気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

生きてこの世の木下にあそぶ 山中もとひ 六花書林

2023-04-22 13:19:14 | つれづれ
サイコロに似た家コロコロ建ち並ぶ小さな窓の賽の目つけて

若い人ものを知らぬと叱られてわたしひととき若い人なり

幸運を無駄遣いしてまたバスがわたしばかりに都合よく来る

ヤマト糊の黄色いカップ〈工作〉を見本どおりに作らぬ子供

はじめから一人で歩いていたのだろうわたしのことだけ懐かしいから

缶入りの蚊取り線香ヤニじみた蓋に雄鶏右を向きおり

えいっと本を揺すれば短歌が滑り落ちなにか煩いことを言い出す

戦争はしないはずだが戦争に参加して日本七十五年

良いものは川上から来るどんぶらこ川下のこと知らない知らない

魚屋は数多まなこを商うと思いて清し対の目の玉

(山中もとひ 生きてこの世の木下にあそぶ 六花書林)

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短歌人、鱧と水仙でご一緒している山中もとひの第二歌集。歌数が多いと最初は思ったが、ひと開きに一連を入れるやり方で読みやすい。
カラッと渇いたユーモア、独自のものの見方。どこを開いてもわたし好みの歌がある。
師、山埜井喜美枝はあの世で喜んでられるだろう。

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