ののち、主人公たちは帰国することになるが、「病床日誌や個人の持物」などは、すべてを焼却処分するよう命令される。だが主人公は、死んだ兵たちの名簿を焼却することができない。リュックに隠し、命を賭けて日本に持ち帰る。こうして二千三百名に及ぶ死者の「完全な名簿」が届く……。
余談だが、仮想的ソ連が崩壊してから...北朝鮮バッシングの酷いこと。
連日のミサイル報道には、うんざり。今夜も、喧しいのかしら。
ストーカー...病だなんて欺罔だわ 被害者せめる発想もヘン
牧太郎の大きな声では言えないが…:“警察頼み”の限界 毎日新聞4月10日
新聞に載ったら、大音声だろうが。牧太郎って、声も惚けてるが中身も同じなんだ。
このコラム。警察のこと以前に、ストーカー行為に対する認識が、かなり問題だ。
>ストーカーは“狂犬病”のようなものだ。「病」であれば、巻き込まれない予防・工夫が必要だ。
巻き込まれるほうが悪い、工夫が足りない。ミニスカートを穿いてるから強姦されるんだよという発想と同じじゃん。
>「ヒトを見る力」を持とう! 予防の一歩は、ヘンな相手と付き合わないことである。
ヘンな相手って、この国はヘンな奴を作りづづけているじゃないか。
例えば1985年、作家の三浦朱門が文化庁!長官に就任したさい、「女性を強姦するのは、紳士として恥ずべきことだが、女性を強姦する体力がないのは、男として恥ずべきことである」と雑誌で発言した。
石原慎太郎の性差別発言は怒濤のようにあるが、それでもババア発言の奴が現職の都知事なんだもんね。
こんな風土では、ヘンな奴は増産されてしまうんだよ。
>6割が自ら選んだ「相手」から被害を受けている。
>社会で、家庭で「ヒトを見る力」を教えるのが大事ではあるまいか。
牧太郎専門編集委員こそ、「病」のひとではあるまいか。「ヒトを見る力」って、なんなのよ。
「赤ひげの末裔たち」は蠢めいて 交通事故の裏側を知る
「赤ひげの末裔たち 小説・お医者さま生態図鑑」 伊野上裕伸 文藝春秋
大笑い「インタナショナル」国鉄版 琉球バージョン異郷のさまよ
【同志初音ミク】國鐵廣島の歌【インターナショナル】←侮るなかれ2ちゃんねる
インターナショナル 琉球語版 ← 字幕みないと分からない 字幕をみれば鋭意納得
ヒバクとは...「被爆」と「被曝」違うのね 次の健診拒否しておこう
ずっと健康診断では、放射線被曝を避けてきた。自覚症状もないのに放射線を浴びるのは、納得が行かないから。
もう30年近くになるか。世界的には、「日本人は被爆国なのに、なぜ毎年レントゲン検診するのか」と不思議がられているそうだ。しかし、この国では拒否するわたしが、変人扱いされてしまうけれども。
さすがに55歳になってみると、今回は念のため胸部レントゲン胃レントゲン検査をしてみた。異常ないじゃん。
また当分のあいだ、拒否しておこうっと。
派遣切りされた4人は歩き出す 600キロの熱い旅へと
「明日のマーチ」 石田衣良 新潮社
掲示板にA4のコピー用紙が貼り出されている。「契約解除」の文言の後に、無機質な二桁の数字が並んでいる。工場の派遣は、名前でなく番号で呼ばれているのだ。
仕事が無くなった彼らは寮を出たら、住むところも無くなる。非正規労働者4人は山形県鶴岡から、東京まで歩きだす。
4つの個性が、くっきりと浮かびあがる。中国残留孤児3世など諸々の事柄も絡む。
彼らと同じ年収200万円台のわたし自身も、どきどき旅を続けている気持ちになっていく良書。
獄中で自殺を図るリビーだが シスターフッドぞ「ダブル・ジョパティー」
映画「ダブル・ジョパディー」 徳間文庫 ← ノベライズ版
第一級殺人の罪を着せられ刑務所に入れられたリビーは、毎日泣いて暮らしていた。そして、とうとう自殺未遂にまで追い詰められる。しかし「もう死のうとなんかしない。わたしは戦う...」と、毅然と立ち上がる。78頁
その決断の切っ掛けになったマーガレットは、人を殺して資格剥奪となった弁護士だった。"二重処罰の禁止"(ダブル・ジョパディ)って知ってる? と智慧を授けてくれたのだ。81頁
ああ、ノベライズ小説だと細かい背景も描かれて、感慨深い。
2000年の封切り当時に観た映画は、おぼろにしか覚えてないが...布川事件のサイトに紹介されている。↓
貴重な情報ゆえ、執筆者の快諾を得て転載。22件のリンク資料も、ご参照あれ。
あ の キ ュ ー バ が 石 油 輸 出 国 に !
キューバが石油輸出をするなんて考えもしなかったが実現しそうな気配が濃厚。
「殺しあう家族」 新堂冬樹 徳間書店
九州の家族惨殺事件を基にした、犯罪小説。
支配・非支配の関係が、際どく畫かれている。
ただし、心の美しい人には、とっても頁を括ることが困難な作品。
物語は、だんだん際物の度を増していき、最後のあたりは凄惨きわまりない。心臓の弱い人は、最初から辞めておいたほうが良い。
最後の最後のあたり、麻原彰晃を揶揄しているようで、かんじわるい。
詐病、精神病の詐病なんて...見破られてしまうのではないか、実際の裁判では。
著者のノワール物は、弁護士事務所のクレジット・サラ金業務の参考になるかと...「ヤミ金」系の物語を読んで以来、ほぼ全作に目を通している。あ~ん、趣味悪いって言われそう。
あんまりにも「エロ・グロ」なので...この著者の小説は近寄らないと思っていたのに本書の頁を開くと、引きこまれて一気読みしてしまった。もう、彼のは読まないことにしよう。
あ、純愛物。こっちは黒新藤に対して、白新藤と言うそうだが...そっちは砂糖菓子みたくて白々しいのも懸命に書いている作家が新堂冬樹だ。
(悪口ばかり書いているようだが、拙ブログは一定程度の評価するものでないと俎上に載せない。甘口は、いやなのさ)