チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第39話 バレンタイン・デー

2007年02月13日 | チエちゃん
 チエちゃんがバレンタイン・デーなるものの存在を知ったのは、中学1年の時でした。
 あの頃のバレンタイン・デーはこんなにメジャーではありませんでした。
デパートやスーパーにバレンタインチョコレートの特設売り場はなかったし、お父さんたちも義理チョコをもらうことなどなかったのです。
ましてや、ホワイト・デーなど論外です。
 やっと、少女雑誌や女性誌がバレンタイン・デーを取り上げ、一部の女の子たちの間で、静かなブームが起ころうとしていた頃です。もちろん、本命チョコだけがやり取りされていたのです。

 そして、チエちゃんも、好きな男の子に女の子から思いを伝えられるバレンタイン・デーに敏感に反応したのでした。

その頃、チエちゃんにはお付き合いをしている男の子がいました。

 てるよし君。

同じ中学の3年生。カッコイイというよりはちょいワル系。
ドラえもんのジャイアンタイプの男の子でした。
お付き合いといっても、田舎のこと、日曜日にデートしたりすることはありません。
学校の休み時間におしゃべりするか、帰り道を途中まで一緒に帰るだけの可愛いお付き合いです。

それでも、恋に恋するお年頃のチエちゃんは大満足だったのです。

 チエちゃんは、2週間前からバレンタイン・デーのプレゼントの準備をしました。
ハンカチにてるよし君のイニシャルを刺繍し、市販の板チョコをそのハンカチでラッピング、可愛いリボンを結んで完成です。

 いよいよ、2月14日がやって来ました。
休み時間に渡そうとしたけれど、てるよし君と連絡がつきません。
チエちゃんはびっくりさせようと思い、前日には会おうと約束をしていなかったのです。
じゃあ、放課後まで待とう!

 ところが、この日は大雪が降ったのです。
学校も、午前中だけで打ち切りとなりました。
昇降口でてるよし君を待ち続けたのですが、とうとう会えずに、チョコレートを渡しそびれてしまいました。
きっと、先に帰ってしまったんですね。
 
 翌日にチョコを渡せばよかったものを、チエちゃんは2月14日の魔力に縛られ、15日にはもう渡すことはできないと純粋に考えたのでした。

そして、渡せずじまいのチョコレートを自分で、食べました。
それは、ビターのちょっとほろ苦い味がしました。

そういえば、あのハンカチはどうしたのかなあ。
ずっと、の2番目の引き出しに入れていたのに・・・。