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チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
+昭和50年代~現在のお話も・・・

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はじめての方は「チエちゃん」のカテゴリからお読みいただくことを推奨しています。 もちろん、どこからお読みいただいてもかまいません。

第125話 富士スピードウェイ

2007年11月28日 | チエちゃん
 夜通し走り続けたコスモは、東の空が白み始める頃、ようやく目的地に到着しました。
初めて訪れた富士スピードウェイは、新鮮な驚きに満ち溢れていました。

 スタンド前のメインストリートは、クルマ自慢の若者たちのパフォーマンス場と化しています。
 派手なオーバーフェンダーを取り付けたメタリックブルーのケンメリ、ショッキングピンクのダルマセリカはいかにも暴走族と思しきリアスポイラー付き、地面スレスレまで車高を下げた改造ローレルは、メタリックヴァイオレット。
オーバーフェンダーとリアスポを装備した真っ赤なフェアレディは、爆音を響かせていました。


 9:00 チエちゃん達もメインスタンドに陣取って、レース観戦です。

「うわぁ~、速い!すごいスピード!」
「どれが一番なの?」
「あれだよ、あの赤と黒のツートン!」

ロータリーエンジンだって・・・」
「俺達の乗ってきたコスモも、ロータリーエンジンだぜ!」

 初めのうちは4人仲良く並んで観戦していたのに、いつの間にか、タロサとナオちゃんは二人だけのラブラブモードになっています。
取り残されてしまったヒロシとチエちゃんは、何を話したらよいのか分からないまま、並んでいました。

 あのう・・・、入院してたって、聞きましたけど・・・

 ああ、あれかぁ!
 ションベンする時、ものすごく痛くってよ、血尿まで出ちまって、そんで入院したんだ
 2・3日経って便所に行ったら、カラカランって音がして、後は何でもなくなった
 あん時、石が出ちまったんだな!

 うわ~、痛そう・・・・・


 五月といえども、標高の高い場所にある富士スピードウェイを渡る風は、まだ冷たく、薄着のチエちゃんの唇は紫色になりつつありました。

 寒いんじゃねぇのか? これ着なよ

そう言うと、ヒロシは着ていた革ジャンを脱いで差し出しました。

 えっ?いいの? ヒロシ君、寒くないの?

 俺は平気だから、着なよ・・・

 ありがとう、じゃあ、お借りします

(ヒロシ君、案外優しい。見た目より、いい人なのかも?)

 レースが終了し、富士スピードウェイを後にしたチエちゃん達は山中湖に立ち寄り、記念写真を撮ることにしました。アヒルボートの前で、
「ヒロシ君とチエちゃんも二人並んで!」
「いいよ、別に・・・」
そう言いながらも、満更でもない様子のヒロシなのでした。 



 この日は1泊し、翌日、日光を経由してタロサの部屋へ無事帰りつき、旅行は終わりました。
それから、ヒロシはチエちゃんをコスモでアパートまで送りました。

 どうも、ありがとう、じゃあ!

チエちゃんが、クルマを降りかけた時、

 あのサ・・・、また、逢ってもらえるかな?

 エッ?! あッ、 はい・・・


 あの時、どうして、チエちゃんは「はい」と答えてしまったのでしょうか?
事の成り行き? ナオちゃんの紹介だから?
いいえ、たぶん、怖いもの見たさ。
これまで、付き合ったことのない人種だから、興味を持ってしまった・・・
チエちゃんは、ちょいワル系に弱かったのです。