気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

亡羊 奥田亡羊歌集

2007-08-09 00:30:54 | つれづれ
宛先も差出人もわからない叫びをひとつ預かっている

青空へ続く扉の呼び鈴を押してる俺はあいにく留守だ

ふたりとも一人ぼっちになりそうな静かな夜の梨をむく音

われを待つ妻のひとりの食卓にしぼんでいった花の数々

いいと言うのに駅のホームに立っていて俺を見送る俺とその妻

食卓の下に組まるる足のなき真昼間深く椅子をさしこむ

仕事を辞めてお前はやさしくなったなと言われておりぬ そうかも知れぬ

(奥田亡羊 亡羊 短歌研究社)

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2005年短歌研究新人賞受賞の奥田亡羊の第一歌集を読む。
京都生まれで、早稲田大学を卒業後、NHKでテレビ・ディレクターとして働くが退社。田舎暮らし、離婚も経験している。
離婚前後に詠まれた歌にこころ引かれた。仕事が忙しすぎて、離婚に至ったのだろうか。結婚生活をつづけているもう一人の自分がいるような歌がある。
独特な感覚で自分を客観視している。
佐佐木幸綱が跋文で書いているように、新しい「男歌」の可能性を感じる。それにしても、この綺麗な花の表紙は何を暗示しているのだろう。



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