気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

ひろすぎる海 足立尚彦 

2017-04-16 12:49:17 | つれづれ
数百億の乳酸菌を摂るために百円出しておつりをもらう

使い古しの輪ゴムのように役立つか役立たぬかの際を生きおり

漢方薬の漢字が我をそれとなく安心させる とりあえず飲む

とりあえず今夜は生きているだろう野菜売り場の野菜のように

燃えるごみの中には文字が多くあり言葉を連れてごみ出しにゆく

亡き妻の最期の息を思い出すたびに鳴り出すこのフルートは

食間の漢方薬のおいしさはどこかモームの短編に似る

世の中に歌人が多くいるけれど何のためだかよくわからない

カレンダーめくり忘れて数日をこの世から取り残されている

貧困に少し距離あり飯を買う所属結社の会費を払う

(足立尚彦 ひろすぎる海 ミューズ・コーポレーション)

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八雁短歌会の足立尚彦の第五歌集『ひろすぎる海』を読む。

宮崎県在住の足立さんは、奥さんを亡くしてひとり暮らしのようだ。何のストレスもなく読める歌集。
歌を作ることで救われている人の歌を、素直に読んでわたしは救われている。ありがとうございます。



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