マイナス１４度の帰り道

　午後５時５０分、今日の１日の全ての牛のお世話の作業を終えた。
今夜も猛烈にシバレ（気温が低いこと）そうだ。マイナス１４度のしばれる中、２００㍍先の我が家に帰路。
町の除雪車が日中に綺麗に除雪してくれて、道はテカテカ・・・・ボサッとして歩いていると滑って転びそうになる。
一歩いっぽ足を運ぶたびに「ギュッ」と足の音がする。シバレている証拠だ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　陽が少し長くなったとはいえ、午後５時半になると真っ暗になる。
寒さの中でも道の外灯だけは元気に照らしてくれる。
雪山が大きく、牛舎からは住宅は見えない。少しだけ歩くと車庫の影から住宅の明かりが見える。
人足先に帰っていた妻がつけた明かりだ。

　隣の家まで１㌔もあるポツンとした山奥の１軒家。
闇の中から照らされる２カ所の明かりは１日の終わりを無事に終えた安堵感を感じさせてくれる。
そして・・裏玄関の出入り口のドアを開けるとき、マイナス１４度の厳寒の世界から真夏の世界にきた事を感じてしまう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

　「おわった～」と１日の作業の終わりの宣言を心の中で語りながら椅子にコシを下ろす。自然と「ああぁぁ・・」との声が出てしまう。
６時のニュースに合わせてテレビのスイッチ。「今日の感染者数は・・・」なんて見てしまう。
「お風呂が開きました～」との妻の声と共に、缶ビールが脳裏をかすめる。「楽しみだ」とお風呂に向かう。