気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

春の質量 河合育子 短歌研究社

2022-11-09 23:13:57 | つれづれ
蔓草がはてなく繁る夏野ゆくひかりするりと蛇へ戻りぬ

コンビニの伊右衛門取ればその隙間するする次の伊右衛門が消す

太極拳しながら母は朝の空はみだすほどの〈ゆ〉の字書きたり

曇り日の複写機ひらき詰まりたる雲のひとひらつまみ出したり

椎の木の下へころがる椎の実よ転がることが木の実のしごと

丸めんとすれども伸びたがる餅の気もちなだむる母の手わが手

豆を煮る母が笑へば黒豆もわたしも笑ふ大歳の夜

天上の春の質量いかほどかひかり引つ張りひきがえる跳ぶ

「勝」の字の肩のあたりを揉みほぐし深呼吸などさせてやりたし

新品の縞柄のシャツ着るけふは尻尾しやきつと立てつつ歩く

(河合育子 春の質量 短歌研究社)
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コスモス、COCOONの会所属の河合育子の第一歌集。身近な素材で歌を作っていて読みやすい。一読意味がわかるが、もう一度読むと仕掛けに気づかされる。小島ゆかりの傍で学んできて、そのユーモアの精神が受け継がれている。音感がよく、音が音を引き連れてきたのがわかる。

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