気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ドームの骨の隙間の空に 谷村はるか 

2009-04-01 00:53:19 | つれづれ
燃え残り原爆ドームと呼ばれるもの残らなかった数多(あまた)を見せる

破壊欲果てないわたしたちのため破壊途中にとどまるものよ

八月以外の十一か月の広島にしずかな声の雨は降りくる

いっそまったく違う街になってしまえば 何度も何度も咲く夾竹桃

満月が「たとえ一分一秒も他人(ひと)のためには使うな」と言う

人が人に贈る至高のやさしさは理由(わけ)きかぬこと雨があがった

ぬけがらをまたつかまされ枝豆とわたしのふたり遊びは続く

広島が毎日わたしに言ったこと「愛を惜しめば、きっと悔やむ」と

(谷村はるか ドームの骨の隙間の空に 青磁社)

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短歌人のお友達谷村はるかさんの待望の第一歌集を読む。
谷村さんは、飾り気のない自然体の素敵なひと。若い女性にありがちな媚のようなものをまったく感じさせず爽やか。
短歌への情熱が並大抵でない。何度か関西歌会でご一緒した。数年前、塔と短歌人の合同歌会があったときなど、彼女が来るとこころから頼もしく思った。
彼女の愛は、短歌だけでなく、移り住む街にそそがれる。
引用した歌は、広島についてだが、以前短歌人誌などで読んで、忘れられない歌がいくつもある。満月のうた、枝豆のうた・・・。
歌そのものは、まっすぐで彼女の人柄があらわれている。だから読む方も、体を張って直球と受け止めるように読めばいいと思う。気分のいい歌人の作った気分のいい第一歌集。装丁が川本浩美さんであることも嬉しい。

3月28日の朝日新聞に紹介記事が載っているので、合わせてお読みください。
http://book.asahi.com/clip/TKY200903280179.html


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