「家族不適応殺」って何? むしゃくしゃしたって何?
国家に親代わりを求めた青年。
法廷で無期懲役に万歳三唱。殺人犯なのに刑務所で生存権を主張し続ける小島一朗。なんとも意味不明。
謎を解こうとする三年間のルポルタージュ。
死刑めざして殺人というのは、まれにある。彼は違う。死刑は嫌、有期は嫌だから出たら殺人すると嘯く。めざせ無期懲役、緻密な作戦。殺す人数や、公判での態度とか本当の気持ちを明かさないとか。そして希望通りの無期懲役判決を勝ち取った!?とき、万歳三唱なのだった。
なんせ子どものころからずっと少年院に入りたかった。成人してからは刑務所に入って一生を終えたいと願っていた二二歳。
二回ほど通読してみたけど、わたしの理解を超えている。
念願の刑務所生活で、壮絶なハンガーストライキ。観察室やら保護室に入り、大便を体や壁に塗りたくり、尿を口に含んで刑務官に吹きかけるなどして暴れていたらしい。
そのたびに防護服で盾を持った特別機動隊員が飛んできて、催涙スプレーを吹きかけ実力行使に抑え込む。彼は傷や痣だらけになり、常に全裸で、保護室内は血まみれだったが、さらに自分で嘔吐物をまき散らし、床に溢れた催涙スプレーの液体を全裸に塗りつけて激痛を(以下略)。
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裁判で現れなかった、むしゃくしゃした出来事。長野県の山奥で餓死しようとしていたら、警官の職務質問にあった。最初は友好的だが、誓約書の後は次第に険悪になっていく。荷物を勝手に取って、挑発してくる。その後、役人が警察に通報。警官は、下に敷いていたブルーシートと断熱シートを無理矢理に奪い取る。彼は転倒して出血する。前日のように、どついたりゆさぶったり、引き倒したりするようになった。
「警察すら法律を守る気がないのに、自分だけ守っていてもしかたない」自分の人権は守られないのに、他人の人権を守っていてもしかたない。
そう思って、人を殺してでも刑務所に入ろうと思ったんだと。うわあ。
目的は達成したいけど、皆なに迷惑をかけちゃいけないからと最終の新幹線で殺人をする妙に律義な彼。
情状酌量の可能性を懸念して秘密にしていた、本当の動機。筆者が取材に行かなければ闇に葬られていた事柄。ふうう、溜息。
■「家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯 小島一朗の実像」 インベカオリ★ 角川書店