経済と道徳。

（Angelina Jolie)

人間の遺伝子、つまりあなたの遺伝子が企業に「特許」を得られていたとしたら。

アメリカのミリアド（という企業）は遺伝子特許を取得したことで乳がん、卵巣がんの遺伝子検査を独占している。そのため検査は高額になり（3000ドル以上）、救える命が危険にさらされ、自由な研究も阻まれる事態にある。果たして遺伝子に対して特許は認められていいのか、米連邦裁判所で4月この大きな知的財産権の問題を巡る訴訟の口頭弁論が行われ、近いうちに最高裁において判決が下される。（切抜/日経ビジネス6.3）

米女優のアンジェリーナ・ジョリー氏は5月14日のニューヨークタイムズに寄稿し、乳がんを予防するため双方の乳房を切除したと公表、大きな注目を集めた。
「収入や住んでいる場所に関係なく、女性が遺伝子検査及び命を救うことにつながる予防治療を受けられるようにすべきだが、現状ではコストの高さが障害になっている」と公表の理由をこう強調した。

有名人だけに、世論即ち判決の行方にも影響を与えるかもしれない程のアナウンスだ。

出来る範囲で出来るだけ手をさしのべようとするのが「人道」つまりある種のヒューマニズムと呼ばれるものだと私は思う。

しかし経済と人道との間には一筋縄ではいかない複雑なディレンマが内包されているのも事実だろう。
例えば、手をさしのべるべき優先順位の決定にさしのべられるべき人々はほとんど参加できない。

二宮尊徳翁は、こんな言葉を残している。
「道徳なき経済は犯罪である。経済なき道徳は寝言である。」