気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

きのうの朝日歌壇

2007-05-07 23:50:37 | 朝日歌壇
春彼岸正気の時に写したる父の写真を正面に置く
(佐世保市 近藤福代)

空色のスニーカー履く やわらかな草生(くさふ)を駆ける吾子を追うため
(東京都 鶴田伊津)

楤の芽のさみどりさっとてんぷらに揚げれば春の雨の匂いす
(広島県 今井洋子)

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きょうは朝刊がなかったので、きのう日曜(朝刊)の朝日歌壇の鑑賞です。
一首目。お彼岸に墓参りをしたときの歌だろう。正気の時に・・・から、亡くなられる前、お父様が正気でない状態だったことがわかる。正気でない状態のときがどのくらい続き、家族にどんな苦労があったかは書いてないが、読者は想像できる。
二首目。一読さわやかな歌。子育てに忙しい時期こそ、母親は自分のために好みの空色のスニーカーを履く気持ちが大切だ。
三首目。おいしそうな歌。春の雨の匂いに具体性がある。天ぷらはいつの間にか、買ってくるものになってしまった。

結社の歌会に出ると「言い過ぎないように」とよく言われる。一番言いたいことは押さえるのが骨法、神は細部に宿る・・・などのキーワードを繰り返し聴く。しかし新聞歌壇はまた判断基準が微妙にちがう。新聞では、わかりやすさが、選ばれる要素になっているように思う。そして「いい歌はどこにあっても、いいんだ」ということもよく言われる。じゃあ、どうしましょうかね~

大皿に天ぷらいつぱい揚げし日は遠くなりけり七時のニュース
(近藤かすみ)