
「さ・よ・な・ら」をメールでつげた きみの声きかずにすんだがそうぞうできた
(前橋市 中野紗也香)
捨てに行き捨てずに戻りぬわが犬を曳きいし鎖少し錆びたる
(守山市 沢井栄子)
向き合えるビルの一つは端正な相手を歪め映して止まぬ
(東京都 丸木一磨)
*****************************
一首目。この一字開けに意味がある。「短歌の主体は私」と読む基本に従うと、「さ・よ・な・ら」を告げたのは作者。そのあとのきみの反応は、聞かずに済んだ。ここに一字開けがなかった場合、「さよなら」を言ったのは「きみ」だという読み方になる。さて、サヨナラを告げたのは、どちらだろう。こちらからさっさと別れを告げる方が、潔い。
二首目。こちらは、飼犬を捨てに行ったものの、捨てられずに戻った歌。捨てられないのは犬だけでなく、犬との生活を捨てられない作者でもある。くたびれて鎖は少しさびる。しかし、曳きいし・・・の「し」が過去形では辻褄が合わないんじゃあないか。新しい鎖を買うほどの勢いもないのに、捨てられない今の暮らし。わかる歌ではある。
三首目。一面ガラス張りのビルに移る人の姿を詠っている。映される人は端正であっても、映す鏡が歪んでいては、まっすぐな姿は映らない。目の前の鏡なら拭けばよいが、相手がビルほど大きいと、それも叶わない。隔靴掻痒感のある歌。
ちょっと考えていたのだけど、関西短歌人会と短歌人会関西歌会。
同じようでちょっとちがう。次回、先輩に尋ねてみたい。
飼犬が死ねばその日はちよつと泣き次を探すとあのひとは言ふ
(近藤かすみ)
(前橋市 中野紗也香)
捨てに行き捨てずに戻りぬわが犬を曳きいし鎖少し錆びたる
(守山市 沢井栄子)
向き合えるビルの一つは端正な相手を歪め映して止まぬ
(東京都 丸木一磨)
*****************************
一首目。この一字開けに意味がある。「短歌の主体は私」と読む基本に従うと、「さ・よ・な・ら」を告げたのは作者。そのあとのきみの反応は、聞かずに済んだ。ここに一字開けがなかった場合、「さよなら」を言ったのは「きみ」だという読み方になる。さて、サヨナラを告げたのは、どちらだろう。こちらからさっさと別れを告げる方が、潔い。
二首目。こちらは、飼犬を捨てに行ったものの、捨てられずに戻った歌。捨てられないのは犬だけでなく、犬との生活を捨てられない作者でもある。くたびれて鎖は少しさびる。しかし、曳きいし・・・の「し」が過去形では辻褄が合わないんじゃあないか。新しい鎖を買うほどの勢いもないのに、捨てられない今の暮らし。わかる歌ではある。
三首目。一面ガラス張りのビルに移る人の姿を詠っている。映される人は端正であっても、映す鏡が歪んでいては、まっすぐな姿は映らない。目の前の鏡なら拭けばよいが、相手がビルほど大きいと、それも叶わない。隔靴掻痒感のある歌。
ちょっと考えていたのだけど、関西短歌人会と短歌人会関西歌会。
同じようでちょっとちがう。次回、先輩に尋ねてみたい。
飼犬が死ねばその日はちよつと泣き次を探すとあのひとは言ふ
(近藤かすみ)