南無煩悩大菩薩

今日是好日也

三億年の戦略

2017-01-02 | 古今北東西南の切抜
(photo/source)

カゲロウは成虫になると一日か二日で死んでしまう。種類によっては数時間で死んでしまうものさえいる。

そのわずかな生を受けた成虫は口も退化して食べ物はおろか、水さえ口にすることはない。

成虫の命は短いが、幼虫では何年間も過ごす。卵から死ぬまで数か月という寿命のものが多い昆虫界にとっては、どちらかというと長寿なのである。

カゲロウは生きた化石と呼ばれるほどその存在は古く、三億年も前から現在と変わらぬ姿をしている。現在知られている最も古い化石もカゲロウのものである。

成虫の役割は、子孫を残すことにある。だからこそ、成虫になると確実に子孫を残す目的だけに専念する。

カゲロウの幼虫はある日の夕方になると一斉に羽化をするが、その数は尋常ではない。夕方なのは天敵の鳥がいなくなる時間を見計らってのことだ。

夕方になると鳥の代わりに蝙蝠が表れて捕食され始めるが、大群をなすカゲロウを食べ切れることなどとうていできない。

そうして成虫としてはとても短い天寿を全うしながら、三億年という歳月を生き延びてきた。

弱く儚いものの代名詞のように例えられるが、はたしてカゲロウは弱い存在なのだろうか。

-切抜引用/稲垣栄洋「弱者の戦略」より-
コメント (2)
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