第3回目では、チエちゃんたちの制服ファッションについてお話しました。
最終回は、チエちゃんお気に入りの私服ファッションについてお話しましょう。
中学・高校の頃は、一日の大半を制服で過ごすわけですから、私服といっても普段着と1~2着の外出着を持っているだけのチエちゃんでした。
高校1年が終わろうとする頃、クラスメートのユミ子が「これ、すごく可愛いよ。私、こういうファッションがしたいんだ。」
そう言って、ある雑誌を見せてくれました。それが、
『
mc Sister』
中・高校生向けファッション雑誌です。
アイビーなどのトラッドファッション、50年代風ヤンキーファッションが中心の雑誌でした。
「mc」というのは、「MEN'S CLUB」のことで、つまりメンズクラブの妹分という意味らしいです。
この雑誌は、モデルの女の子達の私的ファッションを紹介するというようなコンセプト、今でいうところの読者モデルなどの走りだったような気がしています。(実際のところは編集者が読者をつかむためにそのように企画していたのだと思います)
「う~ん、こんな世界があるんだ」チエちゃんは、またまた、この雑誌にすっかりハマッてしまい、
早速購読を始めました。
それから、突然ファッションに目覚めていったのでした。
チエちゃんのお気に入りモデルさんは、土屋名美さん、早坂アキヨさん、高見恭子さんでした。
彼女たちのようになりたい、彼女達と同じファッションがしたいと思うようになっていきました。
まず、チエちゃんは髪形を変えました。
三つ編みにしていた長い髪を少し切り、モデルの女の子のようなポニーテールにしたのです。
次に、リーガルシューズのローファーシューズ(黒)5,800円也を購入。
貯金していたお小遣いと通学用に履くからという口実でお母さんからちょっと手伝ってもらい、ゲットしました。
それから、洋服欲しさに夏休みと春休みは、せっせとアルバイトに励みました。
今のようにファーストフード店とか、コンビ二とか、気の利いたアルバイトはありません。
村内にあった某有名カメラメーカーの下請け工場で、カメラの絞り部分に黒いゴムをはめ込む仕事をしました。
こうして得たお金で、次々と洋服を買っていきました。
キャメルのフラノ三つ釦ブレザー。胸ポケットには大学生のようなエンブレム付き。(注:2枚目の写真が現物です)
それには、茶色のガンクラブチェック(千鳥格子)のプリーツスカートを合わせ、中にはボタンダウンシャツ、レジメンタルタイか、アスコットタイをしていました。
自分で言うのもなんだけど、バッチリ、決まっていたんですよ。
もう少しラフな感じでは、B.D.シャツに縄編みの生成りベスト、ワンボックスプリーツスカートをコーディネート。
就職する時には、ダークブラウンのグレンチェック三つ揃いスーツも買い求めました。
そして、足もとにはどうしても、mc Sisterの必須アイテム、リーガルの「サドルオックスフォード」(注:冒頭の写真です)を履きたかったチエちゃんは、ますますアルバイトに精を出すことになりました。
当時の値段で、9,800円。
やっと、手に入れた時は、うれしかった。
お母さんにはこんなに高い靴を買って「もったいない」と言われましたが、それから10年は履いたので、決して高い買い物ではなかったと思っています。
そして、30年過ぎた今でもサドルシューズを大切に持っています。
実は、将来、娘が生まれたら譲ろうと思い、仕舞っておいたのですが、女の子には恵まれませんでした。それでも、お気に入りだったので、捨てることができませんでした。
こうして、チエちゃんは青春時代のファッションをアイビーで過ごしたのでした。
その後、世の中では
ニュートラ(ニュートラッド)とか、
ハマトラが流行っていきました。
おわり
注; この記事は、2007年2月7日昭和ダイアリーに掲載されたものを一部編集しました。