咲とその夫

 定年退職後、「咲」と共に第二の人生を謳歌しながら、趣味のグラウンド・ゴルフに没頭。
 週末にちょこっと競馬も。
 

池波小説・・・・男の系譜から

2011-04-12 22:57:00 | レビュー
 「死のうは一定(いちじょう)・・・・。つねにその覚悟が信長にはあった」

 先日、OB会の有志による飲み会があり、他愛もない話や今の世の中の移り変わり、そして、東北関東大震災で我が国に最大の危機がやって来ている中、日本を動かしている中枢機構のふがいなさなども話題となった。

 その会合の前に駅の書店で、池波正太郎著「男の系譜」と「ないしょないしょ」の2冊を買い求めた・・・・・目に留ったもので。

 「男の系譜」は、戦国・江戸・幕末維新までの代表する16人をとりあげ、つねに“死”だけを確かなこととした生き方を、現代日本人と対比させながら際立たせた一遍である。

 そこには、著者自身の死生観も垣間見ることのできるものである。

 「ないしょないしょ」の方は、剣客商売番外編として書き下ろされた一遍で、ただ今、義兄から借りている剣客商売の本編にハマっており、その番外編も読みたくて買い求めた。なお、もう一遍の番外編「黒白」は、既に読み終えている。


 我が国は、今から約700年前の13世紀の終わり、二度にわたって最大の国難と言うべき外国勢力による襲来があったが、天運に恵まれ侵略を防ぐことができた。そして、幕末の黒船来航と開国という新たな国難、そして第二次世界大戦による焦土と化した我が国本土と無条件降伏による国難など。

 これらの国難にあたっては、いずれも日本人としての死生観を持った生き方でもって、全ての日本人が力を併せいずれの国難にも毅然と向かい合って、見事に立ち直ってきた経緯がある。

 そこには、いずれも優れたリーダーがいて、そのリーダーシップのもと、我々の祖父、曾祖父、いわゆる先祖が力を併せて犠牲もいとわない強い決意と覚悟でなしえてきたものである。


 今、戦後最大の国難と言われている「東北関東大震災」の直撃を受けた東日本地域、阪神淡路大震災を上回る犠牲者も出ており、被災地では収束の目途の経たない長い避難生活を強いられている。

 その上に「想定外の出来事であった」と一様に片づけられない福島第1原発事故、原発を安易に利用していた人類に対する自然の警告ともとれる事態に陥っている。しかし、見方を変えればこれは、人災であるといえる。

 過去に起こった巨大地震と巨大津波への対応を安易に見積もった国や電力会社などの関係者とこれらに対する専門家による人災である。

 この果てしない事故により、原発を全て否定することは愚かなことであり、あらゆる防災への対応策をクリアしてこそ原発を有効活用すべきである・・・・これに優るエネルギー確保は難しい。


 ところで、今回の戦後最大の国難を打開すべき我が国のリーダーが、戦前までにいたリーダーと比べて余りにも稚拙であり、我が国の最大の危機を解決すべき埋もれた人材、有能な人材を今こそ引き出す時かと思っている。

 「男の系譜」にあるようなリーダーの出現を・・・・・・・・。



「真田信繁(幸村)肖像画」


 その本の中に貫かれている生きざまに関する文章、一読の価値のある文体を羅列してみた。

 「人間は死ぬところに向かって生まれた日から進んでいる、それしか分かっていない。あとのことは全部わからない。・・・・・そのことをよくよくのみ込まないといけない、若いうちから」

 「政治というものは、汚いものの中から真実を見つけ出し、貫いて行くものでしょう。それを、『政治は正しい者の、正義の味方だ』といっても信用できない。・・・・・どんな人が政権とっても、古今到来、何千年何万年たっても、そういうことがあり得るはずがない」

 「昔(例:炊事洗濯など)はいっぺんに二つも三つものことを全部やらなければならない。頭の中にいつもいくつかのことがあって、それを同時進行でこなしてゆくのが気働きですよね。」

 「今は、電気がまのスイッチを入れるだけだから、気働きがいらないため鈍化しちゃうんですね。対人関係でも気を使わなくなっている」

 「なんでも便利になって、それはそれでいいけれども、気働きというようなものがなくなってしまうのは、やはり困る。」

 「小学校のときから男女共学にするでしょう。あれが間違いですよ。そういうことをするから男の尊厳も女性の神秘も子どものときに失われちゃう。・・・・感覚的にいろんなものが育ってきて一番だいじなときに、一緒くたにして芋を洗うように教育するから。だから、男が女みたいになっちゃうし、女が男みたいになっちゃう。」

 「明治維新以後は、近代国家に生まれ変わるために、欧米の文明を盛んに吸収したわけだけれども、いまみたいに理屈っぽい、理屈だらけの、黒くなければ白といい張るような、そういう味気ない文明じゃなかった。・・・・・それが、戦後みんな黒か白か。つねに対立の文明でしょう、極端な。イデオロギーの対立の文明、それが欧米諸国に蔓延してしまったものを、そのまま全部採り入れてしまったんだから困っちゃう。」

 「人間の動物的機能というものを、ある程度、政治家なんかにも認識してもらわなくてはねえ。物を食べる、眠る、男と女の営みをする、これが人間の基本ですからね。」

 「現代の日本にない一番大きなものは、人間らしい情緒。」

 「世の中の人心というものが・・・・・余裕のないギスギスした、なんでも対立関係でしか見られないような世の中になっていること。・・・・・その不安は非常に大きいね」

 など、など、読んでいて思いめぐらせられる深い言葉もたくさんある・・・・・この本。まだ、中途であるが、「人間は死ぬところに向かって生まれた日から進んでいる、それしか分かっていない」との死生観を持っていたかつての日本人、それだからこそ「いさぎよさ」があったのであろう。

 現政権のリーダーに欠けるものが、ここにはたくさんあった。

 今からでも遅くない、いさぎよく政権を返上したらどうだろうか。多くの国民が望むところである(夫)

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コメント (2)
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