気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

聖なるものへ 寺井淳 つづき

2009-01-17 00:40:01 | つれづれ
とめどなく内話を口に出すといふ狂気と識るや しらずうたへる

なにごとの象徴ならねガラス舎のペンギンしばしば右手を上げて

うす青きゼリーの覆ふ水菓子を舌端といふ岬にまろばす

散る紅葉語彙の林にわけいりて<ら抜き言葉>の時雨てゆくか

人の生を逆さに覗きつつ平成へ肛門科神野医院の親子三代

幾憶の匿名の子ら餓うるともウルトラマンは吾子にのみ来よ

ふみまよふ隠喩の森のけものみち ゆくひとなしにわたくしの影

貴妃の喉縊らば洩れむ緋の吐息無花果の実をもぎていましも

貴種流離たとへば月の窓辺にて頬照らさるる人体模型

(寺井淳 聖なるものへ 短歌研究社)

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面白かった歌をアトランダムに書いてみる。どのページを開いても面白い歌にぶつかる。なんの目的もなく、こういう歌集をパラパラと捲って時を過ごすのは、至福のとき。
へたな解説するより、単に味わって楽しみたい。言いすぎは野暮ですから。


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2 コメント

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Unknown ()
2009-01-17 20:39:34
こう言う超絶技巧の歌を読むと、自分の拙さを痛感するのですが、いっそ、思い知ることで、思い切ることが、わたしはわたしでしかないと、思い切ることができて、吹っ切ることができる、かな…。。
寺井さん、一度松江であったシンポジウムにパネラーとして出ていらっしゃいましたが、素敵な方でした。
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Unknown (かすみ)
2009-01-18 23:46:06
文さん こんばんは。

さっき東京から帰宅しました。

寺井さんの歌集はやっと読み終わりました。楽しい読書のときでした。
あとの一冊は、同じ作者のものを持っていたくて、あれと似たものを買ってしまいました。
感想はいずれ・・・。
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