気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

聖なるものへ  寺井淳

2009-01-15 19:10:55 | つれづれ
軽々と春を孕みてゆく柳絮爪先立ちの手の少し先

閉ぢられし世界に卵生みながら海にひかるる陸封魚われ  

木末(こぬれ)よりしたたるみどり一滴に世界をすべて閉ぢこめて 雨

蕭々と降れる紅葉よわれのうちの小暗き湖をゆくうつほ舟

ここを世界の中心とせり表徴はベンチの背なるカスガヰドロップ

半日の喪服を解きて妻はいま夕餐の蓮根を煮るひと

八月の身体髪膚気毀傷してピアスの穴ゆ青き空見ゆ

耳たぶに鮮血のごときピアスつけ愛(かな)しき双子千代と八千代と

悪友が美人局(デコイゲーム)の経緯(ゆくたて)を語りつつ割く落ち鮎の腹

チェロを抱くそのため息の低きにも女男ありて鳴るソナタそのほか

(寺井淳 聖なるものへ 短歌研究社)

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かりんの寺井淳の第一歌集『聖なるものへ』を読む。
この人のことは、よく知らなかったが、たまたまお友達から貸していただけることになり、手に取った歌集だ。
精巧に手をかけて作られた短歌。細かいところまで神経が行き届いているのに、内容には遊び心がある。職人芸のような短歌といえばいいのだろうか。
作者は島根県で高校の国語の教師をされていて、1993年に「陸風魚ーInland Fish」により短歌研究新人賞を受けている。語彙が豊富で正統的な作り方だと思う。



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