気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

蓮根のうた

2007-05-09 19:05:06 | おいしい歌
レンコンの穴から人生がほどほどに見えてきた笑うしかない
(竹原市 岡元稔元 読売歌壇 5月8日)

父十三回忌の膳に箸もちてわれはくふ蓮根及び蓮根の穴を
(小池光 日々の思い出)

***********************

読売歌壇の小池光選のトップを飾った歌。
たしかに笑うしかない、諧謔に満ちた歌。「ほどほどに」を三句とすると、四句目が五音、結句が七音ということか。不思議な歌である。
小池さんの蓮根の歌も調べたら、ありました。わたしは蓮根の食感が好きだが、あれは穴に土がついているので、よく洗わないといけない。酢蓮根よりは、きんぴらや筑前煮や天ぷらにするのが好きだ。


きのうの朝日歌壇

2007-05-07 23:50:37 | 朝日歌壇
春彼岸正気の時に写したる父の写真を正面に置く
(佐世保市 近藤福代)

空色のスニーカー履く やわらかな草生(くさふ)を駆ける吾子を追うため
(東京都 鶴田伊津)

楤の芽のさみどりさっとてんぷらに揚げれば春の雨の匂いす
(広島県 今井洋子)

************************

きょうは朝刊がなかったので、きのう日曜(朝刊)の朝日歌壇の鑑賞です。
一首目。お彼岸に墓参りをしたときの歌だろう。正気の時に・・・から、亡くなられる前、お父様が正気でない状態だったことがわかる。正気でない状態のときがどのくらい続き、家族にどんな苦労があったかは書いてないが、読者は想像できる。
二首目。一読さわやかな歌。子育てに忙しい時期こそ、母親は自分のために好みの空色のスニーカーを履く気持ちが大切だ。
三首目。おいしそうな歌。春の雨の匂いに具体性がある。天ぷらはいつの間にか、買ってくるものになってしまった。

結社の歌会に出ると「言い過ぎないように」とよく言われる。一番言いたいことは押さえるのが骨法、神は細部に宿る・・・などのキーワードを繰り返し聴く。しかし新聞歌壇はまた判断基準が微妙にちがう。新聞では、わかりやすさが、選ばれる要素になっているように思う。そして「いい歌はどこにあっても、いいんだ」ということもよく言われる。じゃあ、どうしましょうかね~

大皿に天ぷらいつぱい揚げし日は遠くなりけり七時のニュース
(近藤かすみ)

逆らはない

2007-05-04 22:56:10 | つれづれ
ペット・ボトルで爽健美茶の喇叭飲み「逆らはない」のが僕の戦略

美しい詩だと一生を思つてみる藁灰(わらばひ)になつたあとでも麦だ

中食がこのごろはやる。家でとるデパ地下で買つた銀むつ弁当

性愛ニスベテヲ盗(ト)ラレ生キタリトイツテイヘナイコトハナイケド

風呂敷に包み終へたる感傷の来てゐつひとつ会結び来て

(岡井隆 家常茶飯 砂子屋書房)

************************

ゴールデンウィークも八割方終った感じ。昼間は夏が来たかと思うほど暑くなる。また京都は観光客が多くて、繁華街は人でいっぱいだ。

岡井隆の歌集を読みすすむ。Ⅱ章は、妹さんの死が大きな核となっている。兄弟姉妹というのは、おとなになると配偶者との縁の方が強くなるので、どんな暮らしをして何を考えているのか、知っているようで知らないのかもしれない。ひとりっ子のわたしにはいづれにしてもわからない話であるが。
あちこちで岡井さんを中心に開かれていた歌会がいくつか終った。朗読の試みがいくつもなされた。このあたりの事情は栞を読むとわかる。栞の執筆者が多彩だ。お医者様でもあるから、ご自分の体調はよくわかって無理をなさらないのだろう。逆らわないのが戦略らしいから。


家常茶飯 岡井隆歌集

2007-05-03 00:37:39 | つれづれ
読まないで返すことが多い夕ぐれは大きな翼の下に、図書館

文学は娼婦医学は正妻とチェーホフの言葉マジつぽくつて

苦しみもよろこびもふりをするだけだ傘のなだれてゐた霧生駅

葉書とはうたの書かれたわくら葉で日向(ひなた)から来て日かげへ去るの

遠ぞきてわれを見つめる吾の眼が河の対岸を移動してゐる

(岡井隆 家常茶飯 砂子屋書房)

***********************

岡井隆の新しい歌集を読む。思えば、京都精華大学の短歌講座に行き始めたのが、わたしの短歌のはじめの一歩だった。
いまは口語も文語も、流行語も混じって自由自在の歌いぶり。朗読をされることも多いので、聴衆に聞きやすいようにという配慮も働いている。
こころ惹かれる歌は、たくさんあるが、わたし個人の好みでは、霧生駅の歌が好きだ。

話し変わって、きょうは岡崎の勧業館で開催されている古本まつりへ行ってきた。プールの続きだったので、サイフには3000円余りしかなかったが、佐藤佐太郎全集3000円を購入。直前に同じ本が4000円で売られていて、これはお金が足りないや、とあきらめていたら、別のところに3000円であったので、すぐに購入。ほかにも欲しいものを見つけたので、取り置きしてもらっている。開催中にまた取りに行って、何か買ってしまいそう。
古本まつりは、年に3回あって、5月は勧業館、8月は下鴨神社、11月は百万遍の知恩寺と決まっている。今回だけは室内なので、やはり埃っぽい。お客も店員も独特の雰囲気を持った人間が集まっている。ひと言でいえば「オタク」か。


BS短歌スペシャル復習編

2007-05-01 23:33:06 | NHKBS短歌スペシャル
木となりてケイタイ画面見つめいるわが年齢(とし)格好のおとこの孤独
(小高賢)

くすの樹の肌にながるる千年のゆふやみに溶けて聴く青嵐
(日置俊次)

大楠は薄暮インコの木となりて天然色の眠り実らす
(谷岡亜紀)

仰ぎゐてせつなかりけりもののふの由縁(ゆかり)の樟に若葉噴きあぐ
(秋山佐和子)

葱の花咲けば父母思はるる母を遺して死にゆきし父
(河野裕子)

会はぬと決めて会はざる日々にハナミズキ若き名もなき木に替はりたり
(澤村斉美)

********************

先日のNHKBS短歌スペシャルのプロの歌人の歌会の自由詠。
それぞれが前もって用意した自信作なのだろう。
目立つ言葉を使ってもそれが浮かない工夫がなされていたり、あざとくキャッチーな言葉で押してみたり、ああでもない、こうでもないと推敲に推敲を重ねているのがわかる。この日は、神戸市の相楽園という庭園の和室で歌会があったので、木を歌った作品が多かった。ここでは、澤村斉美さんの作品が最高得点だった。

身近なところでは、久保寛容さんのところのとうげ歌会第15回が無事終了。
こちらは、半月に一回のペースで進む。